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第四章〈潜む奇跡〉4-1

「お弁当持ってきた?」

「朝起きれなかったから屋台で買ってきたよ」

「え、何々?」

 自分の前を通り過ぎていく女子学園生が、紙袋を広げて友人と甘味談義を繰り広げる様子を、ライエンティールはベンチに座ってじっと眺めていた。

 そうしている内に、別の学園生の集団が雑談しながら通過する。その手には様々な応援グッズなどがあり、イベントを盛り上げ、同時に出店収入を得ようという自治会催事部の意図が見え隠れしていた。

「ねぇねぇ、今日の昇格戦どうなるかな?」

「やっぱり防衛成功じゃない? あっちはもう最高学年なんだし」

「でも結構負けてるよね、あの人」

「そういえば、今の八位って二年生だっけ。負けたのは八位が一年生の頃だったよね」

「じゃあ今日も……」

 ライエンティールが座っているのは、学園本棟から遠く離れた大演習場に併設された公園のベンチだ。

 最新技術の粋を凝らして作られた大演習場は現代の闘技場コロッセオとも称され、学内公式戦――昇格戦はこの中の一種――が行われる際には外部の招待客も多く訪れる。

 招待客の中には成績確認のために訪れる上位一〇人の関係者もおり、学内公式戦が一種の試験として用いられていることはよく知られていた。

 パトリック・グラントの関係者と思わしき神聖帝国の高官が、帯同してきた政府関係者や軍関係者に如何にパトリックが素晴らしい錬装甲冑装着者であるか熱弁を振るう光景も、先ほど公園に設置されている超大型モニターに映り込んでいた。

「マイトがわたしのことなんて以外と誰も気にしないって言ってたけど、本当だわ」

 ライエンティールはぼそりと呟き、イメージトレーニングを始める。

 彼女は公式戦の前にはこの公園で最後のイメージトレーニングをするのが習慣になっていた。

 他の参加者が演習場内の控え室で静かに出番を待つのに較べ、彼女は自然の風を感じることのできる公園などを好んだ。

 それは彼女が高機動戦術を好み、演習場一杯に動き回ることが原因かもしれない。閉塞感のある屋内よりも、肌で風を感じる屋外の方が、実戦に近いイメージが出来るのだ。

(〈風の魔女〉は完全に仕上がっているって言ってたし、シミュレーションも一昨日から三桁はできた。全機能がほぼ一割増しになった今でも完全に乗りこなせる)

 ライエンティールの錬装甲冑である〈風の魔女〉は、昨日ようやく組み立てと調整が終わった。今は演習場内の整備施設で、レギュレーション審査前の最終調整が行われている最中だ。

 今日の天候やライエンティールの体調に合わせての微調整を行う最終調整は、目の下に隈を作ったタックと、何故かタック以上の仕事をこなしたのに欠片も疲労を感じさせないマイト、そして協力を申し出たメルライアが行っている。

 調整に必要な諸々の身体情報の採取が終わった今、ライエンティールにできることはもうない。あとは自分自身の心身の調整を行うのみである。

「〈風の魔女〉、新品みたいになってたなぁ……」

 錬装甲冑メーカーに装甲板を納入する会社に発注し、ライエンティールの体型に合わせて一から作り直した装甲板。

 彼女の身体を包み込み、同時に錬装甲冑の骨格を担い、各インターフェースとの繋がりを助けるメインフレームも、その八割が新しく作られたものだ。センサー類はライエンティールに合わせて選別されたもので、これも実績のあるメーカーのものを使っている。

 しかし、総ての武装はライエンティールの意見もあり、交換はされなかった。重量バランスや間合い、連射速度などは今の武装に慣れているためだ。

 それに、規格化された装甲などと違って武装の変更には時間が掛かる。

 学園基準の各レギュレーションを満たした武装であるかどうかの検査を行わねばならず、運営側に相手側の協力者がいる状況では意図的に検査を遅延されるなどの妨害の危険性もあった。

「お金、払えるといいなぁ」

 そうしてほぼ完璧な仕上がりを見せるライエンティールの〈風の魔女〉。

 残るはライエンティール本人の仕上がり具合ということになる。錬装甲冑の出来が良ければ良いほど、弥が上にも彼女に掛かるプレッシャーは大きなものになった。

「出来る、わたしはやれる」

 他人の期待の重さを彼女は初めて自覚した。

 今までは友人たちに応援されても自分の力だけで戦うのだからなるようになると思っていた。

 しかし、他人の力を借りていることを知った今、自分の勝敗はそれらの人々の価値にも直結すると理解した。

「お父さんも同じ――ううん、もっと強いプレッシャーの中で戦ってたんだ」

 精鋭部隊を率いる父が感じる重圧は、今のライエンティールよりも遙かに大きなものだっただろう。

 部下とその家族。軍、そして国家の期待がのし掛かる中で、グルツはそれでも笑っていた。ライエンティールはその笑顔をよく覚えている。覚えているからこそ、負けたくはなかった。

「近付く、もっとお父さんに」

 そしていつか、その汚名を払ってみせる。

 グルツ・エルマという男がいたからこそ、ライエンティール・ヴィルトリアという戦闘導術士が生まれたのだと認めさせる。

「よし」

 ライエンティールは立ち上がり、空を仰いだ。

 白い雲が散らばっている以外は、良く晴れた空だった。

「勝とう」

 誰にともなく呟いたライエンティールは、大演習場に向けて一歩を踏み出した。

 その姿を眺める存在に気付かぬまま。



「アレが“鍛神”の剣か」

「ええ、可愛らしい剣でしょう」

「可愛らしい……ふん、へし折れなければいいけれど!」

 大演習場観覧席最上部外縁。貴賓室へ通じる扉が並ぶ一角に、その集団はいた。

 大演習場周辺を望む展望ラウンジとして貴賓客に開放されているそこは、通常であれば参加者の後ろ盾となる人物たちが様々な言葉を交わす場所となっている。

 しかし今回、この一角は閑散としていた。二陣営による戦いの場合、半分ずつをそれぞれの陣営の招待客が占めることになるのだが、ライエンティール陣営に招待するような相手はほとんどいないからだ。

 一応建前として連合空軍の高官が数名招待されていたが、グルツ・エルマの娘の戦いとなれば、彼らが姿を見せる筈はない。

 その結果人通りのなくなったラウンジは、ライエンティールではなく彼女の背後にいる者の力を確認しようという者たちが占有することになった。

「サンジェルミよ、彼は――あの方は本当に今回の戦いで力を見せるのか?」

 老若男女二〇人程度の集団の中で一際目を引く豪奢な長衣姿の老人が、傍らに立つ青年――サンジェルミに問い掛けた。

 その目は深い皺と長い眉の中に埋もれているが、ちらりと見える青い瞳は恐ろしいまでの生命力に満ちていた。その瞳だけを見れば、誰も彼を老人などとは思わないだろう。

「ええ、副盟主様。彼は自分の血をよく知っているようです。あの血は、人々の前で奇跡を起こさずにはいられない。それが人々を救う道だと思っている」

 サンジェルミは恭しく頭を垂れ、自信に満ちた答えを返した。

 だが、それでも納得できないという者もいる。一団の中で異彩を放つ、露出の多い衣裳を纏った女だった。

 彼女の褐色の肌は滑らかで艶があったが、それは果たして自然に生まれたものなのかという疑問を見る者に与えている。彼女はもう五〇年、同じ姿だった。

「そうかしら? 百年前のあの女は、世界を支配するだけの力を持ちながら、それを拒否した。当時の世情を考えれば、今よりもよほど奇跡による救済が必要だったでしょうに」

 女はサンジェルミを睨みながら、そういって周囲の者たちに同意を求めた。

 中には彼女に同意する者もいたが、大半は静観を決め込むようだ。女は不満そうに鼻を鳴らし、答えを求めてサンジェルミを見た。

「エウカリア様」

 サンジェルミは女性なら誰もが見とれるような完璧な笑みを見せたが、エウカリアと呼ばれた女は表情を変えない。

「当時のあの方は、俗物の王の手にありました。我らが裏切り者のあの男――ジューダです。我々の研究を盗み出し、あの方を利用することのみを考えていたジューダのことを思えば、むしろ奇跡を起こさない方が我々の望みに適うのでは?」

「でも……」

 サンジェルミに反駁しようとするエウカリアを、その隣に立つ東洋人の男が遮った。

「確かに、あの男は最後まで俗物だった。世界を手にするなどという下等な願いのために、我らの手からあの方を拐かしたのだから」

 男はサンジェルミに頷いて見せた。

「ええ、我々はあの男に出し抜かれ、奇跡を逸した。ですがそれによって、より強い力を持つ“鍛神”を得る機会に恵まれました」

「彼は奇跡の価値を知っている。今はそれで十分ではないですか。我々が欲するのは俗世の栄光ではない。俗物どもと同じように焦る必要はありません」

 一同を見渡し、サンジェルミは深々と頭を垂れた。

「さて、長々と失礼いたしました。そろそろ部屋に入りましょう」

「うむ、よろしく頼む」

「はい、ではこちらに」

 副盟主と呼ばれた老人が、先頭を切って歩き始めたサンジェルミに続く。

 その後を、一団は組織内部の立場に準じて歩き始めた。

 口々に奇跡を見られることへの期待を唱えながら、彼らはもっとも大きな貴賓室へと向かっていく。

 だがその中でただひとり、エウカリアだけがその場に留まり、さきほどまでライエンティールが座っていたベンチを見下ろした。

「“鍛神”の打つ剣が、あんな小娘に相応しいものか……!」

 血が滴るほどに強く拳を握り、瞳に憎悪を宿らせて彼女は吐き捨てる。

「“結社パーティ”の連中共々、見定めてあげるわ」

 彼女が去ったあと、そこには小さな血溜まりがあった。その血はやがて床材に染み込み、姿を消した。



『本日の開催予定試合は、本年度学内公式戦の第六回再戦。学園内総合順位第一〇位、戦闘導術士科四年パトリック・グラントと同十一位、戦闘導術士科二年ライエンティール・ヴィルトリアの模擬総合試合です。前回行われた第六回模擬総合試合において、ライエンティール・ヴィルトリア機が学園側の人為的要因で故障したことによる再戦となります』

 ぐるりと観客席が試合場を囲む大演習場。

 それは異名の通りに古代ローマの闘技場によく似た場所だった。

 人々の熱気も当時と変わらず、数少ない学校公認のイベントということもあって学園生たちの関心は高かった。

 それに高度な技能を持つ儀界導術士の養成機関である学園の正当性を訴えるには、こういったイベントはちょうどいい。周辺の都市や国からの一般客も受け入れており、演習場の観客席の七割は彼らが占めている。

 欧州の各国は大なり小なり世界帝国ローマの後継を自負している。その古代ローマの雰囲気を味わえるとなれば、欧州の国々から来た学園生たちや一般観客が盛り上がるのも当たり前のことだった。

「えーと……って痛いですわね! ちょっとあなた!」

 そんな大演習場観覧席の中程の通路で、メイルフィードが叫んでいる。どうやら足を踏まれてしまったらしいが、通路は学園生や一般客がひっきりなしに移動しており、誰が踏んだのかさえ分からない状況だった。

「ああもう!」

 メイルフィードは地団駄を踏み、少し唸ったあとにがくりと肩を落とした。

 これだけ騒がしいと、怒るにも不向きである。彼女は事前に打ち合わせしておいた観覧席に向かった。

 そこでは、メルライアがPDAよりも一回り大きな端末を手に眼下の試合場を見詰めていた。

「メルライア・ロシェードさん、随分と大がかりな仕掛けですのね」

 その隣に座ったメイルフィードは、ペンダント型の導術管制端末を操作して日よけの力場体を浮かべ、メルライアに笑いかけた。

「そうね」

 しかしメルライアはちらりと一瞥をくれるだけで、すぐに演習場に視線を戻してしまう。

「過保護ね。いつまで経ってもあの娘は独り立ちできないんじゃないかしら?」

 メイルフィードは肩を竦め、近くを通り掛かった軽食の売り子にベーグルと紅茶を注文する。売り子がそれを用意している間、メイルフィードはメルライアの横顔をじっと観察した。

 いつもの怜悧な相貌は、今は僅かな焦燥を滲ませている。

 付き合いの長い者にしか分からない程度のものだが、メイルフィードの目はしっかりとそれを捉えていた。

 そしてベーグルと紅茶の準備が整うと、五ユーロという値段に五〇ユーロ紙幣を手渡す。そして一言。

「お釣りはいいわ」

 ふだん余り紙幣を持ち歩かないメイルフィードは、鞄の中のマネーホルダーから適当に紙幣を取り出しているようだ。メルライアが呆れたような表情を浮かべて自分を見ていることに気付いても、そんなもの何処吹く風と言わんばかりにベーグルを囓った。

「どちらがどちらかしら?」

 メイルフィードは観客席の最下層、試合場の両端にある箱形のブースを見る。

 それは両陣営の担当整備員が詰めている管制室だった。

「向かって左。あっちの大モニターに管制室の映像も出てるわ」

 メルライアはそう言って前方に見える大型モニターを示す。

 そこには両陣営の管制室内の映像が映っていた。

「あっちは定数一杯の八人。こっちはタックも入れて二人なのね」

「私が行こうかとも思ったんだけど、登録が間に合わなかったわ」

「前の時は――」

「私とタック、そして錬装技匠科の四年生がいたわ」

 そして、彼らはライエンティールの敗北の瞬間を見た。

 次の機会には必ずライエンティールを勝たせてみせると息巻いたが、今回は再登録に時間が掛かったためにメルライアは観客席での応援ということになってしまった。

「妨害?」

「だったら良かったんだけど、リリィはこの間、学園を通して情報統括科の方に管制官要請を出した。要するに学園が支援して最低限の体制を整えるためのシステムね」

「ああ、もしかして誰かを指名するということはできませんのね」

「そういうこと」

 メルライアは唇を噛み、今回の管制官養成に待ったを掛けた情報統括科の先輩の顔を思い浮かべた。

 マイト・ガルディアンの友人とされる人物、ジルア・リノリアンだ。

「――あのへたれモヤシ眼鏡め」

 ぼそりと漏れた怨嗟の声は、メイルフィードの耳にしっかりと入っていた。

 戦闘中に管制官の声を聞き取れない戦闘導術士は長生きできないのだ。

「元凶はあの先輩ですの?」

「管制室の管制コンピュータ用のデータが間に合わなかったって言ってたわ。持ち込みの管制データを使ってやるから、私がいてもあんまり役に立たないって……あのクソ眼鏡め」

 どうやらメルライアの中で、ジルアの評価は最低点に到達しているようだ。

 言葉にして他人を罵倒することがほとんどないメルライアをここまで怒らせているのだから、それはある種の才能かもしれない。

「武装導術士なら戦場での前線管制も職分ですわ。彼もこの程度の試合場であれば十分できるでしょう。任せた方がいいんじゃありませんか?」

 メイルフィードの言葉には一理以上の分があった。

 戦場において、武装導術士は戦域の戦闘導術士たちを管制することが多い。

 有効な導術補助や導術支援を行うには、彼らを正確に管制する必要があるからだった。

 そして戦場では、たとえ武装導術士の階級が下であっても戦闘導術士はその指示に従う。数多の妨害手段が展開される戦場で前線司令部からの指示を受けるには、武装導術士の通信管制系導術が不可欠なのだ。

「要の儀界導術士ですわね。メル、この学園の武装導術士科が何人かは知っていて?」

 メイルフィードの問いに、メルライアは一瞬考える素振りを見せ、答えた。

「彼も入れて、三十三人ね」

「そう、学園全体で三千を超える儀界導術士の中で、武装導術士はたったの三十三人。上位十人の中にもひとりいるけど、正直勝てる気がしませんわ」

 それだけ、武装導術士という存在は特殊なのだ。

 戦闘導術士科が絶対に敵対しないのは、武装導術士科と揉めることによる不利益があまりにも大きすぎるからだ。

 何せ、彼らはひとりひとりがすでに戦闘導術士として一定程度完成している。

 武装導術士科への転科は、その大半が戦闘導術士科の最上級学年か卒業生が再入学するという形になるからだ。

 確かに彼らは学園外の戦闘導術士として見ればそれなりに優秀という程度の存在でしかないかもしれないが、一般入学の戦闘導術士科学園生ではそもそも相手にならないのである。

「それって〈妖精女王ティターノ〉?」

 メルライアは、唯一の武装導術士科所属の上位者を知っていた。

 戦闘導術士科始まって以来の天才と言われ、しかし二年次において武装導術士科に転科した人物。

 人呼んでモスクワ王国の妖精――リュドミラ・ニコラエブナ。

「現在第二位。わたくしは彼女が卒業するまで待ちますわ。リリィ以上に相性最悪ですもの」

 フェアリーユニットと呼ばれる遠隔操作武装を、同時に百機近く操るというリュドミラは、以前の練習試合でメイルフィードの武装を悉く封じた実績がある。

 ミサイルは撃ち落とされ、弾丸はフェアリーユニットの展開する防御力場で弾かれた。

 弾切れでの敗北という結末に、メイルフィードは三日ほど寝込んだ。

「そういう人たちの中に留学生とはいえあっさり飛び込むんですから、あの方が並である筈がありませんわ。――錬装甲冑はお持ちでないから、戦闘は並程度なのかもしれませんけど」

「そうね。でもフェイ、今日は随分と饒舌じゃない」

 メルライアはメイルフィードに向き直り、そう言ってからかった。

 いつものメイルフィードなら、今日の対戦相手について色々と講釈を垂れていただろう。彼女はすでにパトリックに勝利しているのだから。

 メルライアの言葉に一瞬きょとんとしたメイルフィードだが、その意味を理解すると深々と溜息を吐いた。

「今更何を言ってもあの娘には届かないでしょう? だったら適当に愚痴でも零していた方が生産的です」

 すでに戦いは始まっていると言って良い。

 試合場に立てるのはライエンティール本人で、それを助けることのできる場所にいるのはたったふたりである。その中に、彼女たちは含まれていない。

「マイト・ガルディアンか、そういえば、何か知ってるようなこと言ってなかったかしら?」

「え? ああ、そういえばどこかで聞いた名前だと思ったんですけど、部屋に戻ったらすっかり忘れてましたわ」

 そうけらけらと笑うメイルフィードに、メルライアはじとりとした視線を向けた。

 しかしその視線も、友人には通じない。

「あなたねぇ……」

 眉間を押さえたメルライアは、もう一言ぐらい注意しておくべきかと顔を上げた。

 だがそこに、ひとりの男子学園生がふっと現われる。

「やあ、後輩。隣は空いているかな」

 ジルア・リノリアンはそう言って、ひらひらと手を振って見せた。

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