親友は護衛師
俺に……遂に念願の友人ができた。友人ならたくさんいるだろう?女の子はな……。この学園に異例の二人目が来たのだ! 年齢もクラスも同じで……目的? 知らん! まずはこの数日間の死にそうなほどの浮いたような立ち位置を変えられる。何故かって? まぁ、アイツは少し不思議なやつではあるが俺は嫌いな奴ではない。むしろ、偏屈なやつなら大歓迎だ。俺は別に好きで女の子に優しくしたい訳ではない。敵を造りたくなかっただけだ。どっちかと言えば俺も偏屈な部類に入る……。もとの地はな。
「巫 楼義という。この学園に来た理由は刀剣精錬師の警護とその男の手伝いだ。ちなみに、職業は刀剣精錬師『武鋼』……以上」
挨拶をそれだけに留めてさっさと席についてしまった。身長は恐らく165センチほど、声も割高な俗に言われるショタと言われるのりだろう。ただ、小柄な男だがその身に纏う闘志というかなんというか……これぞ武士という感じの気配がする男だ。幼い顔つきでどちらかと言えば女の子のような顔立ちに見えるし体つきは華奢である。ただ、顔に大きな傷があり片目はおそらくつぶれているのだろう、眼帯を付けている。ま、教室での表情や仕草からアイツも俺のことに好感を抱いたようなことを聞いた。それに知り合いから聞けばそんな口ぶりだったらしい。最初の印象は無口だし、少し……そっけない。そんな男でも俺の仲間だ。
「確かに、お前はなかなかな刀剣精錬師だな。俺も見習うところがおおいようだ」
「楼義は剣を打たないのか?」
「聞いていなかったのか? 俺は『武鋼』だ。武具を滅することと手入れすることしかできない。いや、しない。お前が武具を生み出す刀剣精錬師であるなら俺はその終わりを告げる者だ。討伐し、生き返る余韻のある者は連れ帰ろう」
こういう男だ。滅私が得意で人間味に欠ける無感情な男。コイツはすぐに俺と共に行動してくれた。学内では俺に質問を投げかけてくる。身の上話もさらっと話したが……やはり、この人も特殊な身の上の男だ。彼には妹がこの学園にいた。巫 風音の年子の兄らしい。戦闘の技術に関しては俺を飛び越して世界の実力者として名高い彼。彼の出身は寺で……彼の官名を聞いて驚いた。世界にはこれまた高名な武闘家や名高い刀剣精錬師が複数いる。人数は定かではないが……日本人は彼、楼義こと『スサノオ』が名前としてはトップだという。彼は日本最強の刀剣精錬師なのだ! って、胸を張って言ってみて自分が言えないのが悲しい。とりあえず俺の友人は世界最強の武道家なのだ。
「は? 世界最強? そんな物に興味はない。俺はお前らが守れれば問題はないからな」
どこまで偏った主義なんだ……。唯我独尊? よし、コイツの武器を拝見させてもらおう。彼の武器は鋼爪だ。殺傷性に富んだ武器で逃げようにも彼からは逃げられない。それから、一口に刀剣精錬師といってもだ。何種類もの種類に分かれる。俺は全ての工程や秘技をこなせるために『天鋼』と呼ばれる一番ランクの高い刀剣精錬師であった。ここからのランクは曖昧だが種類は彼の含まれる戦闘が専門の『武鋼』、その対になる立場の『製鋼』、製鋼は基本的に武具の作成しかしない。他にも、『見鋼』、『索鋼』、『供鋼』などいろいろな種類がある。天鋼には普通は助手として製鋼が一人、武鋼が一人必要なのだが俺にはまだいない。
「ん……これがそうだ」
「『八岐大蛇』……最強の鋼爪か。にしても、凄い武器をもってるんだな。これ、楼義が手入れしてるんだろ?」
「まぁな、だが、俺は手入れ程度しかできない。そういえば製鋼はいないのか?」
「俺はまだ独り立ちして一年も経過しないからな」
「ほう、面白いな。それが世界最高の天鋼だと? お前……」
「俺もそれは初めて聞いたぞ。誰だよ、適当なこと言ったバカは……」
「な……知らないのか?」
「知らないよ。つーか何なんだそれ」
この学園の中で今の最高戦力は彼だ。俺は戦力としては数えられない。なら、俺は皆に力添えできうる程度の物だろな。そして、俺と楼義が初めて組む事件がすぐに来ることになる。俺も同じ刀剣精錬師が相棒ならば、天鋼の秘儀を思う存分使えるのだ。今回は……、実力者総出動のゴ〇ラ討伐事件に発展している。今回面倒なところはペットとして飼育されていた全長一メートル程のトカゲが急に巨大化し街中で暴れまわっているというところだ。デカいならデカいでいいがそんなにデカいのか? それなら俺も今回は天鋼の正装で戦いにでる。俺の力はこれまで見せていただけの物ではない。それに、楼義の力も相当なはずだ。楽ではないだろうが行けると思う。
「まさか、初出動がこんな感じになろうとはな……。剣一。お前は二刀流胡蝶なんだろう? 何故力を使わないんだ?」
「俺は戦えないんだよ。それだけの力が無いと言うべきか」
「なら、俺が呼ばれたのもうなづける。よし、俺が前線にでる。補助を頼む」
絆か……。師匠も言ってたな。とりあえず……バカでかいんだよ! ゴ○ラがでかすぎるがそれ以上に楼義の力はすさまじい。全長およそ200メートルの巨怪を殴り倒したのだ。結構規格外な人種だなおい! 体に纏うのは真っ赤なオーラに焔のエレメント。武鋼に必要な資質、それは極度の忍耐力と心の強さ。そして、エレメントの流動に特別強い体など。それのせいで彼には感情回路がちゃんとしてないらしい。それでも、強い……。意思をはっきりと持って彼はその鋼爪で敵の急所をねらうために幾度となく飛び上がる。
「俺の力を見ても驚かないのはお前だけだ……流石は最高の刀剣精錬師」
「そうなのか? 俺の力も使えば凄いぞ?」
「そうか、見てみたいが無理はするな。護衛対象が負傷してしまうようでは困る」
それから俺達は戦線を維持し続けている。主に味方は巫妹と紫神、ヴィヴィ、クレンシー姉妹、レヴィ、ファン、シルヴィアなど。先回からの戦線メンバーが仲間についた。というよりは味方の中でも高位の実力者でなければおそらく奴にやられてしまうし倒せない。攻撃すればするだけ堅くなる皮膚、それに強力なブレスは焔の属性のエレメントを高圧噴射ときた……。要塞化してあるとはいえ耐久力の問題でこの街の民間人は全員避難させている。俺の力もここでは使わなくてはならないだろう。目標の『瞬殺』……。それしかない。
「六焔武……。鋼爪焔斬章!」
手に纏った焔のエレメントを立て続けにぶつける拳の武闘。彼の戦い型は本当にスマートだ。武器の扱いの上では最高質の無駄のない動きに加えて素早い機動力と展開の機敏さ。巨大なトカゲの背中を駆け上がり的確に喉の下という急所を突きに向かっている。俺も……力を見せなければ。
「ほう、守るだけのことがあるな。常闇と焔皇の組み合わせか。さすがは『六皇の刀剣精錬師』だ。俺も、しっかりしないとな!」
さらに彼の機動力が上がる。味方の補助も多い。紫神の機動と破壊は絶対に俺達を助けている。それに、レヴィとシルヴィア、ファンの三人の猛襲撃で脚を落としにかかっているからこちらも時間の問題だ。ちなみに、囮は生徒会長のヴィヴィ。彼女の武器、聖剣ロンバルディは形態変異武器である。彼女の背中に生えているように見える翼こそロンバルディだ。全方全域位射撃のできる剣と名の付くチート武器は空を飛ぶことまでできる。最初に俺が提案すると皆が合わせてくれていた。ヴィヴィがわざと顔に当てれば彼女に注意をひきつけることができる。その間に……紫神は弱点を探し、首の下を楼義が付く。その補助にビルの上を飛び跳ねる楼義の妹の風音が弓での遠距離攻撃を続ける。別働隊にクレンシー姉妹も走り続けていた。
「俺の速度を超える……だと?」
刹那の剣技には……数種類の活用法がある。黒刀常闇は攻撃をつかさどるエレメントの闇を強く吸着しあらゆる物を一定の意思で反射や拒絶する。その意味では風属性よりも強いだろう。空気を円錐のエレメントの防御装で遮断し極端に速度wお上げるのだ。0,0000001秒の推進時間に目的の場所に飛ぶことができる。ただし、何かにぶつかると……俺の体へもろにダメージが多くなってしまう。その代りに……。
「焔皇!」
『解ってるよ!』
「弐式! 攻撃特化型!」
楼義の真横に付けて彼を助けながら、俺は空中で体を回して敵の頭を叩き斬る。焔皇の推進力に合わせて常闇の攻撃を一気に集約するのだ。敵の堅い皮膚も……復活しよった! 頭が二つになりやがった! スライムじゃねぇんだぞ! 楼義がかばってくれたから何とかなったような物で……。
「作戦をたてなおそう」
「……これまでの作戦では圧しきれないんですか?」
「無理だよ。アイツの生命力の根源は……おそらく血液循環からの肉体活性だ。だったら、一瞬で機能を奪いつつ……アイツを止める。要は……楼義と俺のコンビネーションだ。俺は……少し無理をすることになるが心臓を突き破る。大動脈じゃなんともならない。しかも、アイツは巨大化しつづけてるしな」
よし、作戦の趣旨も伝わったし……。俺も行動に出る。足止めには紫神とクレンシー姉妹が付く。クレンシー姉妹の力で片足を止めながら紫神に豪雪と雪守のコンビネーションを見せてもらっている。豪雪にエレメントを集約させる前に雪守に集約させそれを豪雪で放つ。雪守の力は緻密で繊細なエレメントの操作ができる。豪雪にそのシステムのように緻密な物をドッキングしたことで……。
「大氷塊!」
と、こういう強い力を発揮できる。彼女らの足止めと遠距離射撃と中距離攻撃ができる二人がビルの上で飛び跳ねて動かさないように調整していたため、動きはほぼ完全に止まっていた。かなり大きな作戦になってしまっている。だが、それくらいがでかくなってるんだ……。それに、味方のスタミナと街の被害も結構ギリギリだ。特に、チートではあるがスタミナの消費が激しいフェザーグロリアは彼女のような華奢な女の子には厳しいだろう。
「そろそろだ……。行くぞ! 楼義!」
「おう!」
楼義と俺がほぼ同スピードで敵の真下で俺が飛び上がる。その後ろから楼義が俺の脚の裏に彼の脚の裏を合わせ……クローに焔のエレメントを集中させた。楼義の力は相当強い。クロー、八岐大蛇の五本の指を開き、焔のエレメントのエネルギーを最高に集約しさながらロケットのようにエネルギーを溜めると……。
「剣一さん! もう、もちません!」
「こちらも限界です!」
「解った! 離れるんだ! 刹那……破錬章!」
極限まで光と闇のエレメントを集約してエネルギーを……ぶつける。この力は俺の体にも大きなダメージを与えてしまう。だが、無装甲の俺だからできることだ……。集約しきれないエレメントは集まる場所を求めて俺のところに集まり始める。右目が見えなくなった。奴の心臓を突き破り俺も意識を失った。えてしてそんなもんだ。馬鹿げてると思うが強い力を制御するために使うが……俺ではこの力に耐えられない。
「起きたか」
「ここは? うっ……」
「バカめ。天鋼はエレメントの耐性が俺達武鋼に劣る。あんな無理をするからだ」
「はは、だが、あれがなくては勝てなかったぞ?」
「あの後も俺達は戦った。お前を救出するといういみでな。確かにエレメントの力で奴の回復と成長を抑制する考えは良かったが……」
「兄上、愚痴はそこまでに……」
「風音……しかしな? 護衛する身にもなれ……一撃の必殺とか言いつつ自分の放つエレメントで満身創痍なんてありえないぞ」
「私が看病をします。兄上は少し落ち着いてください。心配なのは解ります。この方のことは私に任せて休んでください。私は兄上のことも案じねばならぬのですか?」
「それは迷惑な」
「滅しますよ?」
楼義はそこからいなくなる。……とは言うが彼のエレメントの気配はする。護衛師としての任務から離れる気はないらしい。俺の世話をしてくれるのは風音……巫女服姿の風音が俺に世話をしている。気建てがよく綺麗な顔立ちで料理もできるらしい。俺がうごこうとすると……。
「動いてはなりません」
「おい、その行動には疑問符をうつぞ」
「何故ですか?」
「おい、風音。お前は何をしている?」
「あ、兄上…………てへっ☆」
ため息をつくと扉を開いて出ていく。楼義は別に妹が何をしようと気にしないらしい。身長は……風音のほうが大きい。楼義は気にしているらしいが……。
「お慕いしております」
「……」
「お慕いしております」
「……」
「お慕い……何度言わせるんですか!」
「すぅ……すぅ……」
唖然とする風音を見ているのは楼義。
「この人はハチャメチャなんだよ。諦めろ。六皇の刀剣精錬師は特別なんだよ。その腕……お前は目を離すな。彼にも既に出始めている」
「は……」