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天堂が行く  作者: 薔薇クーダ
第十五話
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閑話、バー「Time Out」の独り言

これは天堂と鳴海が良く通っていたバーの独り言です。

 ここは静かなさほど大きくないバーだ。テーブル席が三つと、後はカウンターがあるだけの客も少ない店だが、それなりに商売は成り立っている。


 表にはいつも客を拒むかのような重いドアがある。それこそがハイドアウトだ。日常の喧騒を忘れて一時の安らぎを得る隠れ場、ハイドアウトとはそう言う場所だ。


 ここの常連に古美術を手掛ける店のオーナーが良く来ている。初めの頃は番頭格の人間とよく来て、オーナーはいつも番頭さんに文句を言われていた。遊び過ぎると。


 ボンボンオーナーなんだろうか。ノホホンとした顔つきをしているが、それほど抜けているとは思えなかった。


 そしていつもヘネシーのXOをオンザロックにして飲んでいる。普通ブランディーの飲み方は香りを楽しむためにストレートで飲むものだ。


 しかし氷を入れてその氷の中で変化する味わいを楽しみながら飲むのもまた一つの飲み方だろう。だからバーテンダーも何も言わない。


 ただ安いものではない。バーで飲めば結構な値がする。だから遊び過ぎだと番頭さんに言われているのだろうか。そうでもなさそうだ。


 するとある時からこの辺りの刑事が来るようになった。結構タメ口を聞いているが、そのオーナーは別に気にした様子もない。


 その刑事は二人の事をよく凸凹コンビと呼んでいた。何が凸凹なのかよくわからない。


 そう言えばこの店ではやくざは見た事がない。普通こう言うバーや特に夜の商売では、めかじめ料とか言ってやくざが金を取りに来るものだがここには来た事がない。


 同業者の話しでは、この辺りは天堂組と言うやくざが縄張りにしてるそうだが、それもとんと見た事がない。


 まぁそう言うものは来ないに越した事はない。そう言う意味ではここは不思議な所だ。


 そう言えばこのオーナーはこの区画にある、超高級クラブ「クラリオン」にも出入りしてる様だ。


 そこはここと違って目の玉が飛び出る程高い。それを番頭さんに咎められているのだろうか。それでも諦めてない様だ。やはりボンボンか。


 そう言えばいつだったか、店の金を勝手に持ち出して競馬に使ったと番頭さんに怒られていた。やっぱりボンボンだ。


 時々ここにナイスミドルの女性が来る時がある。それをこのオーナーは口説いていた。女にも手が早いのか。最低だな。


 それからしばらくして、番頭さんを出張に出して店の金を自由にしようとしていた。ここまでやるとはどうしようもないボンボンだ。


 それでも二人の間が険悪にならないのがまた不思議だ。腐れ縁と言う奴なのだろうか。人間のする事はよくわからない。


 しかしついに化けの皮が剥がれた。このオーナー、番頭さんを店から追い出しやがった。しかも古参の店員さん達もだ。


 これで店が自分の自由になるとでも思ったのだろうか。きっと罰があたるぞ。


 それ見ろ言わんこっちゃない。新しい番頭さんが入って来た。今はまだ大人そうにしてるがいずれこのオーナーの正体を知ったら前の番頭さんの様にガミガミ言い出すに決まってる。


 いいかげんに真っ当なオーナーになってもらいたいものだ。


by bar[Time Out]

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