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ライラと『私』の物語【最終部開幕】  作者: GiGi
最終部 第五章
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決戦[development] 07 —同時攻撃—








『——グリム、準備できたよ』



 エリスからの通信が入る。グリムは端末を増やしながら、彼女に応答した。


「——それでは私たちも動く。エリスは私からの合図がありしだい、ゲートを開いてくれ」



 ——『オペレーション・F』。結果は未知数の、危険だけがつきまとう作戦。


 エリスとカルデネは今、ジョヴェディに抱えられて『影の天使像』との戦いがあった場所の近くへと移動し、待機している。


 グリムはカルデネから預かった『支配の杖』を握り、莉奈と目を合わせて頷き合った。



「——それでは全員に通達する。これより私たちは『オペレーション・F』の第二フェーズを開始する。攻撃を、合わせてくれ」







「——電光石火」



 ポラナの俊撃が、また一体の『砂の天使像』を斬り裂いた。


 崩れ落ちる天使像。だが別の天使像が、サンドブラストを解き放つ。


「……うっ!」


 必死に避けかわすポラナ。しかし、サンドブラストの余波が彼女を打ちつけた。



 ——『ポラナ。まずあなたは、感情をコントロールできるようになりなさい。感情は視野を狭めます。常に、冷静でいることが大事ですよ』——



 師、ダイズの言葉を思い出す。怒りは感じている。焦りは無理して抑えつけている。


 先ほどから致命傷は避けているものの、今やポラナは血まみれの状態だ。


 だが——彼女は冷静に、相手の攻撃を見極める。


「——こちらポラナ。グリム。サンドブラストの中に、石の破片が混ざってきた。殺傷能力、増大」


 戦場を駆け抜けながら、ポラナは通信を入れる。


 そう。『砂の天使像』は、サンドブラストの中に『石の破片』を混ぜ始めていた。


「ポラナ、下がって!」


 セレスの掛け声と共に、天使像の一体が彼女の銃弾により弾け飛ぶ。横には、メルコレディの攻撃で天使像二体が氷漬けになっていた。


 しかし、深追いは禁物だ。今は、『オペレーション・F』のために攻撃を合わせないと。


 天使像をある程度引きつけたポラナは、氷の道を駆け抜け退避した。それを見たセレスは、言の葉を解き放った。



「——『渦巻く颶風ぐふうの魔法』!」







 氷の戦場では、フィアが傷つきながらも『氷の天使像』の攻撃をブレスで防ぎ続けていた。


 その背後に座るハウメアは、『護りの魔法』でフィアをサポートする。


 しかし、微笑みを浮かべながら距離を詰めてくる天使像。意識が朦朧とする。少しでも気を抜いたら倒れてしまいそうだ。


 だがフィアは、己を奮い立たせ背後の人の子たちを守り切ろうとする。


 その時だ。



 ——トスッ



 天使像のこめかみを、一本の矢が突き抜けた。攻撃を中断し、天使像は矢の放たれた方向に氷の障壁を張った。


 それと同時に、フィアはよろめき地面に座り込んだ。再び天使像はこちらを向くが——



「……頭は回らないけどね、これなら少しくらいは、相手をしてやれそうだ」



 ——天使像から距離を置いて、ハウメアの『分身体』が現れた。


 分身体は、言の葉を紡ぎ始める。天使像は分身体に迫ってくるが——



「遅い」



 ——概念的存在である『分身体』なら、時止めの雪の上でも自由に動ける。


 そして、天使像の攻撃よりも速く言の葉は紡がれた。



「——『闇深き鋭刃の魔法』」







 ボッズたちは『石英クォーツ』の道を駆けていた。


「——『毒を無くす魔法』」


 ライラの解毒・対毒魔法が矢継ぎ早に紡がれていく。


 獣のように駆けていたボッズは立ち止まり、体勢を低くして力を溜め始めた。


 天使像は土砂を巻き上げ、飲み込もうとする。


 しかし、地中からクリスタル状の石英の柱が次々と生えてきて、道に壁を作り上げた。


「うおおらああぁぁっっ!」


 ノクスの大剣の一振りが、防御しようと作り出された天使像の土の障壁を打ち砕いた。


「さあ、大盤振る舞いっすよ!」


 ジュリアマリアは接近し、天使像に攻撃魔法の込められた魔道具を次々と投げつける。


 怯む天使像。天使像はよろめきながらも直接、腐敗の土を発射するが——



「——『毒を無くす魔法』」



 ——その土の腐敗効果は、見事にライラが打ち消していた。


「フン!」


 力を溜め終えたボッズが、残された三肢を使って跳躍する。


 体毛の上からでも分かるほどの膨れ上がった肉体、浮き上がる血管。


 重力を乗せ、真っ直ぐ振り下ろされた彼の断頭の斧は——



『…………ゥウ…………ァ…………ァァ…………』



 ——見事、天使像を両断した。


 すぐに再生を始めようとする天使像。しかし、ボッズは——



 ——両断した天使像の間に、身体を滑り込ませた。



「……ちょ、何やってんすか……このクソ狼!」


 ジュリアマリアが、悲痛な叫び声を上げる。


 天使像はボッズの身体のせいで、上手く再生できない。


 だが、代償に——彼の身体は圧迫され、ひしゃぎ始めていた。


 ボッズは、声の限り叫んだ。


「……さあ、始祖よ! あなたの攻撃で、天使像にとどめをっ!」


 直接天使像に触れたせいか、ボッズの身体は急速に腐り落ちていっていた。


 それを天から見下ろすヴァナルガンドは——目を閉じた。



「……お前は、我らの誇りだボッズ。我はうぬの名を、永遠に魂に刻み込むと誓おう」



 ——遠吠えが、響き渡る。ボッズの身体は、もはや原型をとどめていないほど潰されており——



「……終わりだ」



 ヴァナルガンド自身が、火の玉になって降り注ぐ。


 天使像は腕を上げようともがくが——ボッズは最期の力を振り絞って、天使像の首を噛みちぎった。


「…………ボッズーー!!」


 ノクスがライラを抱え上げ、退避する。ジュリアマリアが背を向け駆け出していく。



 直後、青炎をまとった神狼は、天使像を直撃した——。







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― 新着の感想 ―
土倒せたかな?あと2体… フィアとハウメアの死にそうな感じがヤバい
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