第4話:もう一つの戦場
「リラちゃん、今日も素敵な歌をありがとう!」
リラの歌声が響くたびに、ぴょんぴょんうさぎメイドカフェにはお客さんが押し寄せた。リラは歌の力でみんなを笑顔にできることが嬉しかったが、もう一つ、別の戦場に直面していた。
それは、メイドカフェ特有の人間関係だった。
ミク以外のメイドたち、特にベテランのユウとアオイは、リラの突然の人気に戸惑っていた。
「ねぇ、あの子、歌しかできないんでしょ?」
「なんか、ミクだけ特別扱いされてない?」
そんなヒソヒソ話が耳に入るたび、リラは胸がチクンと痛んだ。故郷で孤立した経験が蘇り、リラはまた一人になってしまうのではないかと不安になった。
そんなある日、ミクがリラに耳打ちした。
「あのね、今日、ユウさんとアオイさんのメイド服を、お洗濯したんだって!」
「へぇ…」
リラは興味なさそうに返事をした。
「それでね、ユウさんがすごく喜んでたんだよ! リラさんにも、お洗濯のやり方教えてあげるって!」
その日の仕事終わり、ユウがリラに声をかけた。
「リラ、私のメイド服、洗ってくれたらしいじゃないか。ありがとうな」
「い、いえ…」
リラは戸惑いながらも頷いた。
ユウはリラの手に、新しい洗剤と柔軟剤を渡した。
「これ、めっちゃいい匂いするんだ。お風呂で使ってみなよ」
リラはユウの優しさに触れ、心が温かくなるのを感じた。
次の日、リラはユウとアオイと一緒に休憩室でおしゃべりをしていた。
「そういえば、リラって、どうしてそんなに肌が白いの?」
アオイがリラの腕をツンツンとつついて言った。
「…故郷で、あまり太陽を浴びる機会がなかったから…」
「へぇ、まるで雪みたいだね!」
アオイの言葉に、リラは少し照れたように微笑んだ。
その時、アオイの目がリラの胸元に止まった。
「ちょっと、リラ! そのメイド服、なんかキツくない!?」
アオイがリラのメイド服をクイッと引っ張り、胸の谷間が少しだけ見えてしまう。
「ひゃあ!」
リラは慌てて胸元を隠したが、ユウもアオイも興味津々だった。
「リラって、意外とムネ、あるんだね!」
「わ、わたし…そんなに…」
リラは顔を真っ赤にして俯いた。
その様子に、ユウとアオイは楽しそうに笑い合った。
「もう! いじめないでくださいよ、二人とも!」
ミクが助け舟を出してくれた。
それからというもの、ユウとアオイはリラのことをいじるのが楽しくなってしまった。
リラの耳をくすぐったり、突然抱きついたり。
リラは戸惑いながらも、そのスキンシップを嫌がることはなかった。
ある日の閉店後。
リラはユウとアオイと一緒に、店の裏路地で一休みしていた。
「リラって、歌ってる時以外はあんまり喋らないよね」
ユウがリラに話しかける。
「…みんなが、私のことを怖がってると思っていたから…」
リラはポツリと呟いた。
ユウとアオイは顔を見合わせ、苦笑した。
「そんなことないって! 最初はびっくりしたけど、今はもう、リラはわたしたちの大事な仲間だよ」
「そうだよ! みんな、リラの歌声に元気をもらってるんだから!」
リラはユウとアオイの言葉に、胸が熱くなった。
故郷を追放されてから、ずっと一人だった。
でも、ここには、自分を仲間として受け入れてくれる人たちがいた。
「…ありがとう」
リラは涙ぐみながら、二人に微笑んだ。
「泣くなよ~! 泣き顔までカワイイとか、反則でしょ!」
ユウとアオイはリラをからかいながらも、優しく抱きしめた。
ミクもそこに加わり、四人で輪になった。
リラは、このメイドカフェで、剣も魔法も通用しない、もう一つの戦場に立ち向かっていた。
それは、人との心を通わせるという、かつての勇者には成しえなかった戦いだった。
「さてと、明日は…リラの肌、もっと白くなるように、日焼け止めぬりぬり作戦、決行だね!」
「な、何を言っているのだアオイ!」
リラの戸惑った声が、夜の路地裏に響き渡った。
あかちゃんなのでわからないけど、☆☆☆☆☆を★★★★★にすると、よろこぶみたい。