表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/13

第4話:もう一つの戦場


「リラちゃん、今日も素敵な歌をありがとう!」


リラの歌声が響くたびに、ぴょんぴょんうさぎメイドカフェにはお客さんが押し寄せた。リラは歌の力でみんなを笑顔にできることが嬉しかったが、もう一つ、別の戦場に直面していた。


それは、メイドカフェ特有の人間関係だった。

ミク以外のメイドたち、特にベテランのユウとアオイは、リラの突然の人気に戸惑っていた。


「ねぇ、あの子、歌しかできないんでしょ?」

「なんか、ミクだけ特別扱いされてない?」


そんなヒソヒソ話が耳に入るたび、リラは胸がチクンと痛んだ。故郷で孤立した経験が蘇り、リラはまた一人になってしまうのではないかと不安になった。


そんなある日、ミクがリラに耳打ちした。


「あのね、今日、ユウさんとアオイさんのメイド服を、お洗濯したんだって!」

「へぇ…」


リラは興味なさそうに返事をした。


「それでね、ユウさんがすごく喜んでたんだよ! リラさんにも、お洗濯のやり方教えてあげるって!」


その日の仕事終わり、ユウがリラに声をかけた。


「リラ、私のメイド服、洗ってくれたらしいじゃないか。ありがとうな」

「い、いえ…」


リラは戸惑いながらも頷いた。

ユウはリラの手に、新しい洗剤と柔軟剤を渡した。


「これ、めっちゃいい匂いするんだ。お風呂で使ってみなよ」


リラはユウの優しさに触れ、心が温かくなるのを感じた。


次の日、リラはユウとアオイと一緒に休憩室でおしゃべりをしていた。


「そういえば、リラって、どうしてそんなに肌が白いの?」


アオイがリラの腕をツンツンとつついて言った。


「…故郷で、あまり太陽を浴びる機会がなかったから…」


「へぇ、まるで雪みたいだね!」


アオイの言葉に、リラは少し照れたように微笑んだ。

その時、アオイの目がリラの胸元に止まった。


「ちょっと、リラ! そのメイド服、なんかキツくない!?」


アオイがリラのメイド服をクイッと引っ張り、胸の谷間が少しだけ見えてしまう。

「ひゃあ!」

リラは慌てて胸元を隠したが、ユウもアオイも興味津々だった。


「リラって、意外とムネ、あるんだね!」

「わ、わたし…そんなに…」


リラは顔を真っ赤にして俯いた。

その様子に、ユウとアオイは楽しそうに笑い合った。


「もう! いじめないでくださいよ、二人とも!」


ミクが助け舟を出してくれた。


それからというもの、ユウとアオイはリラのことをいじるのが楽しくなってしまった。

リラの耳をくすぐったり、突然抱きついたり。

リラは戸惑いながらも、そのスキンシップを嫌がることはなかった。


ある日の閉店後。

リラはユウとアオイと一緒に、店の裏路地で一休みしていた。


「リラって、歌ってる時以外はあんまり喋らないよね」


ユウがリラに話しかける。


「…みんなが、私のことを怖がってると思っていたから…」


リラはポツリと呟いた。

ユウとアオイは顔を見合わせ、苦笑した。


「そんなことないって! 最初はびっくりしたけど、今はもう、リラはわたしたちの大事な仲間だよ」

「そうだよ! みんな、リラの歌声に元気をもらってるんだから!」


リラはユウとアオイの言葉に、胸が熱くなった。

故郷を追放されてから、ずっと一人だった。

でも、ここには、自分を仲間として受け入れてくれる人たちがいた。


「…ありがとう」


リラは涙ぐみながら、二人に微笑んだ。


「泣くなよ~! 泣き顔までカワイイとか、反則でしょ!」


ユウとアオイはリラをからかいながらも、優しく抱きしめた。

ミクもそこに加わり、四人で輪になった。


リラは、このメイドカフェで、剣も魔法も通用しない、もう一つの戦場に立ち向かっていた。

それは、人との心を通わせるという、かつての勇者には成しえなかった戦いだった。


「さてと、明日は…リラの肌、もっと白くなるように、日焼け止めぬりぬり作戦、決行だね!」


「な、何を言っているのだアオイ!」


リラの戸惑った声が、夜の路地裏に響き渡った。

あかちゃんなのでわからないけど、☆☆☆☆☆を★★★★★にすると、よろこぶみたい。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ