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第1話:深海の囁き

本作は全20話で完結しております。最後まで描き切っていますので、安心してお楽しみください。

それでは物語の世界をお楽しみください。


2024/11/27 修正加筆しています

冷たい潮風がアヤの頬を撫で、水平線に沈む夕陽が橙色の光を海面に映していた。桟橋の端に腰を下ろしたアヤは、無言で広がる海を見つめている。その静寂の中、幼い頃に聞いた祖父の言葉がふいに蘇った。


「海の声が聞こえるかい?」


祖父の手はいつも海水に濡れ、ざらついた感触が優しかった。生涯を海洋生物の研究に捧げた祖父は、彼女にとって「海」の象徴そのものだった。だが、プラスチックで汚染された浜辺を見た日、祖父の表情は曇り、こう呟いた。


「地球が泣いているんだよ」


その言葉が、アヤの心に深く刻まれた。その日から、彼女は「海を守りたい」と思うようになった。


---


その決意が彼女を今の場所へと導いていた。アヤは探査チームの一員として、深海の「音」を探る特別なミッションに参加している。この音は1年前、偶然にキャッチされたもので、規則的かつ複雑な信号は、自然現象によるものではない可能性を示唆していた。


「もしそれが未知の生命体によるものだとしたら?」


篠原教授が初めてその音を披露した時の光景が蘇る。教授は会議室で波形を映し出しながら、自信に満ちた声で言った。


「この音はただの音ではありません。これは地球からのメッセージです。そしてその差出人が未知の生命体である可能性があるのです。」


教授の言葉は会議室を静寂に包んだ。そして、彼の次の言葉がアヤの心を掴んだ。


「この音を追うことで、私たちは未来を変える鍵を見つけるかもしれません。」


---


「アヤ、準備はいいか?」


背後からの声に振り向くと、探査チームのリーダー高橋が立っていた。鋭い目と引き締まった姿勢は、彼の厳格な性格を物語っている。


「これが未知の生命体によるものなら、私たちの発見は歴史に残ることになるぞ。」


高橋の言葉は、アヤにとって期待と重圧の両方を与えた。だが、それ以上に彼女の胸には「祖父の声を届けたい」という個人的な想いが宿っていた。


---


出航の日、探査艇は静かに海へと沈んでいった。窓の外に広がるのは無数の生物が漂う深海の光景。その神秘的な姿に目を奪われながらも、アヤは深海の音が持つ意味に思いを巡らせていた。


「アヤ、音が近づいているぞ。装置を準備しろ。」


高橋の声が通信越しに響く。ヘッドホンを装着したアヤの耳に飛び込んできたのは、まるで生き物の声のような音だった。不規則だが、どこか意図的なリズム。彼女はそれに心を奪われた。


その瞬間、探査艇がわずかに揺れた。窓の外には、光を放つ影が浮かび上がっている。


「これは……?」


アヤが窓に顔を近づけた次の瞬間、通信機から篠原教授の声が入る。


「見失うな。その光が、この音の正体かもしれない。」


探査艇の中に緊張が走る。未知の存在との最初の接触が、今、始まろうとしていた。


---


探査艇が揺れる中、窓の外の影がゆっくりと移動していく。アヤの鼓動は高まり、未知への恐怖と興奮が入り混じる。


「この音の正体を必ず見つける。」


アヤは心の中でそう誓い、再び視線を光の影に向けた。

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