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天堂が行く  作者: 薔薇クーダ
第十一部
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第二話 ボディーガード

銃で狙われた亜里沙に芸能部門のサブマネージャー、近衛公彦が自分の知り合いだと言って一人のボディーガードを鳴海に紹介した。


 天堂が大阪で将来の展望について考えている頃、東京では鳴海が今回の綾香狙撃事件の事を考えていた。


 事件が事件だけに、この事は一般には伏せられた。ただ取材班が入っていたので、そことは特別に報道協定が結ばれた事は言うまでもない。


 ただ問題は神井綾香の方だった。彼女には何の思い当たる事もないのに何故狙撃などと言う事になるのか本人を始め鳴海にもわからなかった。


 綾香も警察で再度に渡る聴取を受けたが詳しい事は何も判明しなかった。ただこれで終わった訳ではない。あの狙撃が失敗した以上また狙われる可能性は考えなければならないだろう。


 そこで芸能部門のサブマネージャー、近衛公彦が自分の知り合いだと言って一人のボディーガードを鳴海に紹介した。


 彼は元傭兵で非常に優秀で信頼のおける人間だと力説していた。今は個人でディガードをしているので是非神井綾香の護衛に使って欲しいと言う。


 近衛は近衛で本当に神井綾香の事を心配していたのでその気持ちを無下にも出来ないので、鳴海は取り合えずそのボディーガードを面接してみる事にした。


 そして鳴海が面接して合格したら使うと釘をさしておいた。翌日そのボディーガードの工藤総司と言う男が「天堂東京プロダクション」にやって来た。


 歳は30代半ばと言う所だろう。一応ジャケットは着ていたが少しくたびれている。ただし使い慣れた動き易すそうなジャケットだった。


 ズボンも似たような感じだがこれもまた見かけよりは丈夫で腰回りもゆったりしていて格闘するにはいいだろうと思われた。


 鳴海の目にはそれなりに実績のありそうな人物に思われた。真の実力の程はまだわからないが、少なくとも並みの格闘家よりは強いだろうと鳴海は察していた。


 元傭兵なら銃器の扱いにも手慣れているだろうが生憎とここは日本だ。民間人に銃器の使用は許されてはいない。さて彼はその点をどう処理するのだろうか。


 面接で鳴海はこう言った。


「面接は合格です。ただ一つ質問があります」

「面接は合格って、あんたはまだ何も俺に聞いてないだろう」

「聞く必要がありますか」

「いや、別にそれで良ければ俺は構わないが」

「それで結構です」


「で、その質問と言うのは」

「対狙撃対策です」

「マルタイは、いや失礼。神井綾香さんは銃で狙われると言うのか」

「はい、既に一度狙われました」

「それはいつの事だ」

「千葉のゴルフ場でです。警察はこの事はまだ公表してませんので関係者以外は知りません」


「ではまた狙われる可能性があると言う事か。俺はそんな話は聞いてないぞ。ただ暴漢に襲われそうになったとだけしか」

「はい、表向きにはそうしてあります。何しろ人気商売ですから」

「参ったな。近衛のやつ、そんな事は一言もいわなかったぞ」

「でしょうね。彼も詳しい事は知りませんので」

「で、俺にどうしろと」


「ですから、銃を使う相手に対処出来ますかと聞いてます」

「参ったな。ここは日本だからな」

「はい、ここではあなたの活動も制限されるでしょうからね」

「まぁ、そうだ。いくら俺でも銃の弾避けにはなりたくはないからな」


「では工藤さんではなく、ブラック・タイガーとしならどうでしょうか」

「あんた、何故俺のコードネームを知ってる」

「こちらは依頼人ですから」

「それじゃー答えになってないだろう」


「銃器は必要ですか」

「待ってくれ。そんな物が手に入ると言うのか」

「どうしても必要と言うのならですが。むしろ貴方ならそれもご自身で可能ではないかと思うのですが」

「あんた一体何者なんだ」


「単なる依頼人ですが、うちのタレントを守る為なら出来る限りの事はするつもりです」

「銃もかい」

「はい」

「参ったな。わかったよ。やってみよう」

「ありがとうございます」


 工藤のコードネーム「ブラック・タイガー」は言ってみれば工藤の裏の顔だ。親友の近衛も知らない。


 正直工藤はあきれていた。今まで今回の様な依頼人にはあった事がなかった。日本にいる依頼人など警護の意味さえ理解していない者ばかりだと思っていた。


 まして狙撃されるからお前も銃で戦え。そんな事を言う依頼人が何処にいる。いや、日本以外でならいるだろう。


 しかしそれをここで聞くとは思わなかった。一体こいつは何者なんだと工藤は思った。


 綾香の会社からの送り迎えは、サブマネージャーが運転をし、後ろに鳴海と綾香が座り、前の助手席に工藤が座った。


 綾香は何もここまでしなくてもと言っていたが、鳴海は安全の為ですので我慢してくださいと言った。そしてこれももう直ぐ終わるでしょうとも言った。


 一体何処からそんな答えが出て来るのかと工藤は思っていた。撮影現場に着きみんな車から降りた。


 その時鳴海が「工藤さん、11時の方向です」と言った。工藤は咄嗟に反応してそちらに拳銃を抜いて構えた。


 確かにそのビルの屋上にライフルを構えた男がいた。しかしあまりにも早い工藤の反応にその男は銃を仕舞って姿を消した。


「逃げましたか、良い反応ですね」

「あんたな、何を言ってる」

「所長、何なのこれ。どうしてこの人が拳銃なんか持ってるの」

「勿論あなたを守る為ですよ」

「ちょっとここは日本よ。ニューヨークじゃないのよ」


「ですがあなたが狙われている事は事実ですから」

「うそ、じゃーあたしはどうしたらいいのよ」

「別にどうもしなくていいです。私達が守りますから」

「守るって・・・」

「さー行きましょう。撮影の時間です」


 工藤はまたしても度肝を抜かれていた。どうして敵の居場所を把握した。そしてあの的確な指示は何だ。


 銃で狙われていると言うのに全く動揺すらしていない。あれじゃー俺達傭兵以上じゃないかと。


 流石に神井綾香はプロだった。時間内の撮影には何の支障もなくこなした。しかし仕事を終えて帰る段階になった時に神井綾香は少し震えていた。


 怖いのだ。それは当たり前だろう。どんなにステージ度胸があってもこれはまた別だ。自分の命が狙われているのだ、怖くない訳がない。


 その夜鳴海は神井綾香を一流ホテルに宿泊させた。こう言う一流ホテルの所の方が安全だと言って。工藤もそれには賛成した。


 そしてホテルを出た所で鳴海は工藤に言った。


「では工藤さん。行きましょうか」

「行くって何処へ」

「敵のアジトがわかりました。ですからこちらから攻撃を仕掛けます」


「ちょっと待ってくれ。あんた言ってる意味が解ってるのか」

「はい、今やらないとまた狙われるでしょう。次も安全だと言う保障はありませんので」

「それはそうだがよ、俺達二人だけでやるのか」

「怖いですか」


「怖いかだって。参ったな、それをあんたから言われるとはな。わかったよ。じゃー行こうか」

「流石はブラック・タイガーです」


 鳴海は綾香が二度目に狙われた時に周囲に『闇』の者達を配置していた。そしてそのスナイパーの後をつけさせたのだ。


 鳴海が敵のアジトだと言った所にやって来た。そこは廃屋だった。しかしどうやら中に人間がいる気配がする。工藤は用心深く中に侵入して行った。


 中には3人いた。一人はライフルの手入れをしていた。あれがヒットマンだろう。


 それと通信を担当しているのかラップトップをいじくってる奴が一人。もう一人は補佐だろうか。ともかくこの3人を倒せば何とかなりそうだ。


 鳴海は工藤にヒットマンを頼みますと言った。では残りの二人は自分が相手をすると言う事だろうか。


 ともかく鳴海は何かを遠くに投げて音を立てた。そこに気を取られた隙に部屋に駆け込み二人を倒しに行った。


 ヒットマンはその時ライフルを持って部屋の外に飛び出して行った。工藤はそれを追いかけた。


 ライフルと拳銃の打ち合いをしながら二人の戦いが始まった。


 鳴海が飛び込んだ部屋の中では一瞬で決着がついていた。


『さて、工藤さんはどうですかね。あの男を倒せますかね』


 鳴海は破壊し損ねたラップトップを操作して中身を解読していた。若干のパスワード等はあったが鳴海にかかればそんなものはないに等しい。


 そして分かった事は誤認狙撃だったと言う事だ。本来の目標は綾香ではなく是枝佳代だった。確かにその日綾香と佳代は白い似たような服を着ていた。


 そして共にミニスカートだった。これは視聴者が喜ぶとう言う事で半分はテレビ局からのお仕着せだった。


 つまり似た二人を間違えて綾香の方を狙ってしまったと言う事になる。随分とお粗末なスナイパーだと言う事になる。


 ただ腕の方は悪くはない。要は依頼主の問題だろう。それはともかく今ここで始末して行かなければどんなとばっちりが綾香に行くかもわからない。


 やはり処分するしかないだろうと鳴海は考えていた。後の事はまた後で考えれば良いと。

応援していただくと励みになります。

よろしくお願いいたします。

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