帰ってきたようです
「……まだ寝ているか」
胡座をかいたゴロリは小さく寝息をたてているケルルを見た
「起こします?」
ゴロリの隣で体育座りしているアケミは
小首を傾げて、ゴロリに尋ねた
「いやいい」
「そうですね」
アケミにゴロリは首を左右に振って簡単に断った
「なぁ、アケミ。実はフールを見つけだすことはできたんだ」
「本当ですか!?」
ゴロリの告白に嬉しい素振りをアケミは見せた
「ああ。どうやらケニーとケルルの母親のことでもめているらしい」
「わかりました。助けに行くんですね!?」
「……行けそうか?」
アケミが予想以上に興味を持ったので
ゴロリは用件だけ伝えるつもりだったが
アケミに付き合おうと思った
「大丈夫ですっ、ゴロリさんと一緒なら!」
「そうか、わかった」
ゴロリは奴隷屋を通るので心配ではあったが
アケミの決意が硬いと感じて、立ち上がった
ゴロリはアケミにアニーには敵意はなさそうだと知らせて
奴隷屋の隣にある木造の宿に到着した
「アニーがいないか」
「そのようですね」
ゴロリは木造の扉を開け
受付にアニーがいないことを確認すると階段を登った
アケミも、少し周囲を警戒しながらゴロリに付いてきた
「やあ。今回は娘さんも一緒なんだね。どうかしたの?」
「フールがいないな」
ケニーは頬杖をついてベッドに座っていた
相変わらず金髪の口調は軽く、横柄に見えたので
ゴロリは無視するように周囲を見渡した
「ああ。フールはもういないけど?」
「なに!?」
「へっ」
確かにアニーのいう通り、フールは見当たらなかった
ゴロリとアケミはアニーの言葉に身構えた
「ははっ、違う違う
僕の術はとっくにフールが破ってたんだ」
アニーはそんなゴロリ達を見て笑いながら、訂正した
「狸寝入りだったってことか」
「そうだね。あの人の演技力も伊達じゃないよ」
本当に寝てたには寝てたんじゃないか
アニーの言葉にゴロリは少し思った
「……話し合いは済んだと?」
「うん。それは大丈夫だから、安心してね」
大丈夫、といわれてもよくわからないので
ゴロリはどうせならフールに聞いてみようと思った
「今フールはどこにいる?」
「そうだね、ギルドに帰ってると思うけど」
ゴロリの質問にケニーは頬杖をついたまま頷いた
「ギルドだな。行ってみるかアケミ?」
「はい。行きたいです!」
「わかった」
ゴロリはアケミに頷くと、ケニーを置いて宿を後にした
ゴロリ達はギルドのこぢんまりとした受付にいる
白髪がアフロのように爆発した
マッドサイエンティスト風の男と話していた
「心配かけたようですまんかったな」
色々と話したが、帰ってきた受付の男はこの一言で片付けた
「本当ですよ。心配したんですから!」
「ハッハッハ。長生きしてみるもんだ
ありがとうよ。こんな年寄りを」
受付の椅子に座ったアケミは受付の男の片手を掴んで振っていた
受付の男も隙歯を見せながら、まんざらでもない顔をしている
「アニーとはよく話し合ったのか?」
「まぁな。結局はわたしの意見が通って
ケルルの母親は解放するということになった」
ゴロリの言葉に受付の男は少し得意気になって答えた
そうか、フールの意見はそっちだったんだな
ゴロリは少し思った
(少し、悪いことをしたかな)
ゴロリはあえて受付の椅子に座らずにいた
この件で、改めて男の偉大さに気が付いたゴロリだったが
自分自身がじじい呼ばわりしてしまったことが尾を引いていた
「……まぁ、なんだ。また薬草の依頼を頼む」
ゴロリがこの言葉を告げると
受付の男は何やらあっとした顔になった
「おおそうだった、そうだった
もう薬草は数え終えているから換金をしてやろう
ケルルちゃんも連れてくるがよい」
「わかった。アケミ、一旦戻ろうか」
「わかりました!」
ゴロリの言葉を聞くとアケミは立ち上がった




