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ライラと『私』の物語【最終部開幕】  作者: GiGi
第三部 第四章
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集えよ、冒険者たち 06 —砂の城②—







「……どこから聞けば……とりあえず、この前はありがとうございます。おかげで誠司さん、助けられました」


『——そうか。それは良かった』


「……それで、何であなたが私達のことを知っているんですか?」


 まずは、そこだ。この人は誠司さんのことを知っているようだった。そして、私のことも知っている。


『——マルテディ、椅子を用意してくれないか。この身体だ、立ちっぱなしは疲れるものでね』


「は、はい!」


「うぉい! 色々聞けって言ってましたよねっ? なんで、はぐらかすんですかっ!?」


 また来てしまったのか——勿体ぶりキャラが。だがそんな私の言葉に、彼は肩を揺らして楽しそうに答えた。


『——落ち着けと言ってるだろう。まあ、言えないことも多いんだ。だけどこれだけは言っておく。私は君達の、そして彼女達の味方だ』


「……教えては……くれないんですね?」


『——ああ、少なくとも、今はまだ、ね』


「いつかは教えてくれるんですか?」


『——……そうだねえ。知らずに済むのに越したことはないんだけど……すまないね、これで勘弁してくれないか?』


 謎だ。謎すぎる。これが物語だったら、絶対黒幕だ。裏で全てを操っていそう。


「……わかりました。納得いきませんけど、今は納得します」


『——ありがとう』


 マルティが三人分の椅子を作る。私は勧められるまま、ドカッと腰を下ろした。


「……では次です。なんで私が来ることがわかったんですか?」


 マルティは知っていた。私が来ることを、私のことを。その質問に、彼はマルティと顔を見合わせ頷き、声を響かせる。


『——それは簡単だ。この城に向かって飛んでくる君の姿が見えたからね。だから私がマルテディに教えたんだ。『あれが今、巷で有名な白い燕だよー』ってね』


 思わず椅子からずり落ちる私。


「な、な、何で知っているんですかっ!?」


『——ん?『白い燕の叙事詩サーガ』は有名だぞ? マルテディにも語って聞かせていたんだ』


「うん! リナさんってすごいんだね! 三番、楽しみ!」


「……ちょ、ちょっと待って下さい——」


 私は起き上がり、椅子に腰掛けなおす。


「——あなた、噂じゃ最強の三つ星冒険者ですよね? なんでこんな一介の冒険者の歌なんかを……」


『——いや、何を言っている。君も私と同じ、三つ星冒険者じゃないか』


「名目上だけですってばあ……」


 駄目だ、この人と話していると疲れる。とりあえず一つ分かったことがある。この人が何者であるか、それは絶対に教えてくれないであろうことを。


「では、話を変えます……。まず『義足の剣士』さん。聞いているとは思うけど、あなたがここに居るということは、『渡り火竜』との戦いに力を貸してくれるということでいいんですよね?」


 そうだ。最強と名高い彼の力を借りられれば、かなりの戦力になるはずだ。ノクスさんが言ってた。『なんたって、竜の単独討伐も成功したらしい』と。そんな人が力を貸してくれれば——。


 だが、彼の言葉は私の予想を裏切るものだった。


『——莉奈、すまない。私は皆とは合流できない』


「……何でですか。あなた、三つ星冒険者ですよね? 今、オッカトルがどのくらい大変なことになっているか——」


 私は彼を睨む。勿体ぶるのはまだいい。しかし、これはオッカトル、ひいてはトロア地方の危機だ。こんな時に動かないで、じゃあ何で冒険者やってんのよ、という気持ちが胸を満たす。力を持っているのに使わないなんて——。


 しかし、彼の思惑は別のところにあるのだった。


『——待ちなさい。合流は出来ないが、手伝うことは約束する。そこで君に、お願いがあるんだ——』





 彼は語る。私への『とあるお願い』を。彼は何度も私に頭を下げてきた。私は提案する。もし彼の言う通りになるのだったら——彼はこころよく頷いた。




 そして、私達三人の話は終わった。




「……分かりました。もし今までの話が本当なら、マルティは動かない方がいいですね」


「ごめんなさい、リナさん……『その時』がきたら、必ず手伝うから……」


 私はマルティの頭を撫でた。


「いいんだよー。マルティのためだもん。でも……もし全部上手くいったら、三番どころか四番まで出来ちゃうんじゃないかな……」


「うふふ。楽しみにしてるね」


 私はマルティのおでこを突っつく。


『——莉奈。今の話は内密にしてくれ。君達の『司令塔』以外には』


「……そんなことも知っているんですね」


『——ああ。私の意識は、遠くまで『届く』からね』


「はあ……本当にあなた、何者なんですか……」


『——私は、君達の……世界の味方だよ』




 こうして私は、砂の城を後にした。『義足の剣士』さんのことを心から信用した訳じゃないけど、もし彼の言う通りになるのならば、それが最善の策になると思う。


 ——信じてみよう、彼を、最強の三つ星冒険者の言うことを——


 私はすっかり待たせてしまっているアオカゲの元へと、飛んで向かうのだった。







 リョウカとマルテディは、城に空いた窓から莉奈を見送る。


「大丈夫かな……問題は『その時』まで耐えられるかどうかだけど……」


『——まあ、信じるしかないね。彼女達を』


 リョウカは仮面を外し、マルテディの頭を撫でる。


 そう、全ては冒険者たちの手にかかっているのだ——。




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