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小さな小さな僕の事件簿  作者: 粒コショウ
1/1

始まりと繋がりはここから。

 〜 部屋の中での小さな小さな事件 〜


 (あー。天井だ・・・。)

目が覚めた。多分空腹のせいだと思う。お腹キューキュー鳴いてるし。

で、真っ先に目に入ってきたのは当然と言えば当然の天井。

白い天井だけれども目立った汚れは無い。我ながら綺麗に過ごしてるなぁ、と思った。どうでも良いんだけれどね。


 「今何時・・・。」問いかけても答えてくれる人は誰もいない。

寂しくなったので布団にくるまってみた。あー、でも、暑いな。


「あーーづーーいーーっ!」

そういってすぐに布団を壁に放り投げた。

しかしあっけなく布団は僕の目の前で身を翻しつつその身を重ねて行った。


 「そもそもなんで布団出してるんだよ・・・。」

真夏に冬用の布団を出している自分に腹が立つ。

そして怒りの矛先はなぜか目の前で身をぐちゃっとつぶして

いる布団にむいた。無言でドスッドスッと二三回踏みつける。

なんでこんな事しているんだろう。

きっと、暑いからイライラしているんだ、と悲しい自問自

答をつぶやいた。


 耳を澄ませば蝉の大合唱。余命の少なさを訴えているのか、

はたまたこの暑さに対するクレームか。

そう考えるとなんだか親近感が・・・湧かないな。

夏と言えば蝉、かも知れないけれど、

僕にとってはただのうるさくてうっとうしい、背景の一部でしかないのだから。


 「時計時計・・・。あった。うえっ、もうお昼・・・。」

短針、長針ともに仲良く12の数字で待機していた。

どうりでお腹も空くはずだ。


「ぶーん・・・。」興味本位で秒針を指でなぞってみる。そのまま一周させてみ

た。すると、秒針はあっけなく動く。しかし、手を離すとすぐに動き出す。

僕のこの無力な指から離れて、自らの力で何度も何度も12を目指して行く。

そう考えると、この秒針は僕より強いのかな。いや、違うか。

この秒針は一秒一秒を正確に刻んで行くという使命をまっとうするだけだ。


それこそ、この単三電池の寿命が消えるまでこの秒針は廻り続けるだけだ。

僕はもっと自由な発想をし、それを実行にうつす事だって出来る。

何事にも縛られずに生きて行ける。

ま、自分に与えられている事を最後までやり遂げる、という点では僕より優れ

ているかもしれないけれど。


「・・・さー、ごはんだ、ごはんだ。今日っのごっはんっはなっんじゃっろなー。

ぐえっ・・・。」

歌いながら部屋の中をクルクル回っていたら足の小指の先を椅子の足ではじいてしまった。

いってーなー。

ま、これも経験と思えばね、なんて前向きな考えは出来ない。痛いもんは痛いんだ。

 

「さー、さー、なーに食っべよっかなー。んー、わーお・・・。

イッツ、ア、スッカラカーン。」

なんにも無かった。あるのは牛乳と胡麻と何故かゼラチンが二袋。

あ、前プリン食べたくて買ったんだっけ。なぜ市販のプリンを買わずに

自分で作ろうとしたのだろう。うーむ、謎。


「・・・胡麻のミルクプリンでも作れってかー。

あ、砂糖がねーわ。塩でも作れるのかなー。主食にはなりそうだけど。

プリンってよりかは豆腐に近いんじゃねーのー。あー、うー。」

面倒くさいな。作るのも、外に買いに行くのも。


ましてや昼時。

いっちばん暑いんじゃないの?

小学校の理科でやった気がする。

校庭に温度計を置いて十分休みの時にわざわざ記録撮りに行ったっけ。

あー、古き良き想い出たちよ。安らかに眠っていてくれ。もう出番はないぞ。

小学校の思い出など今の僕には必要がない。

あんなの羞恥心の固まりじゃい。


「買いに行くしか無いのか?よし、行こう。行くと言ったら行くっきゃない。」

僕は決断したら割と早い方だ。

それ以外の選択肢には見向きもしなくなる。自分が決めた方へと一直線だ。

 僕は財布とエコバッグ、それに今何かと話題のりんごのマークの着いたタッ

チパネル式の携帯を持って寝床を後にした。





 〜 商店街で出会った小さな事件 〜


 さて。とりあえず食い物を探しに商店街にはやってきた。夏休みに入ったお

かげで曜日感覚がなくなっていたが、

今日はどうやら休日らしく家族連れが目立つ。そして人口密度がハンパなく高い。


それにしても僕ものすごく格好ダサくね?知り合いに会ったらどうしよう、

という思いが頭の一部をかすったけれど、

僕はここから一時間半かかる私立の中学に通っているため問題ない。

あと最低五駅先まで行かないと同級生はいない。

 

まずはなんだ?米とパン、それとー、まぁ適当に総菜でも買いますか。

総菜は坂本お惣菜っていう店が美味い、

と兄ちゃんが言っていた、気がしなくもない。


(ま、行くだけ行ってみるか。)で、坂本さーんはどーこでーすかー。

どっこに、いっるのっかなっ。

すぁぁくわぁぁむぉぉとおおぉぉおおすわぁぁああん。

どぉおおこぉぉおでぇすぅくわぁぁぁぁあああ。


(あ、あった・・・。)なんと数歩歩いたところにあった。

近ーい。楽ー。便利ー。

おー、良い感じのリズムになった。

僕音楽家にむいてるのかなー。はっはーん。


「いらっしゃいませー。」引き戸式の扉を開けると冷気とともに明るい声が

僕の中に入ってきた。

「あ、どうも・・・。」夏休みに入ってもう一週間が立つけれど、

誰とも話していないせいか、声が出にくい。

ちなみに両親は一ヶ月の海外旅行です。

僕は、その、置いて行かれました。いろいろと、手違いがありましてね。ぐすん。


 ま、それはいいとして、何を買おうかな。一番無難なのはひじきの和え物?

んー、よくわからん。いっちょ聞いてみっか。


「あ、すいません。なんか特売とか、オススメとかありますか?」一番答えて

くれそうなちょっと太めのおばさんに聞いてみた。

「そうですね、今日の特売はこの豆腐ハンバーグです。

オススメは・・・そうですね、この焼うどんなんかは人気ですかね。」

「あ、ありがとうございます。」

豆腐ハンバーグか。なんかヘルシーだな。焼うどんくらいなら僕でも作れるぞ。


あ、そうだ。焼うどんを作ろう。野菜買って。お肉買って。うどん買って。

美味しい焼うどんを作ってやろう。でも聞いといて何も買わないのもなんだから、

豆腐ハンバーグは一つだけ買って帰ろうかな。


「すいません。これ一つお願いします。」

「はいはいどうも。一点で三百五十円です。」三百五十円ね。

あー、残念。五十円玉ゼロ枚。十円玉四枚。

うー。仕方ない、四百円・・・。

「あ、袋要りません。」

「ご協力ありがとうございます。はい、では五十円のおつりです。」

協力?なんか協力したっけ?んー、あ、これかな?

レジの横に小さく文字とイラストが書いてあった。


“エコバッグを使おう!地域のみんなでエコして快適町づくり”


ふむふむ。なるほど。僕はこの快適な町づくりを協力していたのか。

素晴らしい。ファンタスティック、おーイエー。ビューチフォー。

あー、俺の脳みそはグローバル化が進んでいる。これで世間にも遅れをとらないぜ。

 

 さてと。無事に豆腐ハンバーグゲットー。今日の夕飯にでもいたしましょう。

さー、次は焼うどんの材料調達ですな。なにが必要なんだっけ。

とりあえず、野菜は絶対だな。八百屋に行こう。レッツラゴー。

確かこの道まっすぐ進んだところにあったかな。多分あってる。

あの八百屋さんとは結構仲良いんだ。


さて、ゴーストレイト。アーンド、イン・トゥ・ザ・ヤオヤ。

多分文章の構造はあってるはず。それを正解と見なしてくれる人も、

不正解と見なしてくれる人も今の僕の周りにはいないから何とも言えないけどね。


お、見えた見えた。赤色の少しくすんだのぼりが。

八百屋の入り口を飾っているその赤色ののぼりは色あせて、

“八百屋”の文字だけがしっかりと刻まれている。

八百屋の歴史をしっかりと色で表現しているな。


「あーおじさんこんにちはー。」

八百屋の中でせかせかと忙しそうにスイカを運ぶおじさんがいた。

「おう!兄ちゃん久しぶりだな。今日は一人かい!」はっはっはー、おじさん、

超良い笑顔ですごい痛いところついてきた。

ま、本人悪気が無いから何とも言えん。たっはー。


「あーまーちょっとね。ね、おじさん、焼きうどんに要る野菜って何かな?」

「焼きうどん?うん、そうだな。俺ん家はピーマンとキャベツと人参と椎茸と、

あともやしをいれるぞ!」

「へぇ、おいしそうだね。じゃあその材料全部ちょうだい。」

ま、大体そんなもんかね。


「まいどー!兄ちゃんが焼うどん作るんか!」

「そうだよ。今日は僕が作るんだ。」

「立派立派!はい、もやしはおまけしといたよ!五百六十円ね!」

「ありがとうございます!じゃあ、千円で・・・。」僕は細かい計算は苦手っす。

「はい、おつり。細かいから落とすなよ!あ、あと今日うどん買うんだったら

石山スーパーが特売やってたぞ!」


「あ、そうなんですか。ありがとうございます、行ってみますね。」

「おう!じゃああそこのとこの親父によろしくな!気をつけていけよ!

最近なにかと物騒だからな!」

そうなんすか。てぇへんだぁ、てぇへんだぁ。

「あ、はい。りょーかいです。じゃ、どうもー」なにを了解したのか自分でも

分からないけれどとりあえず素直に返事をしておく。

 

さ、次に目指すのは石山スーパーだ。

あのおじさんはうどんが特売って教えてくれた。

ああいう良い人がやってるお店は長続きすると思う。


最近はこの商店街もシャッターが目立つ。小さい頃からここで生きている者としては悲しい。

なんだかシャッターがおりていると寂しい気分になる。なんでだろう。

シャッターが華やかな色で楽しい柄が描かれていたら

そんな気持ちにはならないのかな?ま、それはそれで落ち着かないか。


「おっと」右肩に衝撃があった。おそらく誰かに肩パンされたんだと思う。

いってーなーきーつけろよごるぁーなんて言えるガラじゃないけど、

やっぱり少しは気をつけて欲しい。ちょっと痛かったわけだし。

それにあっちはパッと見女の子じゃなかった?すっげー、どんな強靭な肩だよ。


それに小女漫画によくある曲がり角でぶつかって恋仲になっていく、

という展開とは対極な位置にあるぶつかりかただよな。

ま、世の中そんなに上手くできてなんかないさ。そんな事は百も承知さ!


そういってる間に僕は石山スーパーの前まで来ていた。

「いらっしゃいませー」はいどーもー。

日本らしいマニュアルな一言を自動ドアくぐるなりちょうだいした。

「あ、涼しい・・・。」思わず感動の声が漏れていた。さすがスーパー。

設備は八百屋より最新だ。


ま、僕は石山さんより八百屋のおじさんの方がなじみやすいのだけれど。

ああいうフレンドリーな感じは大好きだ。


(さ、うどんはどこだ。うどん。)うどんを探して三千里。

なんとも涙をそそらない物語の出来上がりだな。

(おー、あったあった。うどんだうどん。おー、安いっ。一玉四十円。

え、こんな安くていいの?儲かってるの?)

と、店の経済を心配しつつ一玉をつかんでレジへと向かう。

(あ、そういえばスーパーのポイントカードをこの間母さんからもらったような。)

そう思い、財布を探す。

(ん?)

財布を探す・・・。

英語で言うとアイ ルック フォア ザ ヲレット、であってるのかな?

財布はヲレットで問題ないはず。中国語だとなんだろう。

僕は中国人の友達がいないからわからない。


そしてそんなことはどうでもいい。

ないんだよ、僕のお昼ご飯の材料を買う為の金が入った財布が。

それに結構入ってたぞ。三千円くらい入れてきたはずだ。

あ、でも野菜で結構使ったから、あんまり残りはない?


いやいや、野菜は確か六百円くらいだった気がする。

豆腐ハンバーグはいくらかわすれた。

でもお札は使っていない。ってことは?


Q,貴男の財布にはいくら残っていますか


A,二千円くらいですかね。


ああもう非常にくだらない。自分の頭の中でファイナルアンサー?

とかほざいているやつが憎たらしい。

残念ながら、そのほざいてるやつの正体は僕自身なんだけれどね!

自問自答する性格は治らんかね!こりゃ重症だぞ!

(とかいってる場合じゃなくて、どこで無くしたのかを考えないと!)

あれには定期と学生証と行きつけの本屋さんのスタンプカードが入っているんだ!

それにスタンプはあと三個ためればコンプリートなんだよ!

図書カード五百円分がもらえるんだ、返してくれ!


「お客様、どうなさいました?」うるさい黙れこのマニュアル野郎が。

そんなことロボットでも言えんだよ、日本の技術ナメんなよ。

「いや、もうなんでもないです。さようなら、うどん特売日。

また楽しみにしてます。」ああもう、うどんに話しかけてるみたいじゃないか。

ばかばかしい。

もうさっさと出てさっさと見つけてまたうどんに会いにこよう。


「ありがとうございました。またのご来店、お待ちしております。」

やっぱりマニュアル、どこでもマニュアル、なんでもマニュアル。

なんだか無性にイライラしてきた。最悪だ。なんか飲みたい。

あー、財布が無いんじゃ何も出来ないじゃないか。

結局世の中金かよ。なんだよなんだよ。

とりあえず、もう自分が頼れない事くらい分かってきたから

次に頼るべきところを探そう。


やっぱり交番?みんなのヒーロー。良いこの皆さん、

おまわりさんをヒーローと感じるためには自分の努力が必要なんですよ。

つまり、自分次第ってやつです。

 

おまわりさんをヒーローと思っていたい俺は交番へと足を早めた。

走りながら考える。

落としたことは記憶に無い。じゃあ、スリ?


(あっ・・・。)


さっきの。

通りでぶつかった女の子。

肩が強靭な。小女漫画とは対極の位置にある出会い。


(あー・・・、あーあー。そっかそっか、あの子、あんな女の子までもがスリなんだ。

ほんとだね、おじさん。世の中物騒だよ。)

走るのをやめると、エコバックに入った野菜がわさわさと揺れた。


(ふぅ。なんかもう、ばからしくなってきた。)おまわりさんもそこまで熱心に

僕の話を聞いてくれるとは思えないし。

「かーえーろ、かーえーろー。みーんなーでなっかよっく・・・。ん?


あ?」



いた。そのスリ疑惑の女の子が、そこに。

 

瞬間、

「まぁぁぁああぁぁてぇぇぇぇぇええぇこらぁぁあぁああぁぁっっ!」

叫びながら走る自分がいた。ちなみにタイムは五十メートル走だと六秒くらいで

百メートルだと十四秒くらい。

自分では早いと思うけれどどーだか。うわ、逃げやがった。

てか足遅い。それに今は緩い下り坂。あっちももちろん加速して行くけど、

あれならすぐに追いつくな。


「待てよっ!走っても無駄だって!だから・・・、え?」

なんかものすごい勢いでこっちに向かってきた。勢いもすごいけど、

なによりすごいのは、あの目つき。

こわっ。

「ちょっと、ストップ!」あぶない!ぶつかる!ぶつかっちゃうよ!

「ぐわっ!」

やばっ。なにかにつまづいた?


エコバッグが空に弧を描いて坂の下へと吸い込まれて行く。

肝心の僕は?女の子の驚愕の顔の真横を通って。野菜の後を追って行った。

本能的に手を出した。

自分の身体を、守る為に。本当にそうなのかな。自分を守るためなのかな。

(ああ、こんなときでも僕は自問自答を繰り返しているのか。)

こんなことをふと思うくらいだから、かなり冷静に転んでいるのかも。

それとも周りがスローモーションなだけなのかな。


「んがっ、なっ、ぐえっ」手首から思い切り剃っていった。めちゃくちゃ痛い。

きっと血がにじんでいるんだろうな。

「いってーなー・・・。」なんか泣けるよ。

野菜は、無事かな。無事であって欲しい。つぶれた野菜で作る焼うどんはどん

な味がするんだろう。きっと今飲んでる涙と同じ味だろうな。

切なくて、悲しい、しょっぱい味が。ていうか、あれ、知らぬ間に泣いていた。

そして何故か飲んでいた。

うぇー、本当にしょっぱいよ。まじぃ。ぺっぺっ。


「で、どこに行ったんだよ。あの子は・・・。

なんで被害者の俺はこんなに何回も被害に会うんだよぉ。ちくしょう。」

僕は悲劇のヒーローには憧れない。

女子から見ればキャーキャー言われる存在かもしれないけれど、

僕は自分が自分でかっこいいと思えるような存在に憧れる。

それは、こんなところで涙を飲んでうずくまっているようなヘタレじゃない。

もっともっと、かっこいいはずだ。


(あー、そういえば、携帯は無事かなー・・・。)

どこいれたっけ、右のポケット?おー、あったあった。

よっと、とりあえずそこのベンチにでも座るかな。

このまま寝っ転がっているのは嫌だ。ヘタレの王道を突き進むのはあまりにも酷だ。

 

 真ん中のボタンを押してロック解除のマークをスライドさせる。

何日も兄弟を使っていなかったから、なんだか初々しい。

「えっ」

何これ?不慣れな画面が出てきた。パスコードを入力?なんだっけ・・・。

ああ、思い出した。1234だ。単純きわまりない。

でも、ま、そのおかげで簡単に解除が出来たわけだけども。


「わーお。着信履歴が六件も来ちょるぞーい。僕って人気者〜って、誰だろう

これ。全部同じ番号だけど・・・。おう、留守電はいってる。聞いてみるか・・。」

ぴ、ぽ、ぱ、と口でつぶやきながら留守電の応答を待つ。すると、

『おう、兄ちゃん。財布忘れてるぞ!

まだ店の中にあるから電話に気付いたら取りにきな!じゃあな!』


「・・・・・。」電話でもその威勢の良さが伺えますね。おじさん。

「・・・・・あーあ。」それにしても、僕は・・・。間抜け中の、間抜けだなぁ。


そういえばあの時、

おつりが細かいから気をつけろよと言われて。

財布をだして。

そこで石山スーパーの話を聞いたから。

そのまま置いてきちゃったんだ。


ああ、女の子には悪い事したな。足遅いとか。超失礼じゃないか。

もうヘタレの王道を一直線な気がしてきた。


「ま、こんな日もあっていいのかもね・・・。」

そう思うとなんだか一気に力が抜けた。

ついでにいろんな小さな意地っ張りな考え方も。


まだまだ夏休みは始まったばかり。

それだってありふれた言葉かもしれないけれど。

今の僕にはそれくらいがちょうどいいんじゃないのかな。


例えどんなヘタレでも。坂を転がって行っても。

野菜がつぶれていない、という小さな幸福を積み上げて行けばきっと、

きっときっと考え方が変化して、ものすごくプラスになるようなことが訪れる。

感謝するっていう事は、そういうことなのかも。


僕は坂の下で野菜と一緒にそんな事を考えていた。


そして、八百屋に行こう、と坂の上を見据えた。





初めて投稿してみました。

粒コショウです。


短編のような連載小説を書いてみました。

このあと、強靭の肩の女の子目線でまたなにか短編を書いていきたいと思いますので、よかったらご覧下さい。


読んで下さり、本当にありがとうございます。





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