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仕方ないようです

「む、おいおまえたち。起きろ!」


「はっ、申し訳ありません!」


「申し訳ありません!」


 騎士は検問所で立ち寝している衛兵二人に立ち止まった

 二人は騎士に叱咤され、水をかけられたように覚醒して敬礼した


 やっぱりきちんとするところはきちんとしているんだな

 ゴロリは騎士の評価を改めた


「……まったく。何のための見張りだと思っているんだ」


「そういえば、何のためなんだ?」


「ほう、知らんのか。教えてやる

 魔物を一歩も街へ入れぬためだ!」


「二人でか!?」


「いち早く危険を知らせて回るには二人で丁度良い」


「そんな馬鹿な」


 そういえば竜が来た時もフールが出向いていたな

 ゴロリは騎士にいいながら、少し思い出した


「君たちはわたしと別れてどうするつもりだ?」


「結構忙しいぞ」


 何か嫌な予感がして、ゴロリは騎士の言葉をあしらった


「とぼけても無駄だ。君達がフール公に贔屓されていたのはよく知っている」


「それはおまえの思い込みなんじゃないか?」


「むっ……そ、そんなに嫌か。わたしと付き合うの、そんなに嫌か!?」


 騎士があまりに雰囲気を変えてきたので

 ゴロリは少し言いすぎたなと反省した


「わ、わかった。二人に聞いてみて、大丈夫ならいいぞ」


「ほ、本当か!? あ、アケミ様。この通りだ、どうかぁっ!」


 ゴロリの言葉を聞くなり

 騎士はゴロリの後ろにいたアケミに深く礼をして懇願していた


 背丈的にはアケミより騎士の方が大きいこともあって

 敬称を付けるのかとゴロリは少し同情した


「……ま、まぁ、一度くらいでしたら」


「本当か!? ありがとう、ありがとう……!」


 アケミはあまりの迫力に押されてしまったようで

 微妙な顔をしながら遠慮がちにいった

 騎士はアケミの片手を掴みとり、ぶんぶんと振っていた


「け、ケルル様。なんだってする。するからっ!」


 騎士はアケミの片手を優しく元に戻すと

 後ろにいるケルルに向き直った


 プライドも何もあったもんじゃないな

 ゴロリは何度も頭を下げる騎士を見て思った


「うーん、じゃあ顔拝ませてくれよ!」


「ぐっ。そ、それは……」


「おいおい、いくらなんでも――」


 ケルルの天然要求に騎士は地に膝をつきそうになっていた

 そろそろ可哀想に見えてきて止めようとゴロリが口を開いた時だった


「えいっ!」


 騎士はゴロリが全ていうよりも先に

 両手でヘルメットを外してしまった


 まずゴロリの目に飛び込んできたのは耳だった

 明らかに、白い猫の耳が頭の上に付いている


 白い髪は極端に短く切り揃えていて

 本来人が耳を持つ場所には耳はないことが確認できるほどだった


 肌は褐色で、目は瞑っているが可憐と思える顔をしていた


 なるほど、この顔は一発で覚える。ゴロリはそう思った


「……なんかごめん」


「いい。いいとも。ケルル様のためだからな」


 ケルルが謝ると、猫騎士はすぐにヘルメットを被った

 なにやら気まずい雰囲気が流れた


「なんていうか、負けたよ」


「本当か!? やった、やった!」


 ケルルがようやく紡いだ言葉に

 猫騎士はその場で無邪気に何回か飛び跳ねた

 憎めない。ゴロリは素直に思った


「ふふ、どうだ。二人の了承は得たぞ」


「ああ。そうだな」


 猫騎士の得意げな言葉に

 ゴロリは一生分の棒読みを使ったんじゃないかと錯覚した


「よし、そうと決まれば訓練所へ行こう。わたしが直々に案内するぞ!」


「……調べ物はいいのか?」


「それは後だ。君たちの案内を優先する!」


 やっぱり暇なんじゃないか。ゴロリは確信した

 高揚しているようで、猫騎士の足が少し速いように感じた


「ゴロリさん……寝ちゃってたら起こしてくださいね」


「ああ」


「安心しろ。解りやすく手取り足取り教えてやる!」


 猫騎士とゴロリ達の温度差は明らかに違ったが

 全くめげそうもない猫騎士に、大したもんだと思うゴロリであった

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