表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ライラと『私』の物語【完結】  作者: GiGi
第五部 第四章
300/642

眠れる氷の女王竜 08 —女王の目覚め—






 崖上では、クレーメンスと氷竜が熾烈な争いを繰り広げていた。


「はいあっ!」


 交差し続ける赤と青。この果敢にも突撃し続ける戦士のために、ハウメアは障壁を張り続ける。


「——『護りの魔法』」


 防がれる氷竜の攻撃。その隙にレザリアの矢が、氷竜の翼膜目掛けて放たれる。


 それを宙で回転して払う氷竜。このようにレザリアの矢は防がれてしまってはいるが、牽制の役割は果たせていた。


「ふんっ!」


 その隙にクレーメンスは魔剣を振り、剣に留められている魔法を解き放った。氷竜に襲いかかる火弾。


 氷竜はその火弾を受けながらも、クレーメンスに襲いかかる。


 彼はその攻撃を避けながら、三度みたび『火弾の魔法』を刀身にまとわせる——。




 何度目かになるか分からない障壁を張ったハウメアは息をつき、隣にいるグリムに漏らした。


「何で近接武器を得物にする人って、突撃したがるんだろうねー。おかげで障壁を張るだけで精一杯だ。ところであっちは、大丈夫なのかな?」


「……正直言って、かなりマズい。女王竜が、目覚めてしまった」


「……あちゃー」


 グリムの言葉を聞き、ハウメアは視線を階下に移す。


 ここからだとよく見えないが、それでも皆が動きを止めている様子は窺えた。ていうかリナちゃん、なんで階下に戻ってるの?


 その時だ。宙に浮かぶ氷竜が身をひるがえし、女王竜の元へと飛び去った。


「……リナの元には、行かせません!」


 レザリアが矢を放ちながら、氷竜の後を追い階段を駆け下りて行く。


 クレーメンスも口元に笑みをたたえながら、その後に続いた。ハウメアも階段に足をかける。


「……わたし達も行こう。ねー、グリム、お願いがあるんだけど」


「なんだ?」


 ハウメアは、真面目な顔でグリムを見すえた。


「高いところ怖いから、おんぶして」







 女王竜はその眼を開き、こちらを見ていた。


 莉奈が、ライラが、グリムが固まる。莉奈達の元へと近づこうとしたマルテディは、階段に降り立ち茫然としていた。


 莉奈は小声でグリムにささやく。


(……逃げるしか、ないよね?)


(……ああ。逃してくれたら、の話だが)


 小さく頷いて、ライラの手を握って少しずつ後ずさる莉奈。


 しかし——目の前の女王竜の傍には氷竜が二体。そして、もう一匹の氷竜も背後からこちらに向かってきている。


 圧倒的に不利。何か、何か手は——。


 莉奈が必死に考える、その時。女王竜の口が開いた。


(……ブレスが、来る!)


 莉奈はライラを抱きかかえる。グリムは動かせる端末を、莉奈達を守るように立ち塞がさせる。


 そして、女王竜は——



『……随分と騒がしいの。何か用か、人の子らよ』



「……ひいっ、喋ったあぁっ!」



 ——冷たい息を漏らしながら、莉奈達に語りかけてきたのだった。








『母様、一大事です。侵入者です』


『侵入者? わらわを倒しにでも来たのか?』


 目の前で会話を繰り広げる氷竜と女王竜。呆気にとられながらも、莉奈はブンブンと手と首を横に振った。


「違います、違います! 様子を見にきただけなんですっ!」


『様子を? 妾は見せ物ではないぞ』


「分かってますってえ!」


 莉奈はほとほと困り果てた表情で女王竜に返答する。そんな中、ライラがてくてくと女王竜の方に歩いていった。


「ライラ!?」


 莉奈の呼びかけにも応えず、女王竜の前まで歩いていくライラ。そして彼女はピタッと立ち止まって目を輝かせた。


「すごい! お話できるんだ! 私、ライラっていいます、十七歳です!」


 そう言ってペコリと頭を下げるライラ。初めて会った人? に挨拶出来るのは立派だが——状況が状況だ。莉奈は頭を抱える。


 突然近づいてきた人物に警戒する氷竜達。しかし女王竜は、ライラのことを目を細めて見つめた。


『ほう、ライラか。妾には名が無い。好きに呼ぶがよい』


「お名前ないんだ。じゃあとりあえず女王様って呼ぶね」


『女王、か。人の子にはその様な文化があると聞き及んでいる。まあ、好きにしろ』


 普通に話している。莉奈達も、遅れて到着したレザリアやハウメア達も呆気にとられている。


 その、グリムに背負われたハウメアを見た女王竜は、ほうと反応し彼女に話しかけた。


『そこな女子おなご


「……ひっ……!」


 突然話しかけられ、反射的にグリムを強く抱きしめるハウメア。グリムは首が締まって「ぐぎゅう」と変な声を上げる。


『妾の血を引く者が未だにおろうとはな。どうだ、一族は繁栄しているのか?』


「……えっ、どういうことかな?」


 女王竜の言葉にハウメアはポカンとする。その様子を見た女王竜は、ため息をついた。辺りに冷気が吹き荒ぶ。


『……もう、遠い昔の話だ。人の子には途方もない、な。まあいい。おい、お前たち。人の子の姿をとってやれ』


 その呼びかけに応じ、三匹の氷竜は青白い光に包まれた。莉奈はその光景に見覚えがある。あれは確か、ヴァナルガンドさんが——。



 光が収まる。その光が晴れた先には、見た目麗しい三人の女性が佇む姿があったのだった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ