依頼をうけるようです
馬車を見送ったあと、ゴロリはギルドに行っていた
「おう、ゴロリじゃないか。魔物の討伐かね?」
受付の男はゴロリに手を挙げて軽く挨拶する
受付には分厚いリストがあった
紙を捲っていくとこれを討伐してくれ
あれを取ってくれなどの依頼が書いてあり
型はあるものの、手書きなので不親切な作りだった
そもそものところで、依頼するくらいならおまえがやれとゴロリは思った
「……いいや。戦闘任務は若い連中に取っておいてやらんとな
俺は地味な任務でもするとしよう。この薬草取りなんかはよいではないか」
ゴロリはリストの中から一枚抜き取り、受付に提出した
「おっ、運がいいね。それはなかなか残ってない依頼だよ」
弛んどるとゴロリは反射的に思った
そして、この任務を見つけたら必ずやろうと心に強く誓った
「走れ。もっと早く走れ我が脚! 走らんかぁっ!」
ゴロリは奇声をあげながら駆け足で暗い森を突っ切っていた
思っているほど脚は速くならず、自分自身に腹が立った
「うおおっ! お?」
走っていたゴロリは急停止し、地面にあった草に目を止めた
地面の草とサンプルで貰った草とを見比べ、少し考えた
「……似ている。よし、摘んでおくか」
ゴロリはしゃがんで草を摘み取り、革袋に入れた
(依頼は革袋一杯の薬草だったか……こんなものすぐ一杯になるわ!
俺を嘗めよって。見ていろ!)
ゴロリは何かに取り憑かれたように血眼で薬草を探した
「うおっ!?」
日が明るくなった頃、ゴロリは受付に薬草を提出した
殆どの薬草は薬草どうしで束ねている
革袋はもはや原型がなくなるほど薬草が詰めてあった
「ふ、ふん……途中で箱のようなものがないことに気が付いてな
今回はこのくらいで勘弁してやった」
年甲斐もなく徹夜にしたゴロリは少し疲れたのか、肩で息をしていた
「……待っておれ。一応こいつが本物か調べる」
「早くしろよ?」
ゴロリの威圧を受付の男は目をあわせないことでかわし
黙々と薬草を大きい箱に入れ、奥に運んでいった
「……待たせた」
「むっ?」
ゴロリが立ち寝をしていると、受付の男が戻ってきた
「全部本物だ。しかし、折れているのもあった
だからまぁこの位でどうかね」
受付の男は羊皮紙でできた小切手を滑る様にして見せた
ゴロリには紙に書かれた文字はわからない
仕方がないので、頷いた
「うむ。ではカードを預かろう」
受付の男は片手を差し出した
貧弱な腕だとゴロリは思った
「……カードを? 何故だ」
ゴロリは腕を組んで尋ねた
「まぁ、無理もないか
最近はカードの中に金を入れるのだ。便利だろう?」
(あー、ポイントカードのようなものか)
ゴロリは勝手に納得して、ポケットからカードを取り出すが
フェイントのようにして受付の男には手渡さなかった
「……なんだね」
受付の男は怪訝な目をゴロリに向けた
「下手な真似をするなよ?」
ゴロリは自分が言い終わると、カードを受付の男に手渡した
「ふふ、心配かね……?
良かろう。目の前で見ているがよい」
受付の男はゴロリに向かって人差し指を立てた
ゴロリは侮辱しているのかもと思い、怒鳴ろうとしたときだった
「天駆ける星よ、大いなる意思よ。今ここに現れ力をもたらせ!
星の輝明 (スターライトソード)!」
受付の男が詠唱すると人差し指が光り、ちょっとした光の筋を顕現した
周囲の人間の反応を見る限り、普通なのだと思ったがゴロリは少し驚いた
「……こいつでカードに今回の報酬を書く」
表面が身分証明で埋まっている為、裏返しにして書くようだ
「終わったぞい」
受付の男はゴロリにカードを返した
ゴロリにとってその顔は、実に腹が立った
「……出した意味あったのか?」
ゴロリは裏に書いてある文字は読み取れないが
依頼書を作った筆記用具のほうが早いのではと思った
「かっこ良かろう?」
この点に関して触れないことをゴロリは強く心に誓った