撤退したようです
ゴロリ達が巨大な門をくぐると自動的に砂煙をあげて門がしまった
「……どうだった?」
出てくるゴロリ達を見て
道の脇にいた全身鎧の騎士が話しかけてきた
「フールとアニーはここにはいないらしい」
「ほう。にわかには信じがたい」
ゴロリが要約して伝えると
騎士は片手の人差し指で顔の辺りを触って考えているようだった
「……なぁ、竜がフールとアニーを連れ去ったといっていたな
具体的にはどんな状況だったんだ?」
「遠巻きから覗いた限り
フールとアニーの間で口論になったあと消えたように見えた」
ゴロリは聞き忘れていたことを騎士に質問するとあっさり騎士は答えた
遠巻きから、という言葉を指摘しようと思ったがやめた
「……なるほど
なぁ、アニーが行きそうな所は知っているか?」
「わからないな……あの金髪の男が今回の元凶なのか?」
「その可能性は高い」
ゴロリがアニーのことを告げると
騎士は少し黙った。驚いたのだろうと察した
「……所詮、奴のランクは熊だ。そんな派手なことはできまい」
「ランクっていうのは個人の強さを表しているのか?」
「国にどれだけ貢献したかで決まる。腕っぷしだけではない」
「必ずしも強いから上がれるのではないわけだ」
騎士の話になるほどと思って、ゴロリは覚えておくことにした
「……仮に金髪の男が一度国を滅ぼすほどの失態をしたなら
下がることもある」
「その件、頼めるか?」
「言われないでも、調べるつもりだ」
もしかしてこの騎士、暇なんじゃないか
ゴロリはそう思いつつあった
「……そういえばなぜここへフールとアニーを連れてきた?」
「あの竜は今回の竜大量出現に関係しているのは確実だ」
「そうだったのか」
彼女のいう通り、竜王という雰囲気ではあったな
ゴロリは少し考え込んだ
(ケルルの母親の状況をみると
その辺の竜を統率することさえも、難しそうだ)
「まぁそういうことなら一旦撤退する必要があるな!
よし、撤退しよう。撤退!」
考え込むゴロリを無視して
騎士は何故か嬉しそうに、いち早く4柱の間を通っていった
「す、凄まじい速さだ」
特に指導してないよな
既に小さくなった騎士を見てゴロリはそんな錯覚さえ覚えた
「怖かったんでしょうか?」
「騎士がか?」
「そんなわけないですよね」
アケミの言葉にゴロリは小さく笑う
アケミもゴロリにつられ、微笑んでいた
「おっちゃん。結構突き放されてるけどいいのか?」
「……ダメだ。置いてかれる。走って行こう!」
ケルルのいった通り、騎士は今や豆粒ほどの大きさになっていた
洒落にならない。ゴロリはそう思って焦った
「そ、そうですね。走りましょう!」
「だな。走ろうか!」
アケミ、ケルルはゴロリの言葉に応じ
ゴロリ、アケミ、ケルルの順で一列になって騎士を追い掛けた
「遅いぞ。何をしていた
なぜアケミがおまえを背負っている?」
「ちょっと足をくじいた。すまんアケミ。もういい」
「……はい」
丁度焼け落ちた森を抜けた辺りだった
騎士にゴロリはバツが悪そうに微笑むと、アケミの背から降りた
アケミとケルルを指導してやっとの思いで騎士に追い付いていた
「ほう……ところで、赤髪の娘の名は?」
「ケルルだが……?」
騎士は首だけ振り返るようにしてゴロリの方を向き、聞いてきた
答えないのもおかしいと思い、ゴロリは素直に答えた
「先ほどの戦闘、拝見させて貰った
ケルルには剣術も合うと思うのだがどうだろう!?」
「ケルルは今のままでも良いと思う」
騎士は営業担当さながらの話術でゴロリに迫った
なんとなくゴロリは察して、釘を刺した
「……そうか、残念だ。君の仲間はどちらも優秀だな
どちらか一人でもいいからといっておいてくれ」
よくよく考えると、国の役人から直々なんだよな
ゴロリは少し思った
「前から気になっていたんだが
なぜ常に全身に鎧を着ているんだ?」
「敵に顔を覚えられないだろう」
こいつ徹底してるな。ゴロリは少し感心した




