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指導するようです

「ケルル……? 起きていたのか」


「うん。どちらかっていうと起こされたって感じかな」


 少し寝癖がついたケルルは玄関前でゴロリ、アケミを確認すると

 カードを片手に持ってゴロリに訴えた


 ケルルのカードは水色に光っていた

 暗闇でなくとも目が覚めるような強い光だった


「……まさか」


 ゴロリははっとして自分の後ろポケットにあるカードを取り出した

 取り出すまでは光らなかったが、ゴロリが触ると緑に光った


「なんでしょうね、これ」


 アケミも、自らのカードを両手で持って

 眩しそうに目を瞬かせていた

 アケミのカードは赤色に光っているのをゴロリは確認した


「とにかく、ギルドに戻ろう。何かあったのかもしれない」


「そうだな」


「はいっ!」


 ゴロリ達は光ったカードを一旦仕舞い、ギルドへ向かった




「……なんだこれは」


 ギルドでは光ったカードの者達で溢れかえっていた

 パーティーでも始まるのだろうかと思ったが

 どうやら、そのような雰囲気には見えなかった


「貴様は緑か。あっちだな

 ……赤だな。そっちだな

 ……黄色か。うーんもっとあっち。水色はあっち!」


 全身鎧の猫騎士が、同じ色に光ったカードの者達を整列させていた

 あの人数を捌く彼女はあまりに忙しそうで、話し掛け辛いほどだった


「おお、ゴロリ。こっちだ」


 ゴロリ達が途方にくれていると

 マッドサイエンティスト風の受付の男が駆け寄ってきた


「……これは一体どういう騒ぎだ?」


「君たちが知らぬのも無理はないな

 これは緊急任務の案内だ。戦える者ならば誰もが参加せねばならん」


 動揺しているゴロリを察して、受付の男は簡単に説明した


「強制ということか……!?」


 信じられない。ゴロリはそれしか考え付かなかった


「ああ……アケミちゃんやケルルちゃんのカードは

 何色に光った?」


 受付の男は一旦ゴロリから目を離し

 ゴロリの後ろにいるアケミとケルルをみて質問した


「わ、わたしは赤です!」


「あたしは水色だな」


「……そうか。ゴロリは?」


「……緑だ」


 ゴロリが言い終わると

 受付の男は少し考え込むように下の方を睨んだ


「……ケルルちゃんはちょいと危ないかもしれん」


「なんだと!?」


「緑はわたし、ゴロリがおる。赤はブレイズ……これも心配だが

 水色のケルルちゃんは一番危ない」


「……それほど危ないのか」


「ああ。何せ、竜を殺すほどの魔物が集まるのだからな」


「……な、なんだそれは。死ねっていうのか!?」


 受付の男はゴロリの叫びに目を瞑って首を左右に振った


「……ゴロリよ。これは騒いでどうこうなることではない

 大丈夫。突破口はある」


「本当か!?」


 受付の男の言葉に、ゴロリは飛び付くようにいった


「……ゴロリとわたしのような緑の連中は

 此処から勇者が眠る島へ攻めこむが

 アケミちゃんや、ケルルちゃんは街を移動する手間がある筈だ」


「その時間の間に、攻略すると?」


「あくまで、最善の場合だがな」


「……歯切れが悪いな」


「実際にはそれほど早く攻略するのは難しい

 最深部まで攻略した後

 各拠点に逆走するということも出来なくもないが……」


「……どこへいこうと、必ず化物を相手しないといけないわけだ」


「すまない。わたしも、このようなことは生涯に一度しかない

 大した言葉はくれてやれん」


 受付の男は小さく身震いした

 この男が恐怖するのだから相当なことなのだろう

 ゴロリは言葉を失った


「じゃ、じゃあ、一回は生き残ったんですね!?」


「……一心不乱になって戦って、勝ったとしても

 死んでいった者を数えてしまうとな」


 受付の男が言い終わるとゴロリはふとアケミをみた

 真っ青な顔をしていた


 それに比べ、ケルルは目が泳いでいた

 彼女には難しすぎたのかも。ゴロリは少し救われた気がした


「……そうはならない。俺がいる」


「……ゴロリよ。わかっているのか

 それがどういうことか」


 ゴロリは受付の男に覚悟を決めた顔をした


「そうだ。俺の力がバレるかもしれない

 だが、今はそんなことはどうでもいい

 俺たちは、全員で帰るんだ。怪我人一人として出すつもりはない」


「……ゴロリさん」


「おっちゃん……それって」


 ゴロリの言葉に、アケミとケルルはゴロリの方を向いた


「そうだ。今回参加する奴をまとめて俺が指導してやる!」


「……止めはしない

 正直、わたしもあの地獄は見たくない」


 ゴロリの言葉に、受付の男は少し目が光った

 それほどだったのか。ゴロリは少し思った


「……あんたの協力も必要だが、大丈夫か?」


「ふん。そんなことは聞かんでよい」


「……わかった」


 ゴロリが言い終わると

 受付の男は神妙な顔をしてアケミとケルルを見た

 ゴロリは受付の男にいって、後ろを向いた


「俺たちは、バラバラになるらしい」


「……はい」


「……そっか」


 アケミとケルルが答えるのを待ちゴロリは無言で腕を広げた


「ゴロリさん……!」


「おっ、おっちゃん!」


 アケミは意図を察して直ぐに駆け寄り、抱き付いた

 ケルルも、よくわかっていないながら、抱き付いてきた


「これは一生の別れじゃない

 ……絶対に助けてやるからな」


「ゴロリさぁんっ」


「おっ、おっちゃん……っ!」


 二人を抱き、ゴロリは何だかよくわからない汗が出た

 アケミとケルルをゴロリはしばらく、抱き続けた

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