揃ったようです
「はぁ、はぁ。やった。やったぞ」
「すげえっ、さっすが騎士様だぜ!」
「全くだな!」
海へ落ちる悪魔に、猫騎士は歓喜の声をあげた
ほぼ、冒険者達の力は意味をなさず
この猫騎士が討伐したといっても過言ではなかった
「やるではないか」
ゴロリはこのテンションでできる
最高の賛辞を与えた
「お、おい、おっちゃん。その顔……!」
「ああ、これか。どうということはない
どうということは――」
ケルルが指摘した通り、ゴロリは鼻から血を流していた
やがて、白目をむいて受付の男の背から地面に滑り落ちた
「ゴロリっ!」
「ま、まだだ。まだ肝心のアケミが……っ!」
受付の男の言葉が聞こえ難いが、ゴロリは必死で地面をはった
情けない。この一言で頭が一杯になった
「なんだか急にやる気が……」
「痛みがぶり返してやがる。こんな時に……」
「……我々は彼らに助けられたんだぞ!?
わたしは剣を取って、最後まで戦ってみせる!」
「うおおっ俺たちだって!」
殆どの冒険者達を引き連れた猫騎士は
ゴロリ達を避けて中心の島へと急いだ
「……見よ。ゴロリ。もう大丈夫だ」
「さすが、本業には敵わんな……ブフッ」
受付の男の言葉を聞くと、ゴロリは泡をはいた
「ゴロリ、もう休め。働きすぎるくらい働いた」
「いいや。まだ、寝るわけにはいかない……!
奴らはあんな血まみれでも、動いてるんだ……!」
「お、おっちゃん……」
「ご、ゴロリ」
ゴロリは震えながら立ち上がろうとして倒れた
見てないと、受付の男とケルルは目を伏せた
「フール……一瞬で良い。肩を貸してくれるか」
「も、もちろん。もちろんだとも」
ゴロリは受付の男の肩を借りて立ち上がると
冒険者達を追い掛けるように、ゆっくりと歩き出した
「本当に大丈夫かよ?」
「ああ……すまない。ケルル」
足元が覚束ないゴロリをケルルは小さい体で支えた
「ぐぅ、切りがない!」
「魔法も効いてないぞ!?」
東では西、南、北の冒険者連合と竜が軍隊蜂と対峙していた
「はぁ、はぁ
僕は回復専門じゃないんだっていってるんだけどなぁ」
「金髪っ、もう少し頼むよ!」
軍隊蜂はひとつの生物のように大群となって竜を襲った
「ひーらーひーべすとっ!」
「おのれ、ちょこまかと……!」
竜も指先から赤い光線をだし、何匹か潰してはいるが
俊敏な動きに翻弄され、殆どは潰せないでいた
「ローズ、ブレイズ!」
受付の男はアニーと竜を見つけて、呼び掛けた
「フール!」
「やっとマトモな奴らが来たか……」
ケニーは受付の男に駆け寄り
竜も、受付の男を確認するとゴロリも見つけた
「ご、ゴロリさぁんっ!」
ゴロリは、アケミの元にゆっくりと歩いた
ゴロリの異変にアケミはいち早く気が付き
ケルルと共に駆け寄って支えた
「あ、アケミ……よかった」
胸ほどまで長い黒髪に、黒い目の色をしている
白いワンピースは汚れてしまっていて
帰ったら変えてやらなければ、とゴロリは思った
「アケミちゃん!」
「ケルルさんも、本当によかった!
心細かったです……っ」
その点はすまない
涙ながらに語るアケミにゴロリは心中で強く謝罪した
「……どうやら力を使い過ぎてしまったようだね
ひーらーひーべすと!」
「ぐっ……おお。少し、少しよくなったぞ!」
アニーによって、ゴロリはぼやけていた視界が明るくなった
「微力ですまない
専門じゃないし、流石に僕も疲れちゃった」
それにしたって便利だな。ゴロリは少し思った
「アケミ、ケニー。すまない
本当はもっと早く行きたかったが
彼らも、見過ごすことはできなかった」
「……ゴロリさんらしい。許します!」
アケミが言い終わるとゴロリは冒険者達を見た
また倒れている奴もいる。何とか皆で帰らなければ。そう思った
「まぁ、結果オーライでしょ。僕達もこうして3人集まったし」
「そうだな、ブレイズ」
「ねぇねぇ、そろそろ口使っちゃうから。いい?」
受付の男とアニーは並び立って感慨に浸っているなか
彼らの頭上で竜が奮闘していた
「ふ、焔 (フレア)でこぴん!」
竜が鬱陶しそうに口をあけ、息を吸い込む動作をした
受付の男は慌てて、中指を丸めて弾くように発射する
「そう。最初からそうしなさい」
「……相変わらずで、何よりだよ」
受付の男は冷や汗をかいた
受付の男から発射された小さな青い炎は
軍隊蜂を貫通し、焼却していった




