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ライラと『私』の物語  作者: GiGi
第八部 第三章
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対『最後の厄災』攻略戦 03 —惹かれる者たち—





「ルネディ、来てくれたんだね!」


 会議も終わりを迎え、私はルネディとメルの元へと向かう。メルは来るっていう話だったけど、ルネディまで来るとは思わなかった。


「ふふ。ご機嫌よう、リナ。ええ、メルが頑張るんですもの。私も参加させてもらうわ」


 そう答え、私に微笑みかけるルネディ。最後に見た時はマルティの服の中に収まるくらいの大きさだったけど、今の彼女は私の胸の高さくらいまで再生を終えていた。


「最後に会ったの、ひと月半くらい前だっけ? 随分大きくなったねー」


「あら。胸の話かしら?」


「おい。てめぇ、おもて出ろ」


「リナちゃん、落ち着いて!」


 やんややんやと再会の挨拶を交わしながら、近くの席に座る私たち。見ると周りの人たちも思い思いに話を始めていた。私はルネディたちに向き直る。


「それで、ルネディ。明日の月齢ってどんなもんだっけ?」


「明日は三日月ね。大した役には立てないと思うけど、一応予定の時間には力が使えるわ。私の『影』が通用するといいのだけれどね」


 ルネディの影を操る能力は、月の出ている時間にしか使えない。でも明日は三日月。満月時ほどの力は発揮できないが、月が空を運行している日中ほとんどの時間は力が使えるというわけだ。


「頼りにしてるよ。あと、メル。大変な役目だけど大丈夫?」


「うん! 力は元に戻ってるし、わたし、頑張るよ!」


 私の腰丈ちょっとの高さまで再生を終えているメルは、元気にうなずいた。先の『魔女狩り』での彼女の活躍を聞く限り、力に関しては大丈夫なのだろう。


 そして、何より——。


「ねえ、ルネディ。聞いたかな、あなた達を復活させた人の話……」


「……ええ、ケイジョウという人だったかしら。私としては彼に感謝をしなくてはならないわね。メルやマルティの人生を、取り戻してくれたことに」


「……うん、わたしも。ケイジョウちゃんのおかげで、わたしはルネディやマルティと会えたから……」


「……そうなんだよねえ。何より、操られてるって心配はもうしなくていいんだよねー……」


 そうなのだ。結局、メルが『操られている』疑惑も、彗丈さんが『人形を本物にする前』の行動だと判明した。人形の時点では記憶がないのは当たり前だ。彼女たちはこれから何の憂いもなく、過ごすことができるだろう。


 ——そう、ここを乗り越えさえすれば。


「それより、リナ。あなたこそどうなの? 物理攻撃の人員は足りているのでしょう? 攻撃が効けば、の話だけれど」


「……まあ、ね。でも放っておけないし。それにグリムが、私の存在は必要だって」


「ふうん——」


 そう言いながら、ルネディは辺りを見渡した。その視線の先には——跪いている氷竜娘たちと、その彼女たちに何やらレクチャーしているレザリアの姿があった。


「——ま、わからなくもないわ。あなたがいれば人が集まる。さすがは『厄災をも従える英雄、白い燕』ね」


「……あの、あなたがそれ言う?」


 私は軽くテーブルに崩れ落ちながらルネディを睨んだ。そもそもその話の発端は、あなたが『私にコテンパンにやられた』とか民衆に吹聴するから——。


 クスッと笑うルネディ。そして彼女は、扉の方を向いた。


「ほら、あなたに惹かれた者がもう一人きたわよ」


「……え?」


 私は上体を起こし、扉の方を向く。


 そこには、私にとっての諸悪の根源が息を切らして立っていた——。


「遅くなりました! 伝説、伝説はどこですか!? この『歌姫』クラリス、例え業火の中だろうとお供しますともっ!」







「はうあぁっ、『白い燕』さん! まだ次の曲を書き上げていないというのに、あなたはどこまで伝説を作り続けるのですかっ! 供給過多です!」


 私の姿を見つけるやいなや、そう言ってすり寄ってくる『歌姫』クラリス。吟遊詩人だ。


 彼女は私の活躍を盛りに盛って『白い燕の叙事詩』を世界中にばら撒いている、とんでもねえ人である。


「……あはは。あのね、クラリス。落ち着いて考えよ? 私最近、大した活躍してないよ?」


「何を言っているんです!」


 ピシャリ。クラリスは私の言葉を遮って、うっとりとした表情を浮かべた。


「第六番『白き光と黄昏の魔術師』編、第七番『白き光と眠れる氷の女王竜』編が完成したばかりだというのに、第八番『白き光が秋空に輝く(仮)』編、そして今回の第九番『(タイトル未定)』編を作ろうとするだなんて……いったいあなたは何番まで作るおつもりですか……」


「……いや。あなたが作ろうとしなければ……って、待って、第八番ってヘクトールの時の?」


「はい」


 クラリスの返事を受け、私はグリムを探す。そうだ、あの時一部始終を見ていて、さらにクラリスに伝えられるのなんて一人しかいない。


「グリム!」


 私が彼女の名前を呼ぶと、彼女は指をパチンと鳴らして光の粒子となって消えやがった。私は全方位に意識を飛ばす。


「——……見つけたぞ……」


 私の意識に引っかかった別の端末のグリムに向け、私は声を飛ばした。ビクッとなるグリム。彼女はこの部屋の外、階段付近に待機していた。



「ちょっと失礼」



 私は『空間跳躍』でグリムの元へと一瞬にして飛ぶ。冷や汗を流すグリムの首を、私は後ろから締め上げた。


「ねえ、グリムぅ……どういうことかなぁ……?」


「……フフ……フハハハハ……話題を提供すれば、クラリスは来てくれるからね……」


 コテン。意識を失ったグリムは、光の粒子となって消え去った。まだだ、まだ彼女の端末は至るところに潜んでいるはずだ——。


「——いいから、大人しくしてなさい!」


 私は私の声を、城中に響き渡らせるのだった——。






 ここは先ほどまで会議が行われていた場所。瞬時に消えた莉奈の姿。突然脳内に響き渡る声——。



 皆が呆気にとられ固まっている中、レザリアが声を上げた。


「どうですか皆さん! これが私の、私のリナの新しい力です! この力があれば『最後の厄災』だろうと、きっとリナが何とかしてくれるはずです!」


「……はわぁ、『白い燕』さん。あなたはどこまで羽ばたいていくのですか……」


 レザリアとクラリス、諸悪の根源二人。その歓喜に満ちた表情を浮かべる二人と先ほどの莉奈の力を目の当たりにした皆は、驚きと感嘆の息を吐くことしかできなかったのだった。




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