第3話:魔法の歌声
「リラさん、今日はフロアじゃなくて、カウンターの中でオムライス作ってみましょう!」
ミクはリラをキッチンに連れて行き、フライパンと卵を渡した。
昨日のジョッキ氷漬け事件から一転、今日は料理に挑戦することになった。
「オムライス…」
リラはぎこちない手つきでフライパンを握る。卵を割って溶き、温まったフライパンに流し込む。
しかし、いざ卵を焼こうとすると、元勇者としての反射神経と筋力が邪魔をしてしまう。
「あ、アツゥッ!」
フライパンに卵を落とした途端、高温の熱気に驚き、フライパンを放り投げてしまう。
卵は宙を舞い、そのままミクのメイド服にベチャっと付着した。
「わわわ! リラさん!」
ミクは顔面蒼白になりながら、卵まみれのメイド服を見つめた。
リラはしょんぼりと俯き、
「すまない…やはり、私には、このような繊細な仕事は向いていないようだ…」
と呟いた。
その日の営業は、リラの失敗の連続だった。
お客さんに出すコーヒーに強すぎてエスプレッソになってしまったり、注文のタブレットを握りつぶして壊してしまったり。
店内は、活気を失い、お客さんの数も減ってしまった。
「はぁ…」
リラは控え室でため息をついた。ミクはそんな彼女を心配そうに見つめている。
すると、店長が二人に向かって言った。
「リラちゃん、よかったら何か歌ってみてくれないか? 君の歌声は、なんだか心が落ち着くんだ」
店長は、リラが裏路地で歌っていた、異世界の歌を聞いたことがあったのだ。
リラは戸惑いながらも、マイクを握った。
「私が歌うのか…?」
「はい! リラさんの歌声、聞きたいです!」
ミクが目をキラキラさせてリラを見つめた。
リラは大きく息を吸い込み、故郷のエルフの里で歌われていた、子守唄を口ずさむ。
「♪~ララララ~♪」
彼女の歌声は、澄んでいて、まるで森の中を流れる小川のせせらぎのようだった。
それに、なんだか体がポカポカする。
ミクは胸の奥から温かくなるのを感じた。
しかし、その歌声には、不思議な力が宿っていた。
店内が、リラの歌声に合わせて、柔らかい光に包まれていく。
その光は、お客さんの心を癒し、活力を与えていく。
活気を失っていたメイドカフェに、再び賑わいが戻ってきた。
「なんだ、この歌は…」
「すごく癒される…」
お客さんたちは、リラの歌声に耳を傾け、目を閉じて、その歌声に酔いしれていた。
リラは、歌いながら、その不思議な力に気づく。
「これは…故郷の精霊の歌…」
リラの歌声は、人々の心を癒すだけでなく、その場の空気を変える力があった。
そして、店内の空気が一変した途端、お店に新しいご主人様が入ってきた。
その客は、リラの歌声に聞き入り、席に着くと、目を輝かせてリラに話しかける。
「キミ、すごく良い歌声だね。歌手にならないのかい?」
リラは困惑しながらも、首を横に振った。
「私は…メイドだから…」
「メイド…か。面白いね」
その男性は、にやりと笑うと、
「じゃあ、この店、僕の推しにしてあげようかな」
そう言って、リラに笑顔を向けた。
リラの歌声は、ぴょんぴょんうさぎメイドカフェの新たな名物となり、お店は連日大盛況となった。
「リラさん、すごい! 歌声にそんな力があったなんて!」
「ミク…」
ミクは笑顔でリラに抱きついた。リラも、ミクの温かい抱擁に、心から安心した。
「でも…この力、メイドの仕事に必要かな…」
「もちろんです! リラさんの歌声は、お客さんを笑顔にする力があります。それって、メイドの仕事に一番必要なことじゃないですか!」
ミクはリラの手を握り、真剣な瞳で言った。
リラはミクの言葉に、少しだけ自信を取り戻した。
「そうか…そうだな…」
「はい! さあ、これからも一緒に頑張りましょう!」
リラの歌声が響くメイドカフェで、二人の友情は深まっていく。
しかし、彼女たちの目の前には、まだまだたくさんの困難が待ち受けていた…。
あかちゃんなのでわからないけど、☆☆☆☆☆を★★★★★にすると、よろこぶみたい。




