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魔法少女と灰の杖  作者: みっくちゅ・じゅーちゅ
第1章『prologue』
2/5

第1話『月城家の朝』

 小説の更新は不定期です。



 ~???~



 外の方からチュンチュンと雀の鳴き声が聞こえてくる。


 「……んあぁ?」


 俺の自室のカーテンの隙間から照らされた太陽の光が運悪く俺の瞼を直撃し、強制的に覚醒を促す。


 「……随分とまぁ、懐かしい夢だったな……」


 予めセットしておいた目覚まし時計よりも早く目を覚まし、だらしなく白と青の縞々のパジャマを着た俺はベッドからむくりと起き上がると軽く欠伸をしながら自室から出る。


 閑静な住宅街の一軒家に家族と共に住む俺に用意された部屋は二階の右端にある為、寝ぼけ眼のまま覚束無い足取りで階段を下りると迷わず洗面所へと向かう。


 洗面所で行う事と言えば言うに及ばずの行動な為に(トイレも含む)割愛するが簡単な身嗜みを整えた俺は再び自室に戻ると衣装棚からいつもの様に学校の制服に裾を通す。


 「……良し」


 その際に衣装棚に取り付けられていた鏡を見ながら改めて自身の顔を見つめながら小さく呟いた。


 「もう14年も経つか……」 


 そう呟いた俺の前にある鏡には黒い髪に紅い瞳を持つ中肉中背の中学生の姿があった。


 俺こと月城彼方つきしろ かなたがこの世界に生を受けて14年という月日が経った……。


 (“ソウル・リベレイション”によってこの世界に“転生”してから14年か……長い様で短い年月だな……)


 皮肉を込めて笑う鏡越しの自分自身を見つめながら俺は左手に僅かだが力を込めて握り拳を作った後、手の甲を下に向けて左手を開く。


 すると左手から禍々しい赤黒い俺の魔力が炎の様にグオゥゥゥと左手を中心に燃え上がる。


 その光景を静かに見つめていた俺は再び左手で握り拳を作るとその赤黒い炎はあっさりと消失した。


 「……フッ」


 この世界において存在しない筈の異能とされる力を使える俺は静かに鼻で笑うと何事も無かったかの様に鏡から背を向ける。


 その後、俺は自室から退室すろと階段を下りる。


 大事な事なのでもう一度言おう。


 俺の名は月城彼方……普通とは程遠い能力と魂を持つ禊島みそぎじま学園付属中学に通う中学2年生だ。










 ~月城家・リビング~



 「おはよう、お兄ちゃん♪」


 階段を下り、リビングへ行くとそこには学生服に身を包みながら台所で包丁を振るう“同い年”の義妹、月城玲奈あまみや れなの姿があった。


 「おはよう、玲奈」


 玲奈は俺と同じクラスで赤い髪のツインテールにパッチリとした黒い瞳をした美少女だが、身長と胸の発育がやや慎ましい感じだ。


 性格は基本的に天真爛漫と言った感じではあるがブラコン気味で中学に入っても俺の事を「お兄ちゃん」と呼んで懐いてくれている。


 そんな容姿と性格のせいかクラスではマスコットキャラの様に扱われており男女問わず人気がある。


 「私、今日は日直の日だから朝ごはんを作ってお昼のお弁当を用意したら直に学校に行くから」


 申し訳なさそうに玲奈はそう言うと慌しく朝食の用意を始める。


 「そういう事なら朝から無理しないでいいぞ……1食ぐらい抜いたって人間は死にはしない」


 対して俺はテーブルの上に置かれていた今朝の新聞に目を移しながら玲奈にそう言い放つ。


 「駄目だよ!朝ごはんは1日の中で最も栄養を摂らなくちゃいけないんだからっ!!」


 すると、玲奈はお玉を振るいながら俺に反論し始め、これが小さな論争となった……。






 「「いただきます」」


 数分後、小さな論争は朝ごはんの完成と共に終局を向かえ、俺達はテーブルに座って玲奈の作った朝食に手を付ける。 


 献立は白米に味噌汁、焼き魚と漬物と如何にもな日本の朝ごはんだった。


 朝ごはんを食べながら俺は何の気なしにリビングに置かれたテレビのリモコンで電源を入れる。


 テレビに映し出されたのは朝のニュース番組だった。


 内容は政治家の不正に遠い街で起こった殺人事件、芸能人の結婚に海外の話題と特に目新しいものは一つとしてなく、いそいそと朝ごはんを頬張る玲奈を他所に俺はマイペースに朝食を摂る。


 「ごちそうさま……それじゃあ、私はもう出掛けるけどお兄ちゃんは戸締りとガスの確認をお願いね」


 「分かってる……お前こそ車には気を付けるんだぞ?」


 バタバタと玄関で如何にも家族といった様な会話を交わしながら玲奈は「もう子供じゃないもん!!」……と文句を言いながら家を出た。


 そんな玲奈の言葉を聴き終えた俺はテレビに視線を移すと白米を頬張り、味噌汁を啜り、焼き魚を加え、漬物に舌鼓をうつのだった……。




 ~通学路~



 「いってきます」


 俺が朝食を摂ってから約20分後、いい感じに学校へ行く時間になった俺は鞄を持って誰も居ない家のドアに鍵を掛けて外に出た。


 無論、玲奈に言われた通り戸締りとガスの確認は済ませた。


 しばらく急ぎ足で閑静な住宅地のエリアを抜け、学校の通学路に差し掛かると見慣れた顔が俺の前に現れた。


 「よっ、か~なた♪」


 それはクラスメイトであり親友とも言える“ウルムナフ・ライテウス”の姿があった。


 ウルはドイツ人とアメリカ人のハーフだが日本生まれの日本育ち。


 コイツとは小学校の低学年からの付き合いで何だかんだで付き合いは長い。


 外見は青い髪に黒い瞳をしたイケメン系の外国人といったところだが性格は軽いノリが好きな変り種だ。


 「おはようウル」


 かくて俺達は朝の挨拶もそこそこに学校へと向かう。


 「そういや彼方よ、玲奈ちゃんと二人っきりの生活はどうだ?」


 通学の途中、不意にウルは俺にそんな事を聞いてきた。


 「別に、いつもどおりだ」


 淡々とそう答えた俺の様子を察したのかウルは小さく溜息を吐いた。


 「血の繋がらない義理の妹に慕われ、あまつさえ両親は海外旅行で家では二人っきりというシチュエーション……これ何てエロゲー?」


 アホなウルはそんな事を言いながら俺と共に通学路を歩く。


 ……今からおよそ4年前、俺の母親と玲奈の父親が再婚した。


 いきなり新しい家族が出来た当初は俺と玲奈の仲は当然ながら今よりギクシャクしていた。


 しかし長い時間と紆余曲折の末、俺達は現在の様な兄妹となったのだ。

 

 そんな折に地球一周という途方も無い新婚旅行を計画していたバカップル(両親)は俺達に有無すら言わさずに旅行へと出掛けていった。


 幸か不幸か金に関しては定期的に銀行へ送るとの事だったのが唯一の救いだった。


 ……という訳で現在、月城家には俺と玲奈の二人っきりという訳だ……。


 

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