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天堂が行く  作者: 薔薇クーダ
第五部
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第五話 豊中のトラブル

天堂は豊中と言う所に来ていた。

そこで二つの組の抗争にであった。

さてどうするか、天堂は考えていた。

天堂が行く:第五部

第五話:豊中のトラブル


 今日天堂は大阪の梅田駅から阪急電鉄の宝塚線に乗って豊中に向っていた。


 豊中の一駅先には蛍池と言う駅がありそこからは大阪空港に行くモノレールが出ている。正式には大阪空港だが地元の人達は伊丹市にあるので伊丹空港と呼ぶ。


 その豊中で降りると進行方向に向って右側に鉄道と並行して国道176号線が走っている。

 

 駅からは歩道橋で向こう側に渡れるようになっている。賑やかな方と言えばこちらの方だろう。そしてここの北東部は高級住宅地としても有名な所だ。


 駅前から少し奥まった所に八野井組と言う組事務所がある。


 そして駅を挟んで反対側に山河会系の峰越組と言う組事務所があり、この二つの組が今シマを巡ってトラブってると言う話だった。


 八野井組と言うのは地元のやくざだ。特に何処かの系列に属している訳ではなかった。


 言ってみれば天堂の様に一本どっこでやっていた。組員は30名ほどのさほど大きな組ではない。と言っても天堂の所の3倍にはなるが。


 片や峰越組と言うのは新興の組で最近ここに事務所を構えた山河会系の組だった。


 組員は20名。大した数ではない。まともに喧嘩をすれば八野井組が勝つだろう。


 しかしそれで終わればいいのだがその峰越組のバックには山河会系耶蘇組がついていた。山河会の中でも武闘派の一つだ。


 だからもし峰越組と戦争になれば耶蘇組が出てくる。だから八野井組としても迂闊に手を出す訳にはいかなかった。


 それを承知で峰越組は結構露骨なやり方で八野井組のシマを荒らしていた。


 天堂はその駅前の歩道橋の上に立って四方に気のセンサーを張ってみた。天堂はそのセンサーで黒い意識の気を探していた。

 

 黒い意識の気とは暴力的な意識の事だ。概ねそう言うのはやくざやぐれん隊、犯罪者等に当てはまる。


 そして駅の北側にポツリポツリと黒い気を見つけた。


『あそこか。では行ってみるか』


 天堂に取っては大阪の事などどうでもいいと思っていたのだが一応念の為に調べにやって来た。


 山王会と言えば以前に京都の吉岡の所に触手を伸ばした事があったので、ここでの状況を知っておくのもまた一興かと考えていた。


 そして天堂は一つの喫茶店に入った。その店の奥には二人のやくざ達がいた。


 そしてあと四つの黒い気がこの喫茶店に向っている事も天堂には把握していた。当然ここで何かが起こる。天堂はそう読んでここに来たのだ。


 コーヒーを飲みながら様子を見ているとその四人達もこの喫茶店に入って来た。


 そして一つ離れたテーブルに着き八野井組をからかい始めた。臆病もんのクズみたいな組だとかなんだとか。


 勿論それで喧嘩を吹っかけているのだが、八野井組の若い衆は組長から絶対に手を出してはいかんと強く言われていたので我慢していた。


 しかしその四人の内の一人が近づいて来てコップの水を一人の八野井組の若い衆の顔にかけたので、流石に我慢の限界に来たのか、一人が立ち上がって喧嘩をしそうになったがもう一人が必死になって押さえていた。


 その時天堂が、

「ここでは店に迷惑がかかるだろう。表でやったらどうだ。最近のやくざはそんな事もわからんのか」

「何やとど素人が、怪我せん内に引っ込んどらんかい」


「くだらんな、弱い奴ほどよく吠えると言うが」

「何やと、お前わしらに喧嘩売っとるんか」

「だから表に出ろと言ってるだろうが」

「ええやろう、出たろうやないか」


 天堂は八野井組の若い衆に2万円を渡して、ここの勘定を払っておけと言った。


 天堂は先頭に立って店の表から少し離れた路地に入って行った。ここなら迷惑もかからないし邪魔する者もいない。


「さて、やるか」と思った時には向こうの二人がいきなり襲い掛かって来ていた。勿論それも想定済みだった。


 まるで後ろに目がある様に、後ろから来た二人の間を難なくすり抜けて二人の後ろを取った。


「えっ!」と思って二人が振り返った時、一人は横っ面に強烈なビンタを食らった。それだけで横の壁まで吹っ飛ばされて壁に激突しもう起きては来なかった。


 もう一人は天堂を殴ろうと右のパンチを振り出そうとした。ただしそれは素人同然のテレホンパンチだった。


 テレホンパンチと言うのは構えた状態から拳を耳の辺りまで引いてから出すストレートパンチのことだ。


 その恰好がまるで電話をかけてるポーズになっていることからテレフォンパンチと呼ばれている。


 要するに今から打ちますよと教えているようなパンチの事だ。

 

 その状態に入った時に天堂は手掌で相手の顎を突き上げた。すると空中で一回転して背中から地面に落ちた。勿論即気絶だ。


 そして残り二人に向き直った。勿論今度は相手に後ろを取らせる様な事はしなかった。仮に後ろを取った所で彼らには何も出来なかっただろうが。


 その間1秒もかかってはいなかった。あまりの展開の速さに残った二人は唖然としてた。


「どうした。今度はお前達の番だ。何かするんじゃないのか」

「く、くそがー」


 そう言って二人は上着の内側からヤッパを抜き出した。


「それでこそやくざらしい格好だ」

「死ねやー」


 そう言って一人がヤッパの刃を上に向けて突っ込んで来た。それをぎりぎりで外にかわした天堂は前回と同じように掌を相手の顎にあてがったが今度は上には跳ね上げなかった。


 少し相手の体を浮かしてそのまま地面に叩きつけた。「ゴキッ」と言う音がした。死ななければいいがと言う様な音だった。


「残ったのはお前一人だ。まだやるか。それともこいつらを連れて帰るか。病院に連れて行ってやった方がいい奴がいるかもしれんぞ」


 そう言って天堂は相手の返事も聞かずにその場を去った。


 一人残ったやくざも正直な所足に震えが来て動けなった。こんな奴でも自分達のやってる喧嘩のレベルではないと言う事くらいはわかったようだ。


 天堂が路地の角に差し掛かるとそこで様子を見ていた八野井組の若い衆が、

「これ、さっきあの店で出したあんたの金や」


 そう言って2万円をそのまま返して来た。天堂が不思議そうな顔をしてると


「あんたにはわしらの代わりに喧嘩してもろたんや、そやからこの金はもらう訳にはいかんのや。しかしあんたほんまにすごいな。あんな喧嘩初めて見たで」

「お前ら、やくざとしては情けないが良い判断だ」

「な、なんやと」

「だから上出来だと褒めてやってるんだよ」

「どう言う意味や」


「ここで事を大げさにしたら耶蘇組が出てくるのは目に見えているからな」

「なんやあんた、素人やないんか。わしらと同業か」

「組長に会わせてもらえるかい」


 そう言う事で天堂は八野井組の組長、八野井に会っていた。


「うちの若いもんを助けてくれたそうやな、礼を言わせてもらうで」

「別に俺は助けたつもりはないですよ。喧嘩は俺が勝手に買ったんですから」


「そうかも知れんがな、結果的には助けてもろた事になる。あいつらには何があっても事を起こすなと言うてたからな」

「やっぱり耶蘇組が怖いからですか」

「何やと、われ何ぬかしとるんじゃ」

と若い衆が吠えた。


「まぁええ。怖くないと言うたら嘘になるやろうな。何しろ相手は600人の組員を持つ武闘派や。こっちの20倍やからな。それにここで何かあったら堅気の衆に迷惑がかかる」

「で、これからどうするんですか」

「さーどうするかな。ところであんたは一体何者や。堅気ではないんやろう」


「申し遅れました。俺は大阪で天堂商会と言うのをやってる天堂と言う者です」

「天堂商会?組関係では聞いた事のない名前やな。ほな堅気さんかいな」

「一応古美術を扱ってます」


「古美術な、骨董品とかもかいな」

「ええ、それも扱います」

「それにしては喧嘩が強いんやな」


「昔ちょっと古武術をかじった事があるので」

「そうかいな。それは助かったわ。そやけどあんた、早うこの辺りから姿消した方がええで。あいつらしつこいよってな」


「ええ、わかってます。一応仕事は片付きましたので」

「そうか、ほな早よし」

「ご忠告ありがとうございます」


 そう言って天堂は八野井組の事務所を出た。


『なるほど、全くの腰抜けではないようだな。それなりに肝は据わってるようだ。堅気衆への気遣いか。そこそこには出来た良い組長じゃないか』


 こちら八野井組でも八野井が少し首を傾げていた。


「おい、早田。ちょっとその天堂商会と言うのを洗うてみい」

「また何でですか」

「堅気にしては肝が据わり過ぎてるやろう。曲がりにもここは組事務所や。ただの堅気があれだけ平然としてられると思うか」

「そうですな、わかりました。調べてみます」


 それから何日かして八野井組の事務所で報告がなされていた。


「わかったか」

「はい、わかりました。やっぱりあの天堂と言うのはやくざでしたわ」

「やくざか、そうか」


「ええ、以前は天堂組言うたそうで、組員8人のものすごう小さい組です。そやけどおかしいんですわ。シマ内でやくざらしい事は何もしとらんようで、店からのミカジメも取ってない言う話でした」

「何やと、それでどうやってシノギやっていけるんや」


「やっぱりあいつが言うてた様に古美術やらの商売でシノギやってるみたいですわ」

「それやったらもう堅気とおんなじやないか」

「そうなんです」


「で、あいつのシマは何処や」

「それが、どえらいとこで、大阪の新地なんですわ」

「何やと、大阪の一等地やないか。そんなもんが何で8人足らずで守れるんや。バックにどっかついとるんか」

「いいえ、それが一本どっこ言う話ですわ」

「信じられんな。天堂か、おもろい男かも知れんな」


 その頃天堂はあの峰越組をどうしようかと考えていた。


「社長、どうかしたんですか」

「ああ、鳴海か。実はな峰越組の事だが、どうしようかなと思ってさ」

「例の豊中にある神戸の傀儡の組ですか」

「そうだ」

「社長はもう喧嘩してきたんでしょう」

「まぁ、そうだが」


「なら簡単じゃないですか。このまま潰してしまえばいいんじゃないですか」

「お前は相変わらず簡単に言うね」

「あっても邪魔でしょう」

「まぁ、そうだな」

「それじゃー柴村送っておきますから」

「柴村か。そうだな、あいつならいいか」


 翌日峰越組は仮面の男に襲撃されて全員が半死半生になったと言う報告が神戸に届けられた。しかし誰がやったのかは全く詳細が掴めなかった。


 この報告は八野井組にも届けられた。一時は八野井組もざわっとしたが、自分達が手を下した訳ではないので、いくら耶蘇組でも喧嘩の義が見つけられなければ喧嘩も出来ないだろうと八野井は胸を撫でおろしていた。


『これで堅気さんを巻き込まずにすんだ。そやけど一体誰がやったんや。・・・まさかな』

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