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婚約者の姉の婚約者がわたくしの婚約者になりました  作者: 満原こもじ


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第9話:再婚約話襲来

「婚約を結び直してくれ」

「はあ」


 私の元婚約者エドガー・スタンホープ様が、王立スクールの図書室にまでやって来ました。

 特に許可もなく押しかけたようです。

 新学年が始まる前とはいえ、スクールの警備はどうなっているのでしょうか?

 エドガー様も校内を堂々と歩いておりますと、留年生と勘違いされてしまってよろしくないですよ?


「まことに失礼ながら、理由をお伺いしてもよろしいでしょうか?」

「既に婚約解消届けが受理されてしまっていてな。婚約破棄を無効にはできなかったからだ。役所はこんな時ばかり仕事が早い」


 そういうことを聞きたかったのではないのですが。

 役所の仕事が早いことに文句を言うのは新しいと、少し感心してしまいました。

 でもジョークのつもりはないのですよね?


「エドガー様には真実の愛のお相手がいらっしゃったのではないのですか?」


 お名前を失念してしまいましたが、ピンクブロンドの男爵令嬢が。

 エドガー様が無念そうに言います。


「父上に反対されてしまったのだ。家格の問題だろう。ベッキーは男爵家の娘だから」

「さようでしたか」


 問題は家格だけでしたか。

 婚約者のいる殿方に近付いて腕を組んだり、ウソを吐いて私を悪者にしたりするのは問題にならないのですか。

 密かにため息を吐きます。


「まあベッキーも遠慮したのか、俺に近寄らなくなったがな」

「はあ」


 何故でしょう?

 邪魔な婚約者の私がいなくなればやりたい放題だと思うのですが。

 侯爵様が手を引かせたのでしょうか?


「お前も婚約破棄された傷物だ。もう一度侯爵令息たる俺と婚約できるのは嬉しいだろう。光栄に思え」

「ええと、エドガー様は私でよろしいのでしょうか?」


 お断りすべきなのですが、ちょっとうまい言葉が見当たらず、会話を引き延ばしてしまいました。

 いえ、そもそも私が気に入らないから、ピンクブロンド様に乗り換えたということでしたよね?

 エドガー様は見た目貴公子ですし侯爵家の御曹司ですし、縁談なんていくらでもあると思うのです。

 どうして私ともう一度婚約をし直すなどということになるのでしょう?


「俺もお前なんか真っ平ごめんなのだが」

「はあ」


 エドガー様はとても物事を率直に仰います。

 バ……貴族としてそれでいいのかと思うこともしばしばです。

 でも見方を変えれば一つの美点かもしれませんね。


「父上がお前を妙に買っていてな」

「ありがたいことです」


 宰相閣下として辣腕を振るっていらっしゃる侯爵様に評価されていたとは。

 嬉しいことですね。


「で、再婚約の話だ」


 再婚約というのも聞き慣れない言葉です。


「書類を持ってきた。サインしろ」

「そのことなのですがエドガー様」

「何だ?」

「実は私のほうでも内々に縁談が進行しておりまして……」


 あっ、エドガー様珍妙な表情になっていますよ?

 お顔だけはよろしいのですから、お気をつけなさらないと。

 いいところがなくなってしまいます。


「おかしいではないか。まだ婚約破棄してから半月と経っていないだろう?」

「はい、確かに」


 色々なことがあったのでもっと時間が経過した気でいましたが。


「デービス伯爵家でお前の婚約がなくなったことを吹聴したわけではないのだろう?」

「しておりません」


 デービス家や私にとっては不名誉なことですから。

 どうせ噂は伝わっていくと考えていましたし。


「何故縁談が持ち込まれるのだ?」

「……考えてみるとおかしいですね」


 エドガー様にしては鋭いではないですか。

 理不尽な婚約破棄とか、魔法神様が夢に出てくるとか、ランドルフ殿下から求婚されるとか。

 おかしいことがぎゅうぎゅう詰めになっていたので、全然気付きませんでした。

 おそらくは馬車事故を機に、ランドルフ殿下がわたくしを調査させたからだと推測はできますけれども。


「まさかデービス家から売り込んだわけではあるまい?」

「滅相もありません。先方からお話をいただいたのです」

「さては婚約破棄前からいい仲だったのだろう!」

「そ、そんな!」


 浮気者のエドガー様にそういった疑いを持たれるのは実に心外です。

 訂正してください。

 なんて、身分の上下があるのでとても言えませんが。


「ふん、まあいい。ただちにその進行中の縁談を取りやめろ」

「えっ?」


 王家からの話ですよ?

 取りやめなんてことができるわけないではありませんか。

 エドガー様は何を仰っているのでしょう?


「スタンホープ侯爵家の嫡男たる俺が頭を下げて頼んでいるのだ。縁談の相手が誰かは知らないが、俺に敬意を表すべきではないか」


 エドガー様に下げる頭ってありましたっけ?


「いえ、あのお相手が高位の方ですので、デービス伯爵家からお断りすることができないのです」

「ほう、伯爵家より高位の相手?」

「はい、ですから何とぞエドガー様と再婚約の件はなかったことに……」

「うむ、了解した」


 あら、随分とアッサリしていますね?

 もっと粘着されることを覚悟していたのですけれども。

 相手が誰とも聞かないんですのね?


「お前は傷物令嬢だからな。その高位のお相手が内々に話を進めたがるのもわかる」

「はあ」

「かなり年上の方なのだろう? ああ、いや。詮索するのも失礼なことだな。貴族らしくない振舞いだった」


 どうやらエドガー様は、奥様を亡くされた高位貴族の後添えに私がもらわれると考えたようです。

 確かに婚約破棄された娘によくあるケースですね。

 自分と同格以上の者には敬意を払うというのもエドガー様らしいです。


「まあ私もお前のような地味女に拘ること自体が変だと思っていたのだ」

「さようですね。エドガー様なら引く手数多だと思います」


 これは本心です。

 エドガー様イケメンで、スタンホープ侯爵家の嫡男ですから。


「父上にはお前と身分の高い方との縁談が進んでいて、再婚約がムリだったという事情を話し、翻意していただこう。お前もそれでいいな?」

「はい、異存はございません」

「俺は公平だからもう一度だけ問おう。俺との再婚約に応じる気はないんだな?」


 何と、エドガー様は公平などという言葉を御存じでしたのね。


「私の一存ではいかようにもできないことなので……」

「そうだった。埒もないことを言ったな。さらばだ」

「侯爵様によろしくお伝えください」


 颯爽と去っていくエドガー様。

 どこぞの御令嬢方が目をハートにして見ていますよ。

 はあ、すっかり時間が押してしまいましたね。

 ナナが持たせてくれたお弁当を、裏庭の陽だまりでいただくことにいたしましょうか。

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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!
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