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肉を切らせて骨を断つ。但しスケルトンに切らせる物無し

魔王城より北。山を越えて更に山。山と続く道を歩む。

幾分なだらかな高原に辿り着いた時に、丘の上から声をかけられる。


「いよぅ!あんたが魔王様でいいのかい?」

巨躯。丘の高さも加わり顔もよくわからぬ高さから声が落ちてくる。

「如何にも。心配せずとも二度と忘れる事はなかろう。(無礼者っ!余の顔を忘れたかっ!・・・とかも言って見たくなるなぁ。)」

僅かに掛ける言葉がブレかけながらも言い切るゲンゾウ。

「そうか。んじゃ提案があるんだがいいか?」

「面倒かけておいてその上提案か・・・手短にせよ。」

「・・・むー・・・ここは無礼者!と横槍が入ってからの申してみよでしょうに・・・。」

生魔の小声が聞こえたがしれっと無視する。

「団体で来てもらっておいて何だが・・・一騎討ちで決めてしまわないか?」

「のった!!!!」

「「「「お前が言うなぁぁぁぁぁぁあああ!!!!」」」」

一騎討ちの言葉に過敏すぎる反応を示すカリッツ。カルファ、シシノアも含めての総ツッコミである。


丘の上で構えていたのはカルファと50程の巨人族。そしてシシノアを含めた鳥人族達である。その総数は丘向こうにもいるようで数が読めない。

対してこちらは魔王ゲンゾウと生魔。影。カリッツ率いる2000の骨達である。


「まぁ・・・話には実際乗るんじゃがの・・・。」

ゲンゾウは頭を掻きながら前に出る。明確に悪意を込めてカリッツの方を向いて頭を掻く。

「くっ!一騎討ちはそちらは誰が出るのだ?」

悪意ある姿に一瞬殺意を高めるも、ゲンゾウをチラ見しながらカリッツは剣をカチンカチンと抜き差しして譲って下さいオーラを全開にする。

「こっちは俺だよ。バルバドイのおっさんにいちゃんが出てくれるんなら良かったんだがなぁ」

カルファが巨剣を片手にそう答える。


実は愚痴り合いの中で出てきた策の一つでもあった。『竜と魔王は今の建前上はトントンだろ?じゃあ、おっさん引き合いに出して引っ込めたら部下同士の決闘でみたいな流れにならん?』作戦だった。

そしておっさん呼びは禁止された。


カリッツはそのオーラを増大させて必死にねだった。『ここまで向こうがお膳立てしてますよ?魔王様?ここで退くとか、ワシが出るとか空気読まなさすぎじゃありません?』と目の無い孔で語ってきていた。


そして折れると共に盛大なため息が上司まおうと、同僚せいまから。歓声が部下達アンデットたちから上がるのであった・・・。




カルファは目論見を達成こそしたがそれで勝利が出来るかはまた別問題であった。

戦う相手が決まると自然と軽口は無くなっていった。

カリッツは歓喜と恐れに震えていた。

身長・体重・筋肉量・BWHに至るまで見事に敗北している相手との戦いだ。

自分の剣が一体如何程に効果を示すだろうか。

冗談も多分に含まれているが其れ程までに相手を羨んでいるのだ。

恵まれた体格にくたいを彼が持っているという事実を。


カルファは巨剣を両の手で背負い構える。

カリッツは納刀したまま手を添える。


先に仕掛けたのはカルファであった。

無論リーチが違う。距離をつめようと移動を続けていたのはむしろカリッツの方である。

駆けるではなくジリジリと足に何時でも駆けれるように力を溜めながらであった。

カルファはその上段からの振り下ろされる暴力を叩きつけるべく一気に間合いを詰めた。

カルファの間合いを詰め振るわれるその剣も、カリッツにとってはまったくの射程外である。

半端な避け方では暴力の余波に巻き込まれるが大きく飛び退いても接敵が出来ないだけである。

常に活路は懐中にあり。

カリッツは加速する。その余波を背に受け加速出来る様に避ける時も常に前へ。

カリッツは疾駆する。わされた剣を無理矢理に引き摺って弾き飛ばそうとするその剣と地面の間を擦り抜ける為に。

カリッツは飛ぶ。引き摺った剣より片手を放し打ちつけ様とするその拳をくぐる為に。


カリッツの持つ剣は直刀である。それも刺す事に重きを置いている。

切る事も可能ではあるが、それではベストパフォーマンスは誇れない。

しかし、その剣をカルファの手首に這わせるように抜き。肉を切る。

足らぬ力は速度で補う。足らぬ重さは速度で補う。

運動エネルギーは乗算だ。両立出来る事に越した事はないが0でなければ増すのだ。

避ける置き土産の手首。そして本命の足へとそのまま抜き身になった剣を向ける。


カルファの蹴りの迎撃を避けながらくるぶしから逆側へと抜けるように貫く。

狙いは筋肉の付け根だ。体格差はあれどそれでも蹴りあげられなけば更に狙うべき位置は低くなる。

カリッツはその機会は逃さなかった。




負傷後のカルファの動きは相討ち覚悟であった。

しかし、我慢の出来る男ではなく肉が切られるのを待てず、避けられ皮を切られる。

確実になぶられていた。

全部で17箇所。切った時にはカリッツは興味を亡くし、背を向けて剣を納めていた。

戦士として戦場で死す事の誉れではカリッツは満たされない。

トドメを刺す為に自らの骨を砕かれる事を恐れたカリッツはそこで逃げる事にした。

技量の差を見せつけたその段階で留め置く事で生を取ったのだった。

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