語り合ったようです
「んで、どうするんだ?」
「そうだな、今日は大人しくしてるか
宿を早めにとってさ」
ケルルの問いにゴロリは少し考えていった
その提案にアケミも頷く
「うーん、それならあたしの家とかどうだ?
道場やってるからまぁまぁ広いけど」
「道場か……そんなところが」
知らない言葉が多い世界で知っている言葉がでると
ゴロリは感慨深くなった
「門下生はあたし以外いねぇけどな!」
からからと笑うケルルに
どうやってその道場は生計立てているのかゴロリは少し気になった
「行ってみましょう。ゴロリさんっ」
「そうだな」
アケミも色々興味を持つようになったな
ゴロリはしみじみ思った
「ここだな」
文字通り紆余曲折したあと、ゴロリ達はケルルの家に着いた
「……うはぁー、こりゃたまげたな」
「そ、想像以上ですね」
なんだか日本庭園でもありそうな平屋の家だった
ゴロリとアケミはその外観に圧倒されてしまった
「ま、入ってくれ」
「あっ、ああ。失礼します」
「……失礼します」
ケルル、ゴロリ、アケミの順で家に入った。引き戸だった
いや、世界観変わり過ぎだろうとゴロリは思った
「まぁ、一人暮らしだし気遣わないでいいから」
土足で入っていくケルルにゴロリは久しぶりに痺れた
勿体ない。素直にそう思った
「……行くか」
「……ですね」
ゴロリはアケミと顔を見合わせ
仕方なく土足で入っていった
「ここの部屋さ」
(フットサルくらいは出来そうだ)
ケルルの声がその一室に響いた
天井には一対の巨大な牡鹿が描かれていた
鹿の目の部分が照明になっているようで
ゴロリは匠の遊び心を感じた
「ひ、広いですね」
いいながらアケミも、少し微妙な顔をしていた
「んで、なにして時間を潰すか?」
ケルルは由緒ありそうな部屋で
土足であぐらをかいていた
「とりあえず座るか」
「……ですね」
椅子はないのでゴロリはやむを得ず立ち膝をした
アケミも真似をしようとしたが、疲れると思ったので
体育座りするのようにゴロリはジェスチャーした
「この際だ。情報を整理しよう」
ゴロリはこの機会にケルルと情報を共有したいと考えていた
「情報を整理?」
ケルルは小首を傾げた
「まず、ここはなんだ?」
「あたしんち」
ケルルは即答した
「そうじゃなくてだな……」
ゴロリは片手で少し顔を掻いた
「あたしもオカンの家を継いだだけだからな
……あっ、でもシカガミ流をちょっとかじった」
「シカガミ流?」
「こうすりゃ勝てるみたいな体術」
(拳法か。なるほどな)
ゴロリは首が伸びそうだとくだらないことを思った
「……そういえば、ギルドのランクにも鹿があったな」
「ああ。兎、熊、狼、馬、鹿の順でランクが高いのさ」
「……竜は入っていないんだな。以外だ」
「あたしもわかんないけど、鹿はよく食べたもんだよ」
「なるほどな」
人間に貢献している動物ということだろうか
ゴロリは少し納得した
「そうそう、おっちゃんとアケミちゃんはどんな旅してたんだ?」
ケルルは自分の足首を持ちながら、無邪気に聞いた
「……実は最近アケミも竜の討伐を頼まれたんだ
しかも、騎士が直々にではってきた」
「えっ、アケミちゃんそんな強いのか。スゴいな!」
「い、いやそんなことはないです!」
アケミもケルルの言葉に満更でもなさそうなのが
ゴロリは少し面白かった
「まぁ、アケミを強くさせたのは俺なんだがな
ほら、ケルルも心当たりあるだろう?」
ゴロリはケルルの顔を見てピンときていないなと思った
(……この話は追々、だな)
ゴロリには沈黙が痛かった
アケミもこれには苦笑いを浮かべていた
「ま、まぁ、あれだな。おっちゃん丸くなったよっ!
最初あった時とは大違いだ」
「……そうか?」
ケルルの言葉に否定できない自分がいた
ゴロリはこの世界にやって来たことで寛容になったといえた
「そうですね」
アケミはゴロリを横目にしてにこやかにいった
「……ケルル、アケミ
とにかく今日だけは外にでないようにしような」
「はーい!」
二人は元気よく返事をした




