エスベルツ
エスベルツに殉ずる者達にとって森と1つになる事は幸いであった。
そこで生き、そこで暮らし、そこで死す。
その過程の中で森から得て、その身の血肉となったものを森へと還す。
エスベルツに深く生きる者にとっては当たり前の考え方であった。
森の取りこんだソレを森が受け入れるのであれば、エスベルツに生きる人達にとっても受け入れるべきものなのかも知れないが、ソレは受け入れ難いものであった。
ソレは長らく、|この世界≪オブ・バース≫には|存在していなかった≪いなかった≫。
ソレは長らく、|あの世界≪リブ・バース≫にも|存在していなかった≪いなかった≫。
ソレにかつて滅ぼされた村は多く、時には町も失った。
ソレは種族を越えて忌避されていた。
ソレはかつてオークと呼ばれていた。
オークの出現にいち早く気付いたのは、国境大森林で生活するエルフ達であった。
そして最初の被害者もまたエルフ達であった。
そしてエルフ達の困惑を産んだのは、オークもまた森の一部となっているようであったからだ。
オークの概念を取り込んだ森は今までの森の様相を大きく変えていた。
元々森の一部と変化し同化していっていた存在力を循環させて保つ存在としての森が、圧縮された増やす意思に森の方が取り込まれていた。
女性を苗床に樹を育て、そのウロよりオークが生まれる。そのオークが足を運び森を広げる。
森の外に脅威が漏れ聞こえる頃には、エルフはその数のほとんどを失っていた。
そして、聖地エスベルツと呼ばれていた森が聖地と呼ばれなくなるのも程なくの事だった。
ボルグが試練の塔より戻り、ゲンゾウと合流する頃には、その報がコルトディンに届くようになっていた。
またその頃には連合国側にも報は届いていた。
報告を受けての動きは両側とも大差はなかった。
それは監視と殲滅を軸に森への接近を禁ずる形の動きであった。
火事に対して周りの家を取り潰し延焼を抑えるようなやり口ではあったが、それでも時間は確実に稼いでいた。
幾度となく切り捨てられたエルフ達の心象や、共に戦った記憶の残る者達の想いを考えなければ、それは両軍にとっても無難な手であった。
エスベルツの様子。オークについてをゲンゾウに知らせるまでは、無難な手であると思われていた。
すみません。かなり失速しています。