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ライラと『私』の物語【完結】  作者: GiGi
第五部 第三章
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『北の魔女』 06 —戯言—






「うん。まー、なんにせよ今はヘクトールの生死がわかってない状況だからねー。で、グリム。話を戻そうか。ヘクトールの人柄はそんな感じだよ。それが、どうかしたのかなー?」



 ——あらぬ疑いで話の腰が折れてしまったが、さっきグリムが言いかけたことだ。


『ヘクトールという人物が存命していた場合、冒険者ギルドを作れば争いの火種になりかねない』。


 疑惑が晴れ一転、物腰が柔らかくなったハウメアさんの言葉にグリムは頷く。


「うん。私は二十年前の当事者ではないので、教えて欲しい。当時このトロア地方を襲った災害は、『厄災』の仕業だとすぐには分からなかったはずだ。なら、『未曾有みぞうの自然災害に襲われた』。そう皆、最初は思っていたんじゃないかな?」


「……そう。うん、そうなんだよ、グリム。うちの国は止まない風が吹いた程度だけど、魔法国は光の雨にうたれ、中央南部は土地が腐り、東は砂に侵食され、南には雪が降り積もり、そして西は影に覆われた。情報が共有出来るまで、各地に住む者は自然の脅威、つまり自然災害がたまたま襲ってきたと認識していたんだ」


 ハウメアさんは目を伏せ語る。その言葉を受け、グリムは顎に手を当てた。


「……ふむ。当時『魔法国』が滅んだので疑いの目は逸れたが……実際には魔法国によって『厄災』は作られ、各地に送りこまれた。そしてヘクトールの狙いは、『自然災害』と誤認させ各地を滅ぼそうとしていた、そんなところかな?」


「まあ、そんなところだろうねー。そして『厄災』という存在を認識したあとも、背景の分からなかった当時のわたし達は『『厄災』とは自然、もしくは魔人エンケラドゥスが生み出した、人類に対する脅威』だと認識していた。はっきり言ってセイジがいなかったら、世界は緩やかに滅びの道を歩んでいただろうねー」


 ——誠司さんの『魂』を斬る能力のことだ。肉体から離れた魂を誠司さんの力で斬ることによって、『厄災』は完全に消滅させることが出来る。


 もし誠司さんがいなかった場合——肉体を消滅させても『厄災』は時間をかけて復活してしまい、この世界に脅威をばら撒き続けていたことだろう。


 グリムは続ける。


「だが、今になって『厄災』たちが理性のある状態になって復活したことで、魔法国の企みが明るみになった。そこでハウメア嬢、キミに聞きたい」


 彼女は真っ直ぐにハウメアさんを見すえる。


「——仮にヘクトールが生きていたとしてだ。今の『厄災』復活の流れに、彼は関与していると思うか?」


 なるほど、グリムの言いたいことも分かる。今までの話を聞いた感じ、ヘクトールという人物は自分の悪事がバレないよう、狡猾に立ち回っていたらしい。


 もし彼が生きていて、再び『厄災』を復活させている張本人だった場合——当時のように『厄災』達の理性を奪わなければ、彼の悪業が明るみになってしまう。そう、今、私達が知ってしまったように。果たして、そんな事をするのだろうか。


 ハウメアさんはしばらく無言でグリムの視線を受け止めていたが、やがて息を吐き、目を伏せた。


「……『可能性はある』、としか言えないねー。今の状況から推察するに、三つのパターンが考えられる。まず、ヘクトール本人が復活させている場合。君がほのめかす通り違和感はあるけど、実際の所あの狂人の考えなんてわからないからねー」


 確かにそうだ。そのヘクトールという人がヤケになっていたり、何らかの理由で『厄災』達の理性を奪えない、という可能性もあるのだろう。


「次に、ヘクトールの意志を継ぐ者が『厄災』達を復活させている場合。こっちの方が可能性は高そうかなー? その場合、魔法国跡地の調査で、もしかしたら何かが分かるかもしれない」


 頷くグリム。そしてハウメアさんは薄っすらと目を開け、テーブルに視線を落とす。


「そして最後に、全く無関係な者が復活させている場合。このパターンだとお手上げだねー。そいつがドメーニカの復活までたどり着かないことを祈るばかりだ」


 そう言ってハウメアさんは自嘲気味に微笑んだ。そうだ。順当に復活していくのなら、残る『厄災』はあと三体。そしてその最後には——エリスさんがその命を犠牲にして封じ込めたという、『厄災』ドメーニカがいる。


 もし、そうなったら——ふと、私の頭にリョウカさんの言葉が思い出されてしまう。彼の言う『赤い世界』。それが、『厄災』ドメーニカの復活を示唆しさしているのだとしたら……想像しただけで私は身震いしてしまう。


「ふむ。ありがとう、ハウメア嬢。結局、現段階では何も確定出来ないということが分かったよ」


「ごめんねー、グリム。まあ一番いいのは奴が生きていて、とっ捕まえて吐き出させることなんだけどねー。調査の方はなるべく急がせるよ」


 ハウメアさんはグリムを眺め、軽く手を上げる。それを受けてグリムも軽く頭を下げた。


 この二人のやり取りもひと段落したところで、今まで静観していた誠司さんが口を開く。


「では、ハウメア。ギルド設立は様子を見た方がいい、ということでいいかな?」


「んー、それなんだけどねー……」


 誠司さんの言葉に、ハウメアさんは頭をかく。


「——戯言ざれごととして聞いて欲しいんだけど、今、グリムと話していて思った。ギルド設立をエサにするのも、ありなんじゃないかって」


「……エサ?」


 いぶかしげな表情を浮かべる誠司さん。彼女は申し訳なさそうな表情で答える。


「ヘクトールを釣るエサだよ。でも、ギルド設立だけじゃ弱いかもね。どうかな、サランディア国は……サラちゃんは領土を広げる気はあるかなー?」





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