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天堂が行く  作者: 薔薇クーダ
第八部
36/77

第一話 五月山の暴走族

久し振りに赤城が仕事をしてると、

本人は毎日一生懸命仕事をしてると言うのだが、

携帯に電話が鳴った。

それはかって一緒に暴走族と戦った

神戸バスターズの大槻空だった。


 今日は珍しく赤城が熱心に絵画のキャンパス作りをしていた。


「おい、どうなってるんだ。赤城の奴今日は珍しく働いてるぞ」

「おい、聞こえてるぞ。俺はいつだって真面目に働いてるじゃないか」

「そうだっけ」

「そうだっけじゃねー」


 その時だった赤城の携帯が鳴った。


「もしもし赤城です」

『先輩、ご無沙汰してます。大槻です』

「大槻ってあの六甲バスターズの大槻か」

『はい、そうっす』

「おぉ、久しぶりだな。今何処にいるんだ」

『今大阪まで来てるんですよ』

「大阪の何処だ」

『えーっとですね。176号線の十三じゅうさんってとこです』


「何だ、じゅうさんだ。それは十三じゅうそうって読むんだよ」

『あっ、そうでしたか。今そこの駅を超えて河の土手の所です』

「と言う事は淀川だな」

『そう、そうです。淀川って橋に書いてました』

「よし、わかった。そこで待ってろ。今そっちに行ってやるから」

『いいんですか』

「ああ、大丈夫だ。ちょっと待ってろ」

『了解っす』


「部長、ちょっと野暮用で出かけて来ます」

「おい、赤城」

「部長、あいつもう行っちゃいましたよ」

「本当にあいつはいつも糸の切れた凧みたいな奴だな」

「なっ、言っただろう。あいつが真面目に働くなんておかしいんだよ」


「どうした、鳴海」

「あっ、社長。赤城の奴が飛び出して行きました。どうやら相手は神戸の族のようです」

「あの時の六甲バスターズとか言う暴走族か」

「みたいですね」


「まぁ、あの時は世話になったみたいだからいいんじゃないか」

「ほんと社長は甘いですね。それでよく社員教育が出来るもんです」

「おいおい、それはお前の仕事じゃなかったか」

「そうでしたっけ」

「ったく、ほんとこれで良く持ってるもんだと思うよ。俺も」


 鳴海もそれを承知で今日は赤城を放免した。


 赤城は愛用のバイク、レッドヘルガーにまたがり淀川へと飛び出して行った。


 赤城は淀川の土手で休憩している六甲バスターズを見つけてそこに駆け付けた。数にして20人程だった。六甲バスターズにしては少数だ。本来この六甲バスターズは800人を擁する大暴走族集団なのだ。


「先輩、どうもです」

「おお、お前ら元気だったか」

「オース!」

「今日は何だ。大阪に用事でもあるのか」

「一人退団生がいましてね。今度大阪に引っ越す事になったんでそのお別れも兼ねて送別走行ってやつです」


「それでそいつは?」

「もう家に帰りました。それで折角来たんで先輩の顔が見たくなりまして」

「そうか、よく来てくれた。礼を言う」

「なんです。水臭いですよ。先輩とは戦友じゃないですか」

「そうだったな。確かにあれは戦いだったな。で、その後町はどうだ」


「ええ、お陰様で平和です」

「そうか、それは良かった。それじゃー今から一っ走り行くか。この先の池田と言う所に五月山と言うのがある。そこまで行ってみようぜ。見晴らしがいいはずだ」

「了解です。おい、お前ら行くぞ!」

「おーっ!」


 そう言う事で赤城とバスターズは再会とピクニックを兼ねて池田市にある五月山へと向かった。五月山にはドライブウェイがある。そこから展望台に向かって一走りし、景観を楽しんだ後途中の空き地で休憩をしていた。


 その時だ、爆音と共に数十台のバイクがやって来て赤城達を取り囲んだ。その数は凡そ40台余し。見た所向こうも暴走族のようだった。


「あんたら、俺らに何か用か」

「お前ら何処から来たんや、ここは俺らメイランナーズのホームグランドなんや」

「そうか、別にここを荒らす気はないんだ。ちょっと立ち寄っただけだから用が済んだら直ぐに帰るが、何であんたらそんなに気が立ってるんだ」

「そうか、ビジターやったんか。それは悪かったな。ちょっとこの辺りでもめ事があったんでな、俺らも気が立ってたんや、すまん」


「もめ事って?俺らは神戸の六甲バスターズのもんだけど」

「えっ、あの有名な六甲バスターズですか」

「俺がそこのリーダーやってる大槻だが」

「そうですか、初めまして。俺はここのリーダーやってる矢上信です」

「それでそのもめ事って。良かったら聞かせてくれないか」


 矢上の話によると最近この辺りに正体不明の暴走族が出現しだして、結構荒っぽい事をして住民に迷惑をかけていると言う話だった。


 それでこの辺りを縄張りにし、自警団も自認しているメイランナーズとしては見て見ぬ振りも出来ず、粛清に入ったが思いの他、相手が強くて今は少し押されていると言う話だった。


「で、その暴走族って言うのはどんな奴らなんだ」

「名前は確か『ギルガ』と名乗ってました。たった10名ほどなんですがあいつらおかしいんですよ」

「おかしいとは」

「それがバトルになってこっちがなんぼ攻撃かけてもびくともせんのです。バットで脳天ぶっ飛ばしても平気で立ち上がってくるし、何か気味が悪いんです」


「先輩、それって」

「そうだな。あいつらと似てるな」

「何が似てるんですか」

「俺らもそんな奴らと以前に戦った事があるんだよ。そいつらは麻薬を使ってた」

「麻薬ですか。そこまでは気がつきませんでしたが、言われてみればそうかも知れませんね。なんぼどついてもぜんぜん効いてないみたいで、こいつら神経あるんかって思いましたから」


「あんた、その話もう少し詳しく聞かせてくれないか」

「大槻さん、こちらは」

「俺達の先輩だ。前回はこの人のお陰で勝利出来たんだ」

「そうでしたか、わかりました。詳しい話をします」


 今回もまた麻薬絡みらしい。新手のグループか。その麻薬は前回の麻薬と同じ物なのか。またそのバックには『フォーグル』がいるのか。


 色々な思考が巡る中、赤城は取りあえずの事情を鳴海に話してしばらくこの池田に滞在したいと頼んだ。


 鳴海はそれを了承し、もし必要ならそこにいるバスターズ達の経費も会社で見ると言ってくれた。


 赤城はそれを大槻に伝え、残りたい者は残ってもいいがそれ以外は取りあえず神戸に引き上げてくれと言った。


 残ると言ったのは大槻とその副官二人、高円寺と末森だった。この二人は大槻の副官だけあって肝もすわってるし腕っぷしも強い。


 後の者達は取りあえず神戸に帰った。そこで必要になったら緊急集合もあるから準備だけはしておくようにと大槻が指示した。


 赤城と大槻達は池田のホテルに部屋を取り、そこを基地にして活動する事になった。そして大槻達3人はメイランナーズと一緒になって巡回監視に参加した。


 赤城は独自で調べてみたい事があると言って別行動を取っていた。未成年には未成年の、大人には大人の領域と言うものがある。


 赤城はこの池田の夜の街を歩いていた。夜には昼間では見えないものもある。池田市はそれほど大きな市ではない。人口10万人ほどだ。


 だから繁華街と言っても知れてはいるがそれでも飲食店や飲み屋はそこそこにあった。


 スナックを何軒か回っていると一軒の店で最近暴走族に店を潰された所があると言う話を聞きいた。


 その店の事を少し詳しく聞いて、明日にでもそこに出かけて見ようと思いその店を出た。


そしてしばらく歩いて赤城は立ち止り、こう言った。


「さっきから俺をつけてるようだが何か用かい」

「ほー俺達の尾行に気が付くとは大したものだな」


 そこには二人の男がいた。陰になって顔は良く見えなかったが一人はがっしりしたタイプの男で、もう一人は細身だが痩せていると言う風でもなかった。着やせするタイプなのかも知れないと赤城は思った。少なくとも二人共素人ではなさそうだ。


「あんた達は誰だい」

「あんたは確か天堂商会の赤城さんだよな」

「へー俺の名前を知ってるとは、そっち方面の人ですかね」

「それはどうでもいい事だ。今回の件から手を引け」

「手を引けですか。まだ何も始まってはいないと思うんですがね」

「だから始まる前に手を引けと言っている」

「嫌だと言ったら」

「仕方がないな。こうなる」


 そう言ったかと思うとがっしりした方の男がリードフックを飛ばして来た。身長は赤城には少し足りないがそれでも185センチはあるだろう。


 しかもそのフックは強烈なフックではあったが、それが外れても構わないと言う様な余裕のあるフックだった。


 赤城はそれを難なくかわしたがその後、強烈な直突きと蹴り上げが襲って来た。しかも鋭い踏み込みと共に。


 普通のものならそれで完全に意識を飛ばされているだろう。いや肋骨の数本と顎の骨は折れていたはずだ。それほど素早く強烈な攻撃だった。


 しかし赤城はそれを右手で払い受けて蹴りを十字受で受け止めてそのまま順足で蹴り返した。それがその男の腹に当たり数メートル後ろに弾き飛ばした。


「おいおい、まじかよ。こいつの攻撃を防ぐどころか反撃して見せるとはな。初めて見たぜ、お前のような男は」

「そうかい、それはどうも」


 しかし相手も並みの男ではなかった。すぐさま立ち上がり更なる攻撃を仕掛けて来た。突き、蹴り、膝、肘が飛び交っていた。それでも赤城を捉える事は出来なかった。


 もう一人の男、重野が驚くのも無理はない。さっきの男は高坂と言いい、元陸自の特殊レインジャー部隊にいた男だ。


 特殊レインジャー部隊と言うのは精鋭と言われるレインジャー部隊の中から更に選び抜かれた特殊工作員だった。


 全ての武器や情報戦に長け、格闘技一つとっても最高峰のものを持っていた。その彼を持ってして倒せない男など初めての事だった。


 流石の高坂も驚きの色と共に少し焦りが見えていた。おそらく高坂にしても始めての経験だろう。


 その時赤城の肩に血しぶきが上がった。音は何も聞こえなかったが重野の手には消音銃が握られていた。


「そう言う事だ赤城さんよ。手を引いてもらおうか。ここから先は素人の出る幕じゃないんだよ」

「なるほど銃も使えると言う事か。大したもんだな。しかし法規に触れるんじゃないのか」

「さー何の事だかな。わかったら明日引き上げるんだな」

「まぁ、検討させてもらうよ。それじゃーな」


 赤城はそのまま後ろを振り返りもせずに引き上げて行った。これ以上の攻撃はないとまるで見切っているように。


「見ましたか重野さん。今の男」

「ああ、俺は確かに肩を撃ち抜いたはずだ。しかしあの男、眉毛一つ動かさなかったな。バケモノかあいつは」

「まさかあいつも例の薬を」

「それは違うな。もしあれをやっていればあそこまで正気を保てるはずがない。奴は全くの正気だった」

「では奴は一体何なんです」

「サヤが落とせなかっただけの男ではあると言う事か。楽しみだな」


 そこから少し離れた所で赤城は撃たれた肩をみて、

「このジャケットは俺の好みのジャケットだったのにな、穴なんか開けやがって今度修理費を請求してやろうかな」


 しかし肝心の怪我に関しては全くの無頓着だった。それどころか肩に龍気を集中させて怪我を修復してしまった。もう血も出てはいないし皮膚も元の状態に戻っていた。まさにバケモノだ。


 ある部屋でこんなやり取りがなされていた。


「局長、あの男やはりただ者ではありませんね」

「そうか。サヤが言うだけの事はあると言う事か」

「そうです。ただ気になる事が」

「何だね」


「あの男だけなのかと言う事です」

「それは天堂組のメンバーは言う事かね」

「そううです」

「そうだな。それは検討してみる必要はあるな。鳴海とか言う者の尾行も完全に巻かれてしまったからな」

「ええ」

「わかった手配しよう」

応援していただくと励みになります。

よろしくお願いいたします。

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