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第15話: 遺跡の意志

探査艇が遺跡の中枢に近づくにつれて、周囲の光と音がさらに強まっていった。壁面に刻まれた模様が青緑の輝きを放ち、その輝きが探査艇の窓に反射する。人魚たちもそれに呼応するように体を光らせ、遺跡全体と調和するような動きを見せていた。


「ここが……遺跡の核となる場所なのか。」


アヤが窓の外を見つめながら言葉を漏らす。


「気を抜くな。この光景に魅了されて、判断を誤るわけにはいかない。」


高橋が険しい表情で答える。彼の声には緊張が滲んでいた。


---


探査艇がさらに進むと、広大な空間にたどり着いた。その中心には、これまでよりもさらに大きな球体が浮かび、ゆっくりと回転している。球体の表面には無数の文様が刻まれ、それらが規則的なリズムで輝いている。そのリズムは、人魚たちの発する音と不思議な共鳴を見せていた。


「これが遺跡の意志そのものかもしれない……。」


アヤが目を見開きながら呟いた。


カイが遺跡を見上げながら低い音を響かせた。それは仲間たちへの「準備を整えろ」という意味を持つ音だった。


---


翻訳プログラムが球体から放たれる音を捉え、画面にメッセージを浮かび上がらせる。


「『共に未来を選べ。調和を示せ。』」


村上がその言葉を読み上げた。


「遺跡は、調和だけを求めているわけじゃない。この未来をどう作るのか、それを選ばせようとしてるんだ。」


「調和を示せって言うけど、どうやって?」


高橋が疑問を口にする。


その時、アヤが目を閉じ、深く息を吸い込んだ。


「音だけじゃない……私たち自身が未来を信じて進むこと。それが遺跡の求めていることなんじゃないかしら。」


---


カイが静かに探査艇に近づき、その窓越しにアヤを見つめる。彼の低い音が遺跡全体に響き渡り、球体の光と重なり合った。その音にアヤが応えるように、祖父の歌を紡ぎ始める。


探査艇の通信装置を通じて響くアヤの旋律とカイの音が交わると、遺跡の光が一斉に強く輝いた。そして球体が回転を止め、中心から新たな光の柱を放つ。


---


その光が壁面に複雑な映像を浮かび上がらせた。そこには、人間と人魚が協力し、地球を守るために共に働く未来の姿が描かれていた。海も陸も再び豊かになり、それぞれが共存しながら新たな文明を築いていく様子が、鮮やかに映し出されている。


「これが……遺跡が望む未来なのか。」


アヤが目を潤ませながらつぶやく。


「だが、それはまだただの可能性だ。」


高橋が冷静な口調で言葉を継いだ。


「我々がその未来を実現する覚悟を持たなければ、この映像は幻のままだ。」


---


篠原教授の声が通信機から届いた。


「アヤ、君たちが作り出した音と光が遺跡を動かした。これで遺跡の答えが少しずつ見えてきたと言えるだろう。」


教授の言葉にアヤは静かに頷く。


「でも、これで終わりじゃない。遺跡が未来を託しているのは私たちだけじゃない。人魚たちと一緒に、次の扉を開かなきゃ。」


その言葉にカイが微かに笑みを浮かべたように見えた。彼の低い音が再び響き、探査艇と人魚たちを遺跡の最奥へと導く新たな光が現れた。


---


探査艇と人魚たちは、光の道を進む。未来の可能性を描きながら、彼らは共に次のステージへ向かう決意を新たにしていた。

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