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魔法少女と灰の杖  作者: みっくちゅ・じゅーちゅ
第1章『prologue』
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第3話『魔法少女とunknown』 後編



 俺を抜きにしていきなり始まった悪夢獣と呼ばれる異形の蟲と厨二病くさい……もとい魔法少女の様なファンシーな服装を纏った二人の見知った少女の戦いは激化の一途を辿った。


 「ピュアサンダーっ!!!」


 「ピュアランダムアローっ!!!」


 かたや二人の少女達が力を合わせて戦っているのに対して彼女達の数倍の巨体を誇る異形の蟲は所構わずヒルの口から溶解液を吐き出し二人を攻撃していく。


 (……まるで泥試合だな……)


 そんな光景を俺は内心、溜息を交えつつ静かに見つめていた。


 今の状況は良く言えば双方の実力は拮抗していると言えるだろう。


 だが悪く言えば“あの程度の相手に苦戦している”とも言えるのだ。


 (……まぁ、お陰で二人の実力はおおよそ把握出来た訳だが……)


 しかし、そろそろこの座興もお開きにしなくてはならない。





      (そろそろ夕飯の支度をしないとな……)




 そう。俺は夕食の買い物の帰りだったのだ。


 スーパーの袋の中には牛乳や野菜が入っている。


 早めに冷蔵庫の中に入れなければ悪くなってしまうのだ。


 (それに玲奈や立花には今回の一件について色々と聞きたい事もあるしな……)


 これからの方針をある程度まとめた俺は泥試合を続ける二人に近づく。


 「お、お兄ちゃん……何してるの!!!」


 「何してんのよアンタ、早く逃げなさいよっ!!!」


 戦いの場に突然、俺が近づいてきたのが判ったのか二人は喚きながら俺を追い返そうとしている。


 「二人とも下がれ……邪魔だ」


 俺は二人にそう言い放つと自身に内包している魔力を用いる。


 対して玲奈と立花は俺の言葉に気圧され数歩ほど後ろへと下がる。


 『“魔陣チャクラム”……展開』


 自身の魔力を用いながらその言葉を呟いた瞬間、俺の周囲に8つの魔方陣が展開される。  


 “魔陣チャクラム”……それは俺が新たに編み出した術式による攻撃形態の一つで魔方陣を敵に向けて戦輪の様に自在に飛ばす事が出来る術式。


 その最大の特長は魔力を用いた魔力刃を形成し戦輪としての斬撃能力と魔方陣そのものたるチャクラムを介して魔術を兼ね備えている点だ。


 おまけに魔陣チャクラムは俺のイメージによって自在に動かせる為、柔軟な運用が可能としている。


 ……早い話を言えばオールレンジ攻撃が可能な魔術式という訳だ。


 これは俺が前世の知識と魔力をベースに現実世界に形骸化していた多種多様な魔術関連の技術を組み合わせて産み出した“現代魔術理論”と言う成果の一つだ。


 そもそもが魔術とは……………………いかん、悪い癖が発病しかけた。


 (どうも前世からの学者肌が抜け切らんな……)


 心の中でそう反省しながら俺は目の前に居る異形の蟲に視線を向ける。


 『待たせたな……さぁ、首を差し出せ』


 処刑執行人の様なセリフを言いながら俺はニヤリと笑みを浮かべる。


 「ギシャアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!」


 その光景を見た異形の蟲は俺の危険性を本能で感じ取ったのか怒気にも似た咆哮を挙げながら俺のみを狙って溶解液を吐き出した。 


 「盾となれ」


 対して溶解液が吐き出されるのを目の前で確認した俺は静かに魔陣チャクラムの一つを盾として用いる。


 当然の事ながら俺の魔陣チャクラムは異形の蟲が放った溶解液を難なく防ぐ。


 「お兄ちゃんが魔法を使った……」


 「冗談でしょ……」


 俺が魔術を用いた事が信じられないのか二人は驚愕の表情をしたまま、その場で固まっている。


 「次は俺の番だ……刃となれ」


 異形の蟲が放った溶解液を難なく防いだ俺は次いで展開していた全ての魔陣チャクラムを魔力刃を取り付けた斬撃モードへと移行させる。


 そして、ダラリとしていた左腕を異形の蟲へ向け左手をピンと突き立てる。


 すると全ての魔陣チャクラムがまるで意思を持ったかの様に異形の蟲へと向かって飛び出していく。


 その姿は猛禽の群れの如く。


 「ピギェェェッェェェェェェェェェェェェェッ!!!」


 縦横無尽に飛び回る魔力刃を取り付けた魔陣チャクラムは次々に異形の蟲の肉体を傷付けていく。


 腕や足を切り落としながら羽を毟り、体全体を血に染めていく。


 『罪人には罰を、咎人には罪を……愚者は断罪の丘で笑みを浮かべて頭を垂れる』


     『You are Guilty』


 そう言うと俺はチャクラムを使って体全体を血に染めた異形の蟲の頭部を顔色一つ変えずに切り落とした。


 そうして首をはねられた異形の蟲は力尽きた。


 すると異形の蟲の死滅と同時にその肉体と異形の蟲が展開していた結界の消失が始まる。


 「終わったか……」


 異形の蟲の死滅によって消え行く結界を見つめながら俺は静かにそう呟く。


 「「………………」」

 

 対して先程まで茫然自失気味だった二人も静かに俺を見つめていた。


 「……さて、お互いに話をしようか?」


 やがて居心地の悪い気まずい空気と二人の視線に耐え切れず、俺は事態の打開する為に止む無く二人にそう呟くのだった……。



 大体5話くらいでプロローグを終了したいと考えています。

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