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戦ったそうです

 ゴロリ達はギルドを離れ、森の茂みに入っていた


「うりゃあっ!」


「ゲッ……!」


 ケルルが拳を振りかぶり、放つ

 緑色で尖った耳を持つ小型なモンスターは

 目をひんむくと唾をぶちまけてやがて膝から崩れるように倒れた


「ケルルさん、カッコいい……!」


 ケルルの戦いぶりにアケミは目を輝かせた

 アケミはゴロリの隣を陣取っていた

 ゴロリもその方が安全だと思ったのでさして気にはしなかった


「そうか、照れるなぁ!」


 ケルルはアケミの賛辞に頭を掻いていた


(やはりケルルの戦闘能力は頼りになるな)


 ケルルの足元には緑色がモンスター4体地に伏せていた

 指導なくして依頼を達成できたことに、ゴロリは少し安心していた


「……武器の類いはなさそうだ。髪を頂戴しよう」


 ゴロリは受付の男の忠告を守り、手早く作業をしようと

 ケルルの足元にいる緑色のモンスターを調べた


 目標モンスターが描かれた羊皮紙は貰っていた

 描かれたモンスターはお世辞にも上手いとはいえなかったが

 特徴は掴んでいたので、さして特定には苦労しなかった


「ケルル。怪我はないか?」


「まぁな。案外楽勝だった」


 ケルルは肩で息をしていた


 たとえケルルに武術の心得があったとしても

 彼女一人に任せておく状況はどうにかできなかったのか

 ゴロリは今更ながらに反省していた


「グォオッ!」


「むっ!?」


 ゴロリは即座にその咆哮を確認した


「あーくそ。耳がキンキンする」


「アケミ、ケルルを!」


 ケルルは咆哮を直に聞いてしまったようで

 少しふらっとしていた


「……悪い。アケミちゃん」


「謝らないで下さい」


 すんでのところでアケミがケルルに寄り添い、支えた


「ゴロリさん……今のって」


「ああ、近いな。髪は持ったし、さっさとずらかろう」


 アケミの言葉にゴロリは頷く

 当初は竜と遭遇した場合、ゴブリン討伐は諦めようとゴロリは考えていた

 しかし、実際にはケルルが頑張ってくれたこともあってできなかった


「逃げようたってそうはさせない!」


「くっ……!」


 人の声がした。赤い竜は空から降り立った

 ゴロリは走った。走って、アケミとケルルの元へ急いだ


 竜は白目を剥いている。凡そ生物の目ではなかった


 翼はどんなに背の高い木々と比べても足りないほど高く、大きかった


 2本の脚にそれぞれ付いている4本の鉤爪も大きく

 ケルルとアケミが隠れることが出来そうだった


「……大丈夫か」


「お、おっちゃん。これは一体」


「……っ」


 今、赤い竜はゴロリ達の目の前にいた

 ケルルはその竜の姿になんとか耐えていたが

 アケミが蛇に睨まれたカエルのようになっていた


 ゴロリには竜の頭上から発せられた声に聞き覚えあった

 竜は頭から血が滴り落ちていた。おそらくあの上だろう


「ぼ、ボクを侮辱するから悪いんだ。死んじゃえ!」


「逃げるぞ!」


 禄なことをしない。ゴロリは心から思った

 よく聞こえもしない泥棒の少女の言葉を聞くのも馬鹿馬鹿しいと

 ゴロリは叫んだが、アケミとケルルは二人ともきょとんとしていた


「動けっ、死にたいのか!」


「あっ、そうだったっ!」


「ご、ゴロリさん。掴まって!」


 ゴロリが更に強めに言葉をいうと

 目が覚めたように二人は動き出した




 ゴロリ達は、ドラゴンライダーしている泥棒の少女から逃げ続けた

 赤い竜は相当頭に血が登っているらしく走って追ってきた


 結構な速さだった

 アケミとケルルは木から木へ飛び越えていっているが

 赤い竜との距離は一向に離れなかった


「おっちゃん。前いってたのってこれか?」


「今質問をするなっ、気が散る!」


「……これなんだな」


 ゴロリはアケミに背負われながらテンションを維持した

 ケルルもさすがに察したようで、黙ってついてきた


「グギャアァッ!」


「そのまま進めぇ、小娘!」


「はいっ!」


 ゴロリには戦うという選択肢は頭になかった

 そんなに怒鳴り散らしていては最後には血管が切れてしまいそうだった

 だから、街まで進んだほうがいいだろう。そう決断した


「おっちゃん、竜が突然止まったぜ!?」


「構うな。さっさと進め!」


 ゴロリはケルルにいいながら後ろを振り返った

 赤い竜はなにやら大きく仰け反っているように見える

 嫌な予感がした


「あいつ、派手にやらかすつもりだ。気合いで避けろぉ!

 ……ぐぅっ!」


 次の瞬間、辺り一面焼け野原になった

 凪ぎ払う様に熱線を吐き、森だったこともあって暑さを体に感じた


「ご、ゴロリさん。ごめんなさいっ」


「うるさい。貴様は前を見ろ!」


「は、はいぃっ!」


 ゴロリはアケミ庇い、背中に軽く火傷をした

 正直ひやりとした。アケミの奇跡的な身のこなしがなかったら

 ゴロリは確実に黒焦げになっていたと思った


「ぐっ……おっちゃん、下行こう。熱すぎる」


「名案だ。よし、下に行け。灰被りぃ!」


「はいっ!」


 ケルルは周囲の炎を嫌って下に向かった

 そんなケルルを追い掛けるようにアケミも向かった




「……撒いたか?」


 ケルルの言葉にゴロリは後ろを確認する。炎が渦のようになっていた

 これによってゴロリ達を確認し難くなったとも考えられた


「油断をするな、さっさと街まで進むぞ!」


「わかった」


「はいっ」


 ケルルとアケミは炎が上がる木の枝を跳んで避けながら先を進んだ

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