増えたようです
「いただきます」
「いただきます……」
アケミも浮かないゴロリの顔に影響されいまいち元気がなかった
「ご馳走様でした」
「……ご馳走様でした」
終始無言でフライビーンズを食べて、あっという間に二人の皿はなくなった
「そうだな。アケミ、今日はケルルを探そう」
「ケルルさんをですか……?」
「ああ。彼女と共に依頼を受けよう」
「そうですね……そうしましょうか」
あの男がいない今薬草取りをすることは難しいだろう
それならば、ついでにケルルの助けになるようなことをしよう
ゴロリはそう思った
ゴロリ達はギルドの入り口に向かった
アケミはゴロリの隣で周囲を注意深く観察していた
「あっ、ケルルさーん!」
そうしていると、アケミが大きく手を振った
「ん? なにしてんだおっちゃん達」
「……ああ。ケルルを探していた」
ギルドからの帰りらしい。赤髪の少女がこちらに歩いてきた
束ね髪、タンクトップ、ホットパンツは相変わらずで
前衛的な格好をしていた
「ケルル。共に依頼を受けないか?」
ゴロリは早々に本題にうつった
「それはいいけど、もう依頼を受けてきちゃったんだよな」
「本当か……手伝うことは?」
「出来ないこともないかな。でも難しいかもしれない」
「どんな内容だ?」
「うーん、竜の討伐?」
「なにぃっ!?」
ゴロリもこれには驚いた
「達成したら二階級特進だってさ。やるっきゃないだろ」
「……それは、もしかして名指しの依頼とかじゃなかったか?」
「なんでわかったんだ?」
さすがに抜け目ないなとゴロリは思った
明るい顔のケルルとは対照的に、ゴロリの顔はほぼ死んでいた
「ご、ゴロリさんっ」
アケミはケルルを確実に心配していた
「……ケルル。その依頼は辞めることはできないのか?」
「……なんで?」
「危険すぎる」
受付の男がではるくらいの敵だ。彼女でも遅れをとるかもしれない
ゴロリもそれは避けたかった
「……で、でもっもう受けちまったし」
「すっぽかしてしまえ」
「……それやっちまうと、他の依頼が受けられなくなる」
うまいこと出来てるなとゴロリは思った
ケルルもようやくことの重大さに理解したようだ
「じゃあそいつを説得するぞ」
「えっ、ちょっ、おっちゃんっ!」
ケルルを連れてゴロリ達はギルドに入っていった
「どういうことだっ!」
ゴロリは受付の机を拳で叩いた
「も、申し訳ありません。わたしたちには権限が……」
受付嬢は先程からこのような話を繰り返していた
「……彼女はランク兎だぞ
それを竜に挑ませるなんぞどうかしてるとは思わんのか!?」
「ゴロリさん。ちょっと……」
「おいおい、おっちゃん……」
アケミ、ケルルは共にたじろいだ
ゴロリが大声をあげてしまったので
屈強な冒険者達も巻き込んで結構な騒ぎになってしまった
「……もういい。貴様では話にならん。責任者を呼べ」
「責任者は只今不在でして――」
(あの男のことだな……そこまで考えていたというのか)
受付の男はもういない
それはゴロリを止める者もいないということだった
「……それはそいつにはあとから話せばいい
とにかく無効にしろ。今すぐに」
ゴロリは受付の男の言葉が頭を掠め
怒る寸前のところで止まっていた
「……か、畏まりましたぁっ」
その覇気にただならぬ緊張を感じ取ったのか
すんなりとケルルの依頼はなかったことになった
ゴロリ達は早々にギルドから出た
「……なんか知らないが、助かったよ」
ケルルはあまりピンときていない顔ではあったが感謝してくれた
「……ケルル。今日からしばらく行動を共にしよう」
ゴロリはケルルが心配だった
あのような強硬手段にでたのだ。またなにかないとも限らなかった
「えぇっまぁ……でもそれはなんかアケミちゃんに悪いな」
そういうところは気にするんだなとゴロリは以外に思った
「わたし、ケルルさんなら良いですよ?」
「ほんとか!?」
アケミも承諾したようなので、ゴロリは安心した
「まぁ、同姓どうしだからこそ出来る話もあるだろう
改めてよろしく」
「まぁ、よろしくな」
ゴロリはケルルに笑いかけると、ケルルは片手を差し出した
「ああ」
ゴロリは短く返事をして、ケルルの小さな手を握った




