使うものは使うようです
「くっ、やはり一筋縄ではいかんか」
中心の島へ上陸したゴロリを背負う受付の男は
黒い骸骨が平然して立っているのを見た
「おおりゃあ!」
受付の男の背後からケルルが飛び出し
黒い骸骨の腹部に鉄拳を食らわせた
黒い骸骨は反応が遅れたようで、地面を滑っていた
「い、いいぞ。そのまま海に落としてしまえ!」
ゴロリも、ケルルが敵うのかと心配ではあったが
応援するしかないので、歯痒かった
中心の島には草の類いはなく、まっさらだった
なんとかドーム一個分ほどの広さはあるが
ケルルの鉄拳で黒い骸骨を入り口付近から、土俵際まで追い詰めていた
柵もないため、落ちたならば結構な高さから海へと落ちるだろう
(冒険者達の中では気合いで這い上がった奴もいたからな
もしかすると、こいつも……いや。考えても仕方ないか)
「貴様らぁ、小娘一人にやらせる気かぁっ!」
「うおおーっ!」
ゴロリは後ろにて待機する冒険者達を煽ると
冒険者は我先にと島に上陸していった
「ファイアフレアッ!」
「クリアーウォーターッ!」
「サンダーパフェッ!」
西軍の中には魔法が使える者が多かったようで
何処からともなく炎が飛んできたり、海から高波がきたり
雷を落とされたりと、黒い骸骨はプチ天変地異にあっていた
味方を攻撃するのではともゴロリは思ったが
黒い骸骨の一番近くにいるケルルであっても
効いていないように見えた
「やっぱり調子いいぞっ!」
「どんどん打ちましょう!」
「せやな」
西軍冒険者達はゴロリ達の後ろを陣取ってプチ天変地異で襲い
南軍の冒険者達は弓矢を放つか、石を投げてケルルを援護した
(軽くリンチだな)
戦いは数だ。ゴロリはその言葉をいやというほど思い知った
「皆、有り難う。落ちろぉっ!」
少し水に濡れたケルルは、冒険者達を感謝した
水飛沫をあげながら放った鉄拳は、確かに黒い骸骨の顎に命中し
黒い骸骨はやがてバランスを崩した
「怯むなぁっ、進めぇ!」
黒い骸骨を無事海へ落とすことに成功し、ゴロリ達は北に進んだ
受付の男に背負われたゴロリ、ケルル、冒険者達の順で並んでいた
「おお、援軍か……! 俺たちはまだ負けてない」
「た、助けに来てくれた!」
流石に倒れている冒険者は多かったが
ゴロリの一声で血を流しながら立ち上がって来る様は勇敢に思えた
「む、おまえはいつかの……あの奴隷はどうした!?」
そんな中で、一人の男が叫んだ
ゴロリもボロボロになってはいるが
その豪華な服には見覚えがあった
「知らん、こっちを優先した!」
ゴロリは思わぬ出会いに動揺したがテンションを維持した
「愚か者めが。死ぬときは死ぬのだ!
奴隷一人守れぬでどうする!?」
そういう感じだったんだな
ゴロリは彼に対する評価を改めた
「見てみろ。こんな商人が死んでも、喜ぶものしかいない!
あの女だってそうだ。国の犬なんぞは死んで当然じゃないか!」
豪華な服を着た男の足元には、奴隷商人がいた
血を流し、息も絶え絶えだが生きてはいるようだ
「うるさいっ! 貴様も起きろ。小太り!」
「ひぇっ」
ゴロリが豪華な服を着た男に叫ぶと
豪華な服を着た男は縮み上がった
「うっ、なっ……なんで?」
そして、奴隷商人である小太りの男も
ゆっくりではあったが立ち上がった
「……いいのかね?」
「良いも悪いもない。動けるものは使う!」
受付の男も、ゴロリの選択に思わずたじろいだが
ゴロリはゴロリで、必死だった
前を見ると確かに魔物と騎士が対峙している
彼女一人で、この前線を何とかしているようだ
「やあぁっ!」
鎧を破壊されてしまった猫騎士は
髪を血で赤く染め、死を覚悟したように
闇雲に両手剣を振るっていた
目の前には牛とも山羊ともとれる外見の
黒い体毛を持ち、筋骨隆々の魔物が存在した
「くっ……これが
これが修行をサボった報いだとでもいうのか」
魔物には未だに傷らしい傷はなく
剣も魔物による片手の爪で弾かれて
巨大な手が彼女を襲おうと伸びた
「くっ、ぐああっ!」
伸びた手に簡単に捕まえられ、猫騎士は苦悶の声をあげた
「何をしている!?」
そんなときふと、声が聞こえた
「おいっ! 貴様は騎士だろう!?
なぜ貴様以外倒れているんだ。元を取れぇっ!」
ゴロリは叫んだ
猫騎士の逃げ足から考えると
最後とはいえ立ち向かった彼女にゴロリは大いに尊敬した
「今……今やってやるっ!」
「ォオッ!?」
猫騎士は腕を広げることで魔物の手から自由になると
魔物も驚く素振りを見せた
猫騎士は肩で息をしながら、地に膝を付いていた
「そいつは悪魔だ。水に弱かろう!」
「えっ……は、はいフール公!」
猫騎士は答えながらゴロリを背負う受付の男を二度見した
案外余裕あるじゃないか。ゴロリは少し思った
「よし、貴様らも援護しろ!」
「うおおーっ!」
ゴロリは冒険者達に指示を出した
この時になって、頭が痛くなり勝負を急ぎたくなった
「な、なんだこれ、わぁーっ!」
「う、うそでしゃっろーっ!」
遠くの方で、豪華な服の男や小太りの男の声が聞こえたが
ゴロリはあまり気にしなかった




