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第1話:路地裏の遭遇

「ご主人様、いってらっしゃいませ! ぴょんぴょん!」


ミクは満面の笑みで扉を閉め、深々と頭を下げた。今日の最後の客が帰っていき、店内は一気に静まり返る。時刻は深夜1時。秋葉原のメインストリートはまだわずかにネオンが瞬いているが、一本裏に入った路地はもう真っ暗だ。


「はぁ…今日もよくがんばった、わたし!」


エプロンを外し、ミクは大きな伸びをした。ぴょんぴょんうさぎメイドカフェでの仕事も、もう半年になる。接客はまだまだだけど、お客さんが「ミクちゃんの笑顔に癒されるよ」って言ってくれるのが、何よりのやりがいだった。


ゴミ袋を手に、店の裏口から路地に出る。生ごみ独特のツンとくる匂いに鼻をしかめながら、指定のゴミ捨て場へ向かう。その途中、ゴミ箱の陰に何かがうずくまっているのが見えた。


「え、なに…?」


思わず声を上げると、うずくまっていた「何か」が、ゆっくりと顔を上げた。それは、人間ではなかった。いや、人間のような姿をしているが、耳が尖っている。そして、髪は月明かりに照らされて銀色に輝き、目は宝石のように透き通っていた。


「あの…大丈夫ですか?」


ミクがそっと近づくと、その少女は震える声で言った。


「すまない…腹が、腹が減って……」


その言葉に、ミクは目を丸くした。お腹が空いて倒れているなんて、まるでマンガみたいだ。しかし、彼女の顔色は悪く、本当に今にも消え入りそうだった。


「わ、わ、わたし、今オムライスしか持ってないんですけど…」


ミクは慌てて自分のバッグを漁り、ラップに包まれたオムライスを取り出した。それは賄いの残りだったが、今朝、自分でケチャップで可愛いうさぎの絵を描いたものだった。


「これ、よかったら…」


少女は、ミクが差し出したオムライスを、まるで宝物でも見るかのようにじっと見つめる。そして、おずおずと一口食べた。その瞬間、彼女の瞳から大粒の涙がポロポロとこぼれ落ちる。


「う、うぅ…故郷の味だ…」


泣きじゃくる少女に、ミクは戸惑いながらも背中をさすった。


「故郷…? どこから来たんですか?」


少女は涙を拭い、ミクに微笑んだ。その笑顔は、この世のものとは思えないほど美しかった。


「私はリラ。遠い遠い、エルフの里から来たんだ。かつては、勇者と呼ばれていた」


「ゆ、勇者ぁぁあああ!?」


ミクの頭の中で、ファンタジーの世界が弾けた。エルフ、勇者、そして故郷…信じられないことばかりだった。


「リラさん、もしかして、魔王とか倒したんですか?」


リラはこくんと頷く。


「魔王は倒したが、故郷を追われてしまった。故郷の民は、勇者となった私を恐れたのだ」


「そんな…」


ミクはリラの境遇に胸が締め付けられるようだった。せっかく世界を救ったのに、故郷を追われるなんて。なんて残酷なんだろう。


「とりあえず、ここにいるのは危ないです! わたしの家に来ますか?」


ミクの提案に、リラはキョトンとした顔をした。


「家…? それは、泊めてくれるということか?」


「はい! もちろんです!」


ミクはリラの細い腕を掴んで立ち上がらせた。そのまま二人は、ミクの小さなアパートへと向かった。


リラは、慣れないこの世界の生活に戸惑いながらも、ミクの優しさに触れ、少しずつ心を開いていった。


数日後、なにか仕事をしたいというリラ。

そして、ミクはリラをこの世界で生きていけるように、メイドカフェで働かせることを思いつく。


「大丈夫です! リラさんなら絶対、人気者になれますから!」


そう言って、ミクはリラにメイド服を差し出した。


「これ…私に、これを着ろと?」


リラはメイド服を前に、戸惑いの表情を浮かべた。しかし、その瞳の奥には、かすかな期待の光が宿っていた。


彼女のメイドとしての、そしてこの世界での新しい生活が、今、始まるのだった。


「さあ、リラさん! ぴょんぴょんうさぎメイドカフェへようこそ!」

あかちゃんなのでわからない。

☆☆☆☆☆を★★★★★にするとよろこぶ。

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