神の使い
「君が音子くん?」
「はい…」
「僕は咫…アタって呼んでね。」
知らない男…か女か分からない、足が三本ある奴がいた。
髪は長く黒髪、全身も真っ黒で不気味な奴だ。
爪まで黒く塗っている。
余程黒が好きなんだろう。
ビジュアル系バンドでもしてたんだろうか?
「今日はナナシに頼まれて出張説明に来たよ。僕は八咫烏…案内人であり、神の使いだよ。」
「はあ…」
案内人って事は転生してる元人間の動物じゃ無いんだろうか?
まず足が3本の動物が思いつかない。
とにかく怪しく不気味だ。
何だか姿も言ってる事も厨二病を拗らせてる感が否めない。
「音子くんが人間に戻る方法を知りたがってるって聞いてね。来るの待ってたよ。」
「遅れてすみません…」
「まあ、可愛い女の子とお喋りは楽しいよね…気にしないで。」
「…」
何で知ってるんだろう?
ずっとここで待ってたんだよな?
やはり不気味だ…
「人間に戻るにはね、人間の時の記憶が戻らないと戻れない。」
「はい。」
「記憶が戻るって事は人間の時に何をしてきて今転生をしているか知らなければならない。」
「はい。」
「君は目を逸らさず直視出来るかな?」
「はい。」
「宜しい。では、どうやって記憶を戻すか。それは今の世界で愛する人を見つけ、その相手からも愛して貰わなければならない。」
「ほう…」
「人…と言った様に、動物の時でなく、人の姿の時だね。」
「なら…今の状態って事?」
「そうだね。動物の姿は人から愛されやすいからね。言わば偽りの姿だ。今の姿は本来の姿に近い。本当の姿で相手から愛してもらえれば人間の世界で犯した罪を償う機会が与えられるって訳だね。」
「成る程…」
「愛されると言う事はとても難しい。愛する事が難しい人もいる。それをクリアすれば記憶が戻る」
「はい。」
「この転生をしている者は人間として失格だと判断された者達だ。人を愛して、人から愛されるなら人間の資格が有ると認められた事になるんだよ。」
「はい。」
「記憶が戻ればこの世界から君は消滅して元の世界に戻る。」
「その場合…この世界で過ごした記憶は…この世界で愛した人の記憶は…どうなるのですか?」
「動物として過ごしていた記憶は失うね。」
「…」
「ただ…此方で愛した記憶は…思い出すかも知れないし、消えたままかも知れない。」
「…」
「愛した思いが強ければ人間の世界で思い出せるかもしれない。」
「そうですか…」
「ただ、ここで出会った人々は消え去った後も君達の事は忘れない」
「そうなんだ…」
「君の転生がいつ終わるのかは僕は伝えられない。自分で知るしか無いね」
「はい…」
「このまま真実から目を逸らせ平穏に魂を終わらせる事も出来るが?」
「それは…」
「それでも君は人間の記憶を取り戻したい…戻りたいと思うのかな?」
「はい。」
「分かった。健闘を祈るよ。では。」
そう言ってアタはカラスの姿になって飛び去って行った。
カラスだったんだな。
今日はゴン太とノラがいた。
「ルルは?」
「何かママが旅行に行くからって連れてったみたい。」
「またワンピースにリボンつけられてんだろうなあ。」
「多分ねー。実は満更でも無いみたいよー」
「へえ…」
やっぱり変態だったらしい。
変身しない様に気をつけろよ、ルル…
「拙者は…人間の記憶は無いのじゃが…多分この世界でも、先の世界でも誰かを愛する事は無理じゃろう…その事だけは何故か分かる…」
「そうか…多分人間の時に余程好きな奴がいたんだろうなあ」
「かも知れんな。」
「俺は…」
もう、此方の世界で運命の人に出会っていた。
と思う。
愛して貰いたいな。
そうしたら君にまた本当の姿で出会いたいな…




