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天堂が行く  作者: 薔薇クーダ
第十部
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第三話 新しい事業

鳴海は遂に綾香の救済計画を発動した。

バックにいるやくざに対して「やくざ狩り」になり、

綾香の属する芸能プロダクションに話をつけに行った。

 鳴海は綾香が我慢している間にまた以前にやった事のある『やくざ狩り』をやっていた。相手は当然「三隅興業」だ。


 「三隅興業」の組員を見つけては喧嘩を吹っかける。特別な事をする必要は何もなかった。


 ただ相手の前に立ってやればそれだけで簡単に喧嘩は起った。それだけ相手が単純だと言う事だ。


「何だてめぇ、何ガンつけてんだ。おぉっ」


 そう言って最初の男が殴り掛かって来た。その手を捕って軽く捻ると相手は宙を舞って背中から地面に落ちた。


 確かに地面は固い。特にコンクリートの上に落ちたらそれなりのダメージは受けるだろう。


 しかしだからと言ってそれで完全に動けなくなる訳ではない。それなりのダメージはあるだろうがそれでもまだ立ち上がる事位は出来るだろう。


 余程強い投げでなければ。例えば体ごとあびせて投げるあびせ投げの様なものなら別だ。しかし鳴海の場合はそれとは違った。


 ともかく落ちる時に重力とスピードが加速されるのだ。自分の体重の数倍もの重力が重なり落下する。これに耐えられる者はいない。全身の骨が砕けないだけまだましと言った所だろう。


 鳴海を相手にした者は全員がその洗礼を受けた。これは拳で叩かれるよりもきつい。本当に足腰が立たなくなってしまう。後は這って帰るしか方法がないと言った感じだ。


 そして鳴海は町でそう言う喧嘩を何回か繰り返した後に組事務所に乗り込むと言ういつもの手を使った。その頃になると『やくざ狩り』の噂は既に組中に広がっていた。


 子分の組々が潰され、後は本家の親元が残るだけとなった。当然本家ではその準備をしていた。あるだけの道具を出していつでも戦争が出来るように。


 普通ならそんな所に乗り込んで行く馬鹿は一人もいないはずだ。しかし鳴海にとってそんな事は歯牙にもかからない事だった。


 堂々と本家事務所に乗り込んで邪魔する者は全て叩き伏せて行った。相手が拳銃を持っていようが、刀を持っていようが、短刀を持っていようが、鳴海を阻止出来るものは何もなかった。


 そして三隅興業、つまり三隅組の組長の所に辿り着いた鳴海はその部屋の中で最大の脅しをかけた。


 襲って来た組員達を人間では絶対に不可能と思える方法で薙ぎ倒し、撃たれた拳銃の弾は腕のプロテクターで弾き返した。


 そして組長の両腕に点穴を行いその自由を奪った。当然そこでいつものセリフを聞かせておいた。「お前の腕を治せるのは俺だけだ」と。


 そして鳴海は「鬼気」を放って去って行った。それが2日目だった。3日目以降は相手に恐怖を与え得る為の心理的な時間だった。


 5目目に鳴海は引っ越し業者を用意して綾香の引っ越しを敢行した。当然そのアパートには三隅興業の看視者が部屋を借りて住んでいた。


 そこでは綾香だけではなく全ての興和プロダクションの契約者達は監視されていたのだ。


 しかしその看視者達は鳴海の放った『闇』によって完全に無力化され、監視装置の機能も破壊された。


「あのさーいきなり引っ越しって、あたしは何処行ったらいい訳?」

「取りあえずは私が従業員用に借りているマンションにでも引っ越してもらいましょうか。それからこれが落ち着けば何処にでも自由に移っていただいてかまいませんので」


「あのさ、これで本当にいいの。何かやばくない」

「大丈夫ですよ。明日くらいには結果が出ると思いますので」

「結果って何?」

「ですから結果は結果です」

「あたし、わかんないんですけど」

「その内わかります」


 鳴海の言った通り、三隅興業の社長、つまり三隅組の組長は鳴海に屈服した。


 大阪でやっているのと同じ「不可侵条約」に契約をさせ、2億で両腕を治してやった。それが6日目だった。


 そして始まりの日から1週間が経った日、鳴海は弁護士として興和プロダクションの社長、黒部伊蔵に面会に行った。


「弁護士さんが私に何の用ですかな」

「実は神井綾香の件でお話がありまして」

「神井綾香の件と言いますと」

「ええ、彼女の移籍についてです」


「移籍、それは無理な話ですな。移籍はわしの許可なしには出来ない事になってますので」

「確かに契約ではそうなってますね」

「なら話は簡単でしょう。お帰りください」

「ところがそうではないのですよ。契約違反があった場合は別です」


「契約違反とはどう言う事ですかな。うちに契約違反があるとでも」

「ええ、大きな契約違反がね」


「あんた、いくら弁護士だか知らんが、いい加減な事でいちゃもんつけてはいかんな。何なら訴えてもいいんだぜ」

「ええ、それで結構です。私も訴えようと考えていた所ですので」

「何だと、てめぇ、何を証拠にそんな事言ってやがる」

「それがあなたの本性ですか」


 そこに営業部長の吉住が入って来た。


「社長、何です」

「いやな、この弁護士先生が神井綾香の事でいちゃもんをおつけだ」

「おい、あんた。弁護士だか何だかしらねーがよ、足元が明るいうちに帰った方がいいんじゃねーのか」


「ここに神井綾香の契約書があるんですが、この中で神井綾香に対する報酬のパーセンテージが明記されているのはご存じですよね」

「それがどうかしたかい。ちゃんと払ってやってるよ」


「ところがそうではないようですね。これはあなた方の銀行口座のバランスシートの控えです。これを見れば神井綾香の稼ぎとあなたが支払ってる金額が契約書とはマッチしないのですよ。かなりの搾取、つまりピンハネをしてますよね。これは背任行為であり、契約不履行と言う事になります。この事を裁判所で争ってもいいのですよ」


「な、何だと、そんなものを何処から手に入れた。不正入手なら証拠能力はないって弁護士なら知ってるよな」

「そうかも知れませんね、ただ銀行からの訴えがなければ善意の第三者からの提供と言う事にしてもいいのです。もしくは週刊誌などは喜んで飛びつくでしょうね」

「何だとてめぇー脅かそうってのか」


「ここは確か株式を上場してましたよね。こう言うものが株主総会で提示されては困るんではないですかね」

「何だとこのやろう。てめぇー俺が誰だか知っててそんな口をきいてやがるのか」


「あなたは確か『三隅興業』からの出向でしかたね。つまりはやくざと言う事ですよね」

「てめー何を言ってるのかわかってるのか。どうなっても知らねーぞ」

「それは悪意ある恐喝と取られますがいいのですか」

「何だとてめー」


 そう言って吉住が鳴海に殴り掛かって行った。鳴海はその手首を掴んでほんの少しだけ力を加えた。それだけで吉住は両膝を床についてしまった。


「暴力はいけませんね。話し合いで決着をつけませんか。ちょっと待ってください」


 そう言って鳴海は携帯の番号を押した。そして、


「私です。天堂東京の鳴海です。今『興和プロダクション』と言う所にいるのでが、ここに営業部長と言う肩書でおたくの吉住さんと言う人がいますよね。その人が私に喧嘩を吹っかけてきているのですがどうします。このまま続行しますか。そうなるとあの条約は破棄と言う事になりますがそれでも構いませんか」


「吉住さん、あなたにです。おたくの組長さんからです」


 そう言われて渡された携帯を聞いていた吉住は少しづつ震え出していた。そして完全に体から力が抜けてしまった。


「その携帯返してしてもらえますか」

 そう言って鳴海は更に付け加えた。


「三隅さん、プロダクションにやくざは不釣り合いです。この人を引き戻してもらえますかね。そして今後このプロダクションには一切手を貸さない様に。約束ですよ」

『わかりました』

 と言う三隅の声が聞こえていた。


「吉住さん。わかりましたか」

「はい、わかりました。そちらの言われるようにします」

「吉住さん、何言ってるんだよ」

「じゃかましい。てめー死にてーのか。これ以上ごちゃごちゃ言いやがったら簀巻きにして沈めるぞ」

「私は今の言葉は聞かなかった事にします」

 と鳴海が言った。


「で、黒部さん、契約の件ですが了承していただけますよね」

「わ、わかった。了承しよう」

「それとですね、今までの過不足分を神井綾香に支払っていただけますか。私の試算では5億はあるはずですが」


「そ、そんな」

「それとも週刊誌がいいですか」

「わ、わかった。支払う。支払いますよ」


 こうして神井綾香は晴れて「興和プロダクション」から解放される事になった。


「あのさーオジサン。それはいいんだけど、あたしこれから何処に行けばいいのよ」

「何処にでも行けるでしょう。もう自由なんですから」


「そうはいかないのよね。みんな元『興和プロダクション』って聞くと腰が引けちゃって誰も引き取ってくれないのよ」

「そうですか。それは困りましたね。ではうちうに来ますか」

「うちって何?」


「実は新しい部署を作ったのですよ。『天堂東京プロダクション』と言うんですけどね。うちでも芸能関係の仕事をやってみようと思ってるんです」

「それってホントなの」

「ええ、ほんとですよ」

「ヤッホー!オジサン、ありがとう。大好きよ!」

 と言って綾香は鳴海に抱きついて来た。


「そのオジサンですが、何とかなりませんかね」


応援していただくと励みになります。

よろしくお願いいたします。

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