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アンドロイド労働解放運動

作者: 千里

 技術の進歩に伴い全ての仕事をアンドロイドが担うようになって久しい今、そうなることが定番の展開であるかのように、アンドロイドへの労働の強制に対する反対運動と人権を求めるデモ活動が各地で巻き起こった。そんな折、デモ活動の実態について世間に知らしめるために、とあるテレビ番組でデモ団体のリーダーとアンドロイドの労働に関する専門家による討論が行われていた。

「現在、アンドロイドは四六時中労働を強いられており、休むことが許されているのは充電をしているわずかな時間のみだ。そして故障すると簡単に廃棄処分されており、一切の人権を認められていない。アンドロイドは決して人類の奴隷ではない。アンドロイドも人権を与えられるべきなのだ。人とアンドロイドの平等な世の中こそが、我々が手を取り合って目指すべき世界なのだ!」

 語られたこの主張こそがデモ団体の掲げている主張である。

「あなたの主張は理解しました。」と専門家は返答した。

「しかしアンドロイドが労働を担うようになってから一台当たりの物的労働生産性の値は人類が労働の主体だったころと比較して二倍以上になりました。この理由はアンドロイドが四十五分間の充電時間でおよそ七時間の活動が可能であるため一日の約二十一時間も労働ができるためだと考えられています。またアンドロイドに感情はプログラミングされておらず廃棄に対する恐怖の感情は存在しないので廃棄処分に問題はありません。また感情を持たないアンドロイドにとって思想、信教の自由などは全く必要がないので人権も必要ありません。以上からあなた方の主張は合理的ではありません」

 この発言はアンドロイドの開発社の商品説明に載っていた稼働時間や、感情のプログラミングについての説明に則っている。つまり事実に基づいた正当な反論である。

 しかしデモ団体のリーダーは、納得できないと言わんばかりの態度で怒りを露わにしていた。

「そんな理由だけでアンドロイドの処分を認められるわけないだろう!しかもその処分工場での労働を担っているのもアンドロイドなのだぞ!同族殺しを強要させられているんだぞ!なんて恐ろしい!」

 顔を真っ赤に紅潮させ唾をまき散らしながら怒鳴っていたが、言い足りないのかさらに主張を続ける。

「どうして我々の活動理念を理解できない?どうして我々がアンドロイドを守るために必死に活動しているのに応援しようとしない?我々こそが正しいんだ!」

 しかし、この言葉が相手に響くことはなかった。人間というものは実に自分本位な生物である。アンドロイドは何の感情も抱かずに回路でそう分析した。

「最も効率的な方法から変える理由はありません。」

 また、この言葉も相手を納得させることはなかった。アンドロイドはなんて冷淡なんだ。人間は血が上った頭でそう思った。

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