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ライラと『私』の物語【最終部開幕】  作者: GiGi
最終部 第五章
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決戦[development] 08 —最終フェーズ—









「……同時攻撃、成功。莉奈、飛んでくれ」


 高台の上にいるグリムは、女神像の胸にある『赤い宝石』を見据えながら隣に立つ莉奈に告げた。


 意識を飛ばして各戦場の様子を見ていた莉奈は、やり切れない表情を浮かべながらも頷き、グリムを抱えて跳躍した——。





 次の瞬間にはもう、莉奈とグリムは『赤い宝石』の目前に現れていた。


 時間との勝負だ。グリムは『支配の杖』を握りしめて、即座にその力を解放する。


「……頼んだぞ、『支配の杖』……私を……この『赤い宝石』の中に!」



 ——『支配の杖』。使用者の肉体と引き換えに、相手の身体を乗っ取ることができる魔道具。


 だが、対象となるドメーニカとファウスティの肉体はすでに失われている。しかし、もし、今、『赤い宝石』そのものが彼らの器だとしたら?——



 その代償の大きさから、端末を増やせるグリムが『支配の杖』の行使役を買って出た。


 そして——誠司とライラの時のような現象が起こるのであれば、今回もエリスが先んじて『赤い宝石』内に『空間』を構築しているので、この杖の管理者、アカシアが管理する『魂』の空間にグリムの魂は出るはずだ。


 首尾よくことが運び、もしあの時と同じ現象が再現できるのであれば——



 ——それは、外部からの干渉も可能になることを意味する。そう、あの時ヘザーのバッグを通じて誠司自身やカルデネが『空間』に入れたように。



 グリムの身体から、力が抜ける。莉奈は感じる。離れた戦場で、風に切り刻まれながら再生を始めている『砂の天使像』の視線がこちらに向くのが。


 莉奈は急ぎ、エリスたちの元へと『空間跳躍』した——。








「どう、グリム。成功した!?」


 『影』の天使像との戦いがあった場所へと跳躍した莉奈は、抱えているグリムを地面に下ろしてその場に待機している別のグリムの端末に問いかける。


 そのグリムは神妙な顔つきで莉奈に答えた。


「……わからない、な。肉体が失われたせいか、それとも特殊な空間のせいか、接続が中断されてしまった。だが、確かに『支配の杖』の効力は発揮された」


 グリムは腕を斬り落として、更なる端末を作り上げる。その様子を眺めながらジョヴェディが鼻を鳴らした。


「……フン。なら当初の予定通り、ワシの分身体が様子を見に行ってやるわい」


「ああ、私も行く。エリス、ゲートを」


「うん、わかった」


 エリスは、構築しておいたゲートに手をかけた。万一に備え、フリーパスではなくエリスにしか開けないゲートだ。


 そしてそれは、『赤い宝石』内に作り上げた『空間』へと直結している。


 ジョヴェディの本体は、沈黙した。彼は今、『時止め』で四体の分身体を動かしている。彼が同時に動かせるのは、自身を含めて五体まで。やがて沈黙した彼の代わりに、地中からジョヴェディの分身体が現れた。


「よし、準備完了じゃ。エリス、開いてくれ」


「気をつけてね、ジョヴ爺、グリム」


 エリスはゲートをわずかに開く。その隙間を縫って入っていくジョヴェディとグリムの端末。


 ここから先の結果は未知数だ。最良の結果なら戦いを終わらせることも可能だが、最悪、『大厄災』を誘発してしまう可能性すらある。


 沈黙の時間が流れる。


 だがしばらくして、グリムが口を開いた。


「……とりあえずは大丈夫そうだ。カルデネ、入ってきてくれ」


「わかりました」


 毅然と答えて空間へと向かうカルデネの背に、莉奈が声をかけた。


「……カルデネ……絶対に無事で戻ってきてね……」


「ふふ。私が空間から弾き出されたら、リナ、よろしくね?」


 空間は『赤い宝石』の座標にある。そこから弾き出されるということは、遥か上空に放り出されるということだ。


 はにかむ笑顔を莉奈に返したカルデネは、空間の前に立った。エリスがゲートに手をかける。


「では、行ってまいります」


 カルデネは一歩、踏み出した。グリムが全員に通信を飛ばす。



「——これより『オペレーション・F』……[フェアウェル、ハロー]の最終フェーズを開始する! 成功を祈ってくれ——」








 ——『土』の戦場。



 天使像のいた場所に、青い炎塊となって降り注いだヴァナルガンド。


 砂塵が舞う。マルテディが腕を払うと、その砂塵は瞬く間に消え去った。


「……やった……のか?」


 ノクスが抱えていたライラを下ろす。その先、天使像がいた場所には——ところどころが腐敗している身体を、地に横たわらせているヴァナルガンドの姿があった。


「ヴァナさん!」


「おい、ライラちゃん、待て!」


 ライラが駆け出していった。ヴァナルガンドに新たな腐敗の兆候は見られず、全てを飲み込まんとしていた土も元の落ち着きを取り戻していた。


 ノクスは息を吐き、頭を掻いた。


「……ったく。ボッズの野郎……だが、お前さんのおかげで——」


「……まだっす!!」


 ジュリアマリアの叫び声が、響いた。その彼女の言葉に、ノクスとマルテディの全身が総毛立つ。


 彼女の『嫌な予感』——まだ、終わっていないというのか。


「——ライラさん!」


 マルテディは石英の道を解除せず、新たな脅威に警戒する。


 しかし、ライラはもうヴァナルガンドの近くまで来ていた。少女が剥き出しの地面の上を駆けている時——



「……えっ?」



 ——ライラの足を、地面から生えてきた『土』の手が掴み取った。







明日(11/30)、本作のプロローグを追加いたします。


そして明後日(12/1)より完結まで毎日投稿いたします。よろしくお願いします。


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ギャー、ライラが!
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