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ライラと『私』の物語【最終部開幕】  作者: GiGi
第八部 エピローグ
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エピローグ









「——……そういうわけじゃ。リョウカはのう、彼奴を連れ去って、星の終わりへと旅立ったんじゃ」


 皆は円になって座り、ジョヴェディの話に聞き入っていた。揺らめく焚き火が皆を照らし出す中、辺りが薄暗くなるまで彼の話は続いていた。


 ジョヴェディの語った、リョウカの長い長い『運命』との戦い。


 それを神妙な様子で聞いていた皆は、その壮絶な人生に言葉を発せないでいた。


「……ワシも全てを聞かされたのは、昨晩のことじゃ。彼奴は一人で抱え込んどってのう。のう、青髪。アルフレードの言っとった通り、『役目を終えた時』、概念的存在は消えるんじゃろう?」


「……ああ、そう言っていた。星の終わり、か……。確かにそこでなら、『最後の厄災』は破壊という目的を失い、消滅するだろうね」


 沈黙の中、ポツリポツリと会話が交わされる。ところどころから、鼻を啜る音が聞こえてくる。



 その話を聞きながら、ライラはうつむいていた。


 あの『赤い世界』で拒絶してしまった莉奈。もしかしたら謝れたのかもしれないのに——その彼女は、ライラを置いて、旅立ってしまった。


 そのように目を伏せるライラを見て、ジョヴェディは立ち上がった。


「して、ライラよ。リョウカからの預かりものじゃ」


「……私、に……?」


 ライラは力なく立ち上がり、ジョヴェディの元へと向かった。ジョヴェディは懐から一冊の古ぼけたメモ帳を取り出し、ライラに手渡した。


「ライラに返しといて、と言うとったぞい」


「………………!!」



 ——リナ、嫌い!——



 それは、あの日莉奈に投げつけてしまったライラのメモ帳。


 そのメモ帳には、莉奈の文字で『ライラ、ごめんね』と記されていた。


 ライラの瞳から涙が溢れ出す。そんなライラに、ジョヴェディは優しく語りかけた。


「ライラよ。めくってみい」



 言われるがまま、ライラはメモ帳をめくった。


 そこには——



 古ぼけて掠れてしまっている、ライラの筆跡で書かれた、莉奈との思い出『リナはーれむ』の文字。


 そしてそこには、あの素晴らしい日々を送る中でライラと莉奈が旅先で出会った、全ての人たちの名前が記されていた——。



「……リョウカはのう、時折りそれを見て、寂しそうに微笑んでおったぞい。『私の宝物だ』と、彼奴は言うとった」


「…………リナ!!」


 メモ帳を抱え込んで、ライラはたまらず莉奈の胸に飛び込んだ。


 困惑した莉奈だったが——彼女は優しくライラを受け止めた。


「……リナ、ごめんなさい、ごめんなさあいっ!!」


「……大丈夫だよ、ライラ。怒ってないよ、リョウカは、きっと。ライラが笑っているのが、私たちの一番の幸せなんだ」


 莉奈は優しく、ライラの背中を撫で続けた。その様子を目を細めながら見守ったジョヴェディは、改めて皆に向き直った。


「さて、ここからが本題じゃ。恐らく未曾有の『大厄災』が、のちに現れる」


 その言葉を受け、誠司が呻く。


「……ドメーニカの『発芽』……か。ジョヴェディ、千年前の『滅びの女神』は、本当に現れるのか?」


「ワシにはわからん。そこでじゃ、青髪。本来ならリョウカがお主に直接手渡したかったと言うとった、未来のお主からの、預かりものじゃ」


「……私が、私にか?」


 ジョヴェディはグリムの元にいき、分厚いメモ帳を手渡す。


「ワシには何が書いてあるのかサッパリわからんかったが、ここには『全て』が記されていると言っとったぞい」


「……これは!」


 グリムの顔つきが変わった。そのメモ帳には、元の世界のアルファベットや数字、記号が全ページに渡りびっしりと書き込まれていた。


 横から覗き込んだ誠司が、不思議そうな顔をする。


「なんだね、これは。意味のない文字列に見えるが……」


 グリムは大きく目を開きながら、ページをめくる手を止めずに答えた。


「……誠司……これは『データパッケージ』だ。書かれているのはBase64……ペイロードと言ってだな……」


「……どういうことかね?」


「……つまり……」


 やがて最後のページを読み終えたグリムは、メモ帳を掲げた。



「ここには、『赤い世界』で五年のうちに私が観測した『全て』が記されている。『滅びの女神』も『天使像』も、そしてそこで何が起き、どうなったのかも、文字通り、全てがだ」



 グリムは皆を見渡し、真剣な表情で告げる。



「そして、今、全てのデータは、私に『引き継がれた』。皆、リョウカの想い……絶対に、無駄にしないぞ——」




 来たるべき最終決戦。グリムは瞬き始めた星を見据え、心に誓った。



(……リョウカ……キミと話したかったよ。キミの遺志は、私が、必ず……)





 ——最後の戦いを控え、果たして『運命』はどのような色を見せるのか——



 ——それはまだ、誰にも分からない——。






お読みいただきありがとうございます。


これにて第八部完。明後日(9/5)より隔日で、

「ライラと『私』の物語 最終部」の投稿を開始いたします。


活動報告に「第八部のあとがき的な何か」をアップいたしますので、お時間のある方は是非。


いよいよ最終部、最後までお付き合いいただけると幸いです。よろしくお願いします。


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― 新着の感想 ―
お疲れ様です いよいよ最終九部ですね 果たしてどんな結末になるのか……(割烹チラ見)賛否ある展開…? これは単純なハッピーエンドにはならなさそうですね 楽しみにしております
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