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寝ているようです

(確か、ケニーが受付していたとかいってたな)


 ゴロリは奴隷屋の隣にある宿に着いた

 猫騎士がいっていたことを思い出し、木造の扉の取手を掴んだ


「やあ、遅かったね」


「状況がわかっているのか?」


 ゴロリが扉を開けると

 金髪オールバックのケニーが宿の受付に座っていた


 相変わらずの軽い口調で出迎えられて

 ゴロリは眉の端を吊らせ、怒気を含んだ声でケニーにいった


「やだなぁ

 一応いっておくけど僕は間違ったことはしていないつもりだよ」


「衛兵数人とフールをどこかにやったのが間違ってないのか」


 ケニーはゴロリに冷静にいわれると、少し黙った


「……まぁ立ち話も何だし、部屋に案内するよ」


 ケニーは立ち上がって受付から出ると

 ゴロリの目の前を通り、階段を上がった


 どうやら、二階に部屋があるらしい

 ゴロリはそう思いながら警戒し、ケニーの後を付いていった




「おい。あれ、生きてるのか?」


「ああ。寝ているだけだ。安心してくれ」


 ゴロリが部屋に上がると早速目に飛び込んできたのは

 ベッドに横たわったマッドサイエンティスト風の男の姿だった


 フールだ。ゴロリは確信して、観察した。

 確かに息はしているように見えた


 アニーはまるで元々そこにあったかのように振る舞って

 フールが横たわるベッドの端に座った


「さて……どこから話そうか?」


 フールは指を組んだ腕を脚に乗っけた

 横柄な態度だな。ゴロリは心底気に入らなかった


「話そうか、なんて冗談じゃない」


「へ?」


「この前のように箸にも棒にもかからない話だったら、帰るからな」


 ゴロリはこの前の勇者云々という話を聞いてうんざりしていた

 アニーはその真意が読み取れず、口を中途半端に開いた


「そ、それは困ったな。どうすればいいんだい?」


「そうだな、3秒でまとめろ」


 ゴロリが予想以上に興醒めしているので、ケニーは慌てているように思えた

 ゴロリはアニーを無視して、片手で三本指を立てて突き付けた


「はい、3!」


「ふ、フールはローズを復活させたくて」


「はい、2!」


 そういや、ケルルもローズだっけか

 ゴロリはそう思って薬指を折った


「僕は反対だったから無力化した!」


「……はい、1」


 ゴロリは少し遅れて中指を折った


「衛兵は今朝解放した!」


「よし、帰ります」


 ゴロリは敢えて敬語を使い、拳となった片手を引っ込めた

 なんだ、大したことないじゃないか

 ゴロリが最終的に思ったのはそれだった


「えっ、本当に帰るつもりかい!?」


「そもそも俺が立ち入って解決できる問題じゃないな

 フールと二人で話し合って決めてくれ」


 なるほど、これは金髪呼ばわりされるわけだ

 ゴロリは一人納得してケニーを諭すと、宿を後にした




「ゴロリさん……っ!」


 ケルル家の玄関前をうろうろしていたアケミは

 ゴロリを見つけると走りよって抱き付いた


「あまりベタつくと禿げるぞアケミ」


 やわらかい

 ゴロリはアケミに言いながら少し思った。それほど余裕があった


「ふぇっ!?」


「ふふっ、なんだその顔は」


 アケミがゴロリの言葉を真に受け、素っ頓狂な声をあげて離れた

 ゴロリはアケミの顔が面白かったので笑った


「……なぁ、アケミ。ケルルは起きているか?」


 ゴロリは思い付いたように本題に入った


「……ゴロリさんが心配でまだ中には入ってませんが

 出てこないところを見ると、まだ眠っているようです」


 さすがにこれにはゴロリも参った

 主にアケミに申し訳ない気持ちだったが

 意味もなく金髪爆発しろという気持ちも混ざって複雑な気分だった


「そうか……アケミもご苦労だったな」


「本当ですよ」


 アケミは珍しく膨れっ面だった

 少し、からかい過ぎたかな。ゴロリは苦笑いを浮かべながら思った


「心配かけて済まなかったな」


「約束は守ってくれたので許します」


 ゴロリが謝ると、アケミはいつもの柔和な微笑みをしていた


 これは親離れはまだまだ先かな

 ゴロリはそう思いながら、ケルル家の玄関に目を向けた

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