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ライラと『私』の物語【完結】  作者: GiGi
第四部 第七章
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急・対本体攻略戦 04 —対巨像攻略戦—






「……ぐぬうっっ……!」


 ジョヴェディは土中で歯軋はぎしりをする。



 ——ワシは……ワシは最強になったのではないのか!?



 現存する魔法は全て覚えた。『厄災』の力で無尽蔵の魔力も手に入れた。


 だが、立ち塞がる相性問題。


『厄災』の力はマルテディに相殺され、魔法は詠唱の隙を見て潰されてしまう。



 ——もういい。終わりにしてやる。



 ジョヴェディは決意する。彼とマルテディの『厄災』としての力。その僅かに上回る部分を全て注ぎ込んで、圧倒的な力でねじ伏せてやろうと——。





 大地が揺れる。土塊つちくれが消える。周囲を警戒する面々。


 そしてそれは——大地を盛り上げ、ゆっくりと形作った。


 あまりの揺れの激しさに、誠司達は膝をつく。それは陽をさえぎり、大地を影にする。


 その全長五十メートルはあろうかという巨大な土人形は——誠司達を見下ろすように佇んでいた。





「……まいったね、まったく。ノクス、君ならどうにか出来るんじゃないか?」


「馬鹿言え、セイジ。いくら俺でも、ありゃ無理だ」


 誠司の悪態に、大剣を構えながら返答するノクス。となりでエンダーとセレスが詠唱を始めた。


「——『光弾の魔法』」


「——『渦巻く颶風の魔法』」


 まず、エンダーの光弾が。続けてセレスの暴風が土人形を襲うが、それらは土の一片を削り取るにも至らない。



 ——質量の暴力。



 莉奈はマルテディの元に降り立ち、彼女に尋ねた。


「マルティ! 砂の巨像は出せないの!?」


「……ごめん、リナさん! 沈下を防ぐので精一杯!」


 そう。『厄災』としての力はジョヴェディの方が若干上回る。今、ジョヴェディは、全ての余剰分の力を使って土の巨像を作り上げたのだ。


 土の巨像の腕が降り上がる。


「皆、散れっ!」


 誠司が叫ぶ。その振り上げられた腕は——マルテディ向かって真っ直ぐに振り下ろされた。


 莉奈はマルテディを抱え飛び、間一髪、巨像から距離を取る。衝撃で鳴り響く地響き。


 莉奈は誠司の視界に意識を飛ばす。ジョヴェディの『魂』はどこに——



(……ずっる!)



 ——彼の『魂』は、土の巨像の胸部、奥深くに存在していた。とてもではないが、生半可な攻撃では届かない場所。


 莉奈は誠司に通信を入れる。


「——ねえ、誠司さんっ! どうすんの、アレ!」


 とは言うものの、誠司とて何か打開策がある訳ではないだろう。莉奈としても、とりあえず言うだけ言ってみたつもりだったのだが——誠司から茫然とした様子で返事が返ってきた。



『——……莉奈、一体、何が起こっている……?』



「——……え?」


 思わず気の抜けた返事をしてしまう莉奈。何が起こってるって、見ての通りだが——。


 だが誠司は、そんな莉奈の様子を気にすることなく続ける。



『——……なあ、莉奈。一体グリム君は、()()()()()()()?』



「——……え……何を言って……」


 誠司の呻くような言葉に返しながら周囲を見渡す莉奈。しかし、グリムの姿は見えない。


 莉奈は再び、誠司の視界に意識を飛ばしてみる——。


「——……嘘でしょ……何よ……コレ……」


 ——今はまだ、誠司の視界にしか映らない『魂』の光景。それを共有した莉奈も、ただ茫然とするしかなかった。





(クックッ、最初からこうすればよかったんじゃ……)


 ジョヴェディは拳を振り下ろす、踏みつける。


 彼奴きゃつ等はただ、逃げまどうだけ。この土の巨像に対抗する手段など、彼奴等にはない。


(ワシは……何のために戦っておったんかのう……)


 ふと、そんな考えが頭をよぎる。一方的な蹂躙。何故最初から、こうしなかったのか。


(……フン、まあええわい。ようは、勝てればいいんじゃ)


 ジョヴェディは忘れる。戦いの目的を、情熱を。彼が望んでいたのは——。




「そこまでだ、ジョヴェディ!」




 突然、声が響く。ジョヴェディが声のする方向に意識を向けると、それは岩壁の上、ブカブカの服を着た青髪の女性が真っ直ぐにこちらを見ていた。


(そう言えばいたのう、此奴こやつが)


 ジョヴェディは思い返す。幾度となく彼を出し抜いた人間。危険な存在。恐ろしい程の再生能力の持ち主。


 そう言えば、先ほどの彼女との知恵比べは楽しかった。しかし、最早どうでもいい。ジョヴェディは拳を振り下ろす。


 その青髪の女性は避ける素振りもなく、呆気なく潰れてしまった。


(……フン)


 あまりの呆気なさに、ジョヴェディは鼻を鳴らす。だが今度は別の場所から声が響いた。


「フハハハハハ! どうしたジョヴェディ。私は何度でも蘇るぞ、貴様を倒すまではな!」


(……小賢しい!)


 別の岩壁の上からぴょこっと姿を現して挑発するグリムを、ジョヴェディは粉砕する。


 しかし今度は足元から声がした。


「どこを狙っている、ジョヴェディ。私はここだ!」


「くそっ!」


 ジョヴェディは毒づき、踏み潰す。だが、また別の場所から——





 その様子をただ茫然と眺めている誠司の隣に、グリムが並び立った。彼女は誠司にのんびりとした調子で話しかける。


「やあ、誠司。来てくれたんだね、待っていたよ」


「……グリム君、君は一体、何を……」


「はは。キミには見えてしまっているね。まあ、アレの相手は私に任せてくれ」


 誠司達の元に、マルテディを連れた莉奈もやってくる。


 莉奈は開口一番、グリムに問いただした。


「ちょっと、グリム! どうなってんの!?」


「莉奈、キミのおかげだ。キミのおかげで『ふたは開いた』」


「グリム君……蓋というのは、まさか……」


 誠司は思い当たる。彼女はこう表現していた。脳内にあるという転移者のスキルに関連する場所。そこにあるであろうチートスキル、それを『ブラックボックス』と——。


 グリムは口角を上げる。


 それと同時に、あらゆる場所に潜ませていたであろう大量のグリム達が、姿を現した。



 ——その数、少なく見積もっても千以上。そのグリム達は土の巨像を取り囲み、群がり、よじ登りはじめる。



 グリムは巨像を指差した。


「——さあ、相手が質量で来るというのなら、こちらは数で勝負だ。私の力、存分に味合わせてやろうじゃないか」




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