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ライラと『私』の物語  作者: GiGi
第四部 第七章
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急・対本体攻略戦 06 —決着—






 そこは、マルテディの力により固定された土の中。


 今や土中で数万以上にまでその数を増やしたグリム達が、静かにその時を待っていた。



 ——パチン



 地上でグリムが指を鳴らすと、瞬く間に万近くのグリムが光の粒子となって姿を消した。



 土の中に空洞が出来上がる——。





「ぬおっ!」


 巨像の重さに耐え切れず、崩落する地面。そこは、土の巨像の右足部分真下だった。


 急ぎ右足を上げる巨像。しかし——



「——次だ」



 ——パチン



 再びグリムが指を鳴らすと、今度は巨像の体重を支えている左下の地面が崩れ落ちる。


 バランスを崩し、両手をつこうとする巨像。



「——まだまだ」



 ——パチン



 次はその、つこうとした両手部分の真下、地中にいるグリム達が消え去る。勢いをつけた巨像のその両腕は、情けなくも地面に沈み込んでしまった。


 大地を揺らし、激しく鳴る地響き。


 今や巨像の両腕と両脚は地面に沈み込み、無防備な四つん這いの姿をさらけ出していた。


 土の『厄災』の力を出し抜く、土を利用したグリムの策——その策は見事にはまり、ジョヴェディを完全に出し抜くことに成功した。



「今だ! 皆、行け!」



 グリムの号令で、莉奈が、誠司が、全員が無力化した巨像へと向かって駆け出す。



 その光景を見たジョヴェディは——醜く口角を吊り上げた。



 元より一箇所に奴らが集まった時点で、あとは近づくだけで事は済んでいた。


 青髪の小童こわっぱに出し抜かれ今は醜態を晒しているが——向こうから近づいて来てくれるのなら、結果は同じだ。


 ジョヴェディは高らかに宣言する。



「最後に笑うのは、このワシじゃ!」



 そしてジョヴェディは、巨像のその姿を——解除した。





 誠司達は巨像のそばまで駆け寄っていた。異変を感じ立ち止まるが——もう遅い。


 唸りを上げ迫り来る地響き。


 四つん這いになっていても見上げるほど大きい土の巨像は、今、その姿を解除し、激しい土砂崩れとなって誠司達を飲み込むために襲いかかった——。






 ——…………——。






 一瞬だった。





 轟音の後、辺りはしんと、静まりかえる。


 一陣の風が吹く。

 

 全てを飲み込んだ、土砂の上に立つ老人が一人。




 ——虚しい。




「……ククッ」




 ——虚しい、虚しい、虚しい。




「ククッ、クハハハハッ」




 ——ワシが求めていたのは、こんな戦いだったのか? こんな結末だったのか?




「クワッハッハッハッ、クワーハッハッハッハッ!」




 ——違う。ワシがしたかったのは、魔法の撃ち合い、知恵の比べ合いだ。こんな『厄災』の力を使った、一方的な虐殺ではない。




 ジョヴェディは笑う。高らかに笑う。その顔に諦観ていかんの表情を浮かべながら。彼を少しでも楽しませ、追い詰めた者達を想いながら。


 そして、追い詰められ使ってしまった自身の築き上げた力とは全く無関係な『厄災』の力。それに頼った弱い自分を呪いながら——。




「クワーハッハッハッハッ! クワーハッハッハッハッハッハッハッ……——」






 ——トスッ






 大声で笑うジョヴェディの口を、何かが突き抜けた。


 そしてそれは、いつの間にかジョヴェディの背後に現れていた巨大な丸太に、彼を縫いつける。



「……ガッ……?」




 ——トスットスッ




 放たれた魔法の力が込められた矢は、ジョヴェディの両腕をも丸太に縫いつける。


 その巨大な丸太を支えている人物は——『姿を溶け込ませる布』を剥ぎ取り、自身の姿を現した。


「やあ、ジョヴェディ。知恵比べはどうやら、私の勝ちみたいだな」


「……!!……」


 そこにはジョヴェディが一番危険視していた人物——青髪の女性グリムが、五体立っていた。


「……がっ……ぎっ……」


 何とか声を上げようとするジョヴェディ。しかしそんなジョヴェディに向かって——




 ——トスッ、トスットスッ……トスッ、トスットスッ……




 ——次々と放たれる魔法の矢。ジョヴェディの身体が丸太に縫いつけられていく。


 そしてやがて矢は止み、完全に身動きの取れなくなったジョヴェディの元に、その矢を放った人物が『姿を溶け込ませる布』を剥ぎ取って近づいて来た。



「……あなた、私のリナをいじめましたね? その報い、その身を持って味わいなさい」


 そう言って女性は、カチャリと細剣を抜いた。



 ——言うまでもない。『月の集落』随一の戦士、『魔女の家』のメイド担当、レザリアだ。





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