大変なようです
「アケミ、ケルル。起きろ……」
ゴロリは窓から差し込む光を見てアケミとケルルにいった
結局ゴロリは二人に気を使って一睡もできないでいた
「ふぁ……?」
最初に起きたのはアケミだった
いい感じに髪が爆発しているので
そのままの体制で少し長くなった黒髪を簡単にといてやると
くすぐったそうに小さく身をよじった
「ケルル。大丈夫か?」
「う、うーん」
ケルルは布団のなかに潜り込んだ
夜行性じゃないんだからとゴロリは微笑した
「ほら、起きてください。ケルルさん」
「うーん、もう少し……」
ケルルを起こすためにアケミは四つん這いになった
この体制には問題があった
主にアケミの胸部がゴロリの顔の上に存在するのだ
絶景だ。いや、違うだろ
ゴロリは揺らされてなぜか腕に抱き付くケルルを横目に
一人乗り突っ込みしていた
「あー、しゃあねぇっ!」
「きゃっ!?」
「うごっ!?」
ケルルは勢いよく上体を起こした。するとどうだろう
アケミのバランスが崩れ、ゴロリの顔にアケミの胸部が見事命中した
年を取ってて良かった
そう思うのは人生で二回目となった
「ご、ゴロリさんごめんなさいっ!」
「……寝起きから騒がしいぞ、おまえたち」
アケミはゆっくり体勢を立て直して、体育座りをした
言いたいことはあったが、ゴロリはこの程度しかいえなかった
「ごめんなさい……」
「ごめん」
アケミ、ケルルともに反省しているようなので
ケルルが吹っ飛ばした布団を畳もうとゴロリは上体を起こした
ゴロリ達は流石に薬草の検品は終わっただろうと
ギルドへ向かっていた
しかし、受付の男がいるだろう所に人は誰もいなかった
それどころか、アニーすらもいないようであった
「……留守のようだ」
「おかしいですね。どうしちゃったんでしょう」
アケミの言葉を聞いてゴロリは辺りを見回した
嫌な予感がした。そうして、それは突然やって来た
「……し、シノズカアケミはいるか!?」
「わたしはここですけど――」
「どうした?」
全身鎧の騎士だった。いつも側に連れている衛兵がいない
アケミの言葉を片手で制して、ゴロリは話を聞いてみることにした
「ああ、誰でもよくないんだ。アケミ。君だけでも来てくれ」
「いやっ!?」
「待て。俺はアケミの保護者だ。事情をいってもらう!」
アケミを無理やり連れ去ろうと、アケミの細い腕を掴んだところで
ゴロリは吠えて、全身鎧の金属じみた片腕を掴む
「ち、違うんだ。フール公と金髪の青年が……つれさられて!」
ゴロリの顔を見て諦めたのか、騎士はアケミから手を離して訴えた
ゴロリも掴んだ手を離して金髪の青年ってアニーのことだよなと脳内保管した
「な、なんだって!?」
「え、えぇっ!?」
「嘘だろ!?」
ゴロリ、アケミ、ケルルは各々驚きの声をあげた
「えっ、ちょっと待ってくれよ
二人はあたしたちの薬草を調べてくれてたんだろ?」
たまに鋭いよな。ゴロリはケルルに感心した
「そんなもの、わたしの威信の前に膝まずいた!」
得意気に言い出す全身鎧の騎士に
いや、膝まずいたのはおまえだろとゴロリは思ったが
いっている場合ではないので、少し考えた
(アニーはまだしも、あの男が遅れを取った相手か)
「……ゴロリさん」
珍しく神妙な顔つきをするゴロリに
アケミは心配するように覗きこんだ
「少し考えさせてくれないか」
「……いいだろう。少しだけだぞ」
騎士は以外にあっさりと後ろへ退いた
なにか考えがあるのかもしれないと勘ぐりたくなったが
切りがないのでゴロリはやめた
「アケミ、ケルル。どう思う?」
ゴロリは振り返ってアケミとケルルに聞いた
「……あのじーさんがやられた相手か」
ケルルは首を捻っていた
信じられない、といった風だ
「まさか、死んでませんよね……?」
「わからないが、その可能性はある」
アケミは少し俯いていた
ゴロリはアケミの言葉に頷いてから答えた
「やっぱりわたし、星の輝明 (スターライトソード)が
見れなくなるのは寂しいです……」
ゴロリはそこなのかと思った
「そ、そうか。ケルルは?」
「あたしはその相手がどんなやつなのか拝みたいね」
「まぁ、わかった……俺はアケミとケルルをサポートする」
アケミ、ケルルともに自分で決めたことに満足したゴロリは
二人の言葉に覚悟を決めた
「あっ……ゴロリさん。ごめんなさいっ」
「そ、そっか。それって使うってことだもんな」
「いいんだ。どうせいつかは使うことになっていただろう」
アケミとケルルは急に自信がなくなったのか、小さくなったようであった
そんな二人をゴロリは労った
「……結構待ったと思うが、どうだ?」
確かに結構待ってくれた。ゴロリはそう思って
騎士の方向を向いた
「俺たち3人でいく」
「……素人を守る余裕はないぞ」
ゴロリの言葉に騎士は腕を組んでいった
「承知の上だ」
「……わかった
ただし、着いてこれなかったら即座に棄てるからな」
騎士は言い終わると、ゴロリに背を向けて進んだ
着いてこいということらしい。ゴロリは何となく察してあとに続いた




