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ライラと『私』の物語【完結】  作者: GiGi
第五部 第二章
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帝都ブリクセン 03 —彼女への報酬—







 肩をすくめ、グリムは語り始める。


 事前の準備などはサランディア国やギルド、アルフさんの内情もあるので詳細には話せないが、戦闘に突入してからの一部始終を、それはもう正確に語った。


 ライラやレザリア、『厄災』達も、初めて聞くことは多い。皆が目をキラキラさせて話に聞き入る。やめれ。


 グリムが把握していない話は、私が渋々語る。戦闘開始時や、誠司さんが来た時、あとはジョヴェディとの空中戦など——


「それで、あの時よく聞こえませんでしたが、『白い燕』さんはなんて言ったんです!?」


「……あ、ええと……言わなきゃダメ?」


「報酬ですから」


「あ、うん……『空は私の場所だ、あなたにはまだ早い』とかなんとか……」


 きゃーきゃー言って喜ぶ面々。公開処刑だよ、コレ。私もあの時は気持ちが昂ぶっていたというかなんというか……あ、レザリア、気絶してる。



 こうして語りも終わり、あの戦いの一部始終を聞き終えたクラリスの表情は——実に晴れやかだった。


「ありがとうございます! これは早速、六番の製作に取り掛からねばっ!」


「……はあ、また増えるのね……」


 私はため息をつく。あわよくば今回は、歌にする程のことは無いから大丈夫かもと思っていたのだが——そんな事はなかったらしい。


 まあ、いまさら五番が六番に増えたところで——半ば諦め、ひたいに手を当てて深く息を吐く私。と、その時。マルティがモジモジしている様子が目に入った。


「ん? どうかしたの、マルティ」


「あの、リナさん……その、ええと……」


 マルティはクラリスの方をチラチラ見ながら何か言いたそうにしている。ああ、もしかして——


「あー、ごめんクラリス。もし良かったらさ、この娘に『白い燕の叙事詩』聴かせてあげてくれる?」


「……えっ! リナさん、何でわかったの!?」


 驚いた顔をするマルティ。でもね、あなた言ってたじゃん。



 ——『私ね、まだ『白い燕の叙事詩』の新しいやつ、聴いてないんだ。それまでは、私は、死ねない』って。



 ショックで自分を見失っていた私を引き戻してくれたあの時の言葉。この娘のために頑張んなきゃな、と私を奮い立たせたあの時の言葉。


 少し照れ臭いけど、私はマルティに向かって無言で頷く。そんな私達を見て、クラリスは微笑んだ。


「お安い御用です! では、お聴き下さい、『白い燕の叙事詩』第一番から第五番、あなたは今、歴史の聴衆者になります!」


「え? ここで?」


 私の質問に答えることなく、彼女は咳払いをして歌い出した。



 ——透き通った歌声が、部屋中に響き渡る——



 改めて聴く。彼女は吟遊詩人なので歌が上手いのは当然なのだが、心に沁みるメロディー、琴線に触れる歌詞、思わず聴き惚れてしまう。


 ——惜しむらくは、私のことを題材にした歌じゃなければよかったのに。


 まあ、皆んなも聴き入っているのでよしとしよう。ただ、これ以上歌は増えませんように——そう願いながらも、私も彼女の歌に聴き入るのであった。







「んじゃ、冒険者登録しちゃおっか」


「……は、はいっ!」


 クラリスへの報酬を果たした私達は、部屋を出て受付へと向かう。緊張した様子のマルティ。うん、かわいいぞ。


 周囲の視線が集まる。今、私と一緒にいるのは、ライラにレザリア、グリムにクラリス、そしてマルティと、パッと見六人パーティだ。しかも全員、女性。嫌でも目を惹いてしまうのだろう。


 まあ、この街では私の顔は割れていない訳だし、その点に関しては安心だ。きっとクラリスの方が有名人なのだろうから——。


「……あれが『白い燕』……」


 ガク。人々の漏らした声が聞こえてくる。何で知ってんのよ。


 私はクラリスを肘で小突いた。


「……ねえ、まさかあなた、私が来ること……」


「……? ええ、今日『白い燕』さんが私に会いに来ること、皆さまにはお伝えしておきましたが……あ、サイン会やります?」


 ズル。私はつんのめる。やはりコイツは敵だ、諸悪の根源だ。世の中、諸悪の根源が多すぎて困る。



 そんなこんなで受付へ来た私達。早速、受付の薄茶色の髪色をした女性に話しかけてみる。


「あのう、この娘の冒険者登録、お願いしたいんですが……」


「はい、私、受付担当のアリーチェと申します。推薦状はお持ちですか?」


 はっ、そうだ。推薦状だ。忘れてた。確か、冒険者登録には『他の冒険者の推薦状』が必要だとかなんとか……。


「あ、すいません。私の推薦です。書き方教えてもらっても……」


「推薦者様ですね? でしたらこちらに推薦状の書類がありますので、推薦をする者の名前、あと、推薦者様のギルドカードの写しとサインを頂けますか?」


「……サインは書類にでいいんですか?」


「……? はい、書類にです」


 ふう、とりあえず何とかなりそうだ。怪訝な表情を浮かべるアリーチェさんを余所に、私はサインをし、ギルドカードの写しを入れる。


「はい、出来ました。これで大丈夫ですか?」


「ありがとうございます。えーと、どれどれ……」


 紙を指でなぞって確認し始めるアリーチェさん。やがてその指は私のギルドカードの写しの所で止まり——


 ハッ、嫌な予感。


「——ああ、クラリスさんのお連れ様なので、もしかしたらと思っていましたが、あなたがリナさんですね。いつもありがとうございます……えと、何でしょう、この手は……」


「いや……あはは……」


 私は身を乗り出してアリーチェさんの口をいつでも塞げる準備をしていた訳だが、よかった。どうやら彼女は叫ばない側の人間だったようだ。とりあえず味方という認識で大丈夫だろう。


 そんな私の様子に首を傾げながらも、アリーチェさんは少し大きめの水晶玉を「よっこいしょっ」と取り出しながら微笑んだ。


「それでは個々の魔力の波長を登録いたします。えーと、えっ、マルテディさん……? あ、両手をかざしてください……」


 マルティの魔力量計測が、始まる——。





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