表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ライラと『私』の物語【最終部開幕】  作者: GiGi
第三部 第四章
160/610

集えよ、冒険者たち 05 —砂の城①—





 ——翌日。



 私はアオカゲにまたがり、草原を駆けていた。


 マルテディがいるという砂漠は、ケルワンから北西、馬で三十分程走らせたところにあるらしい。


 飛んでいってもよかったのだが、さすがに長時間飛行は疲れる。なので、クロカゲが居なくなって寂しそうにしているアオカゲに声をかけたのだが——



 ——「ごめんね、アオカゲ。私を乗せて、ちょっと走ってもらいたいんだけど……」


 ——「ヒヒーンッ、ブルルァッ!」



 ご機嫌である。


 最初はアオカゲに負担をかけないよう、気持ち宙に身体を浮かして体重を乗せないようにしていたんだけど、どうやらそれでは落ち着かないらしい。


 少し進んでは『落ちてないか』と心配そうに振り向くので、今はドッカリまたがらせてもらっている。お尻、痛い。


 そんなこんなで三十分。私達は眼前に広がる砂漠の前に立ち尽くすのだった——。





「……すっごいねえ、アオカゲ。いかにも砂漠って感じだね」


「ブル」


 ここに誠司さんがいたら、『砂漠だからな』とか返してくれただろう。まあ、動物の言葉がわかれば、アオカゲも同じことを言ってるのかもしれないけど。


 私は辺りを見渡して、木陰の方へとアオカゲを誘導する。


「んじゃ、アオカゲ。行ってくるからここら辺で待っててね」


「ブル……」


 アオカゲは鼻を鳴らし、心配そうに私を見つめる。私はアオカゲを撫で、カバンからリンゴを取り出した。


「大丈夫だって。ほら、大好きなリンゴ。お食べー」


 本来、どこかに繋ぎとめておくのがいいのだろう。でも、クロカゲもアオカゲも賢い。信頼しているし、何より万が一魔物が出た時に、繋がれていては危険だろう。


 それに、しばらく馬宿生活が続くのだ。今の内に自由を満喫しておいて欲しい。


「それじゃあ、アオカゲ。行ってきまーす!」


「ヒヒーンッ!」


 アオカゲは前足を上げ、私を見送ってくれた。私は空に舞い上がり、砂漠を見渡す。えーと……うん、多分あれだ。


 私は遠くに見える建造物らしきものを目指し、空を進むのであった——。






「……お邪魔しまーす」


 私は砂の城の前に降りたち、挨拶をつぶやきながら中へと進んでいく。扉はない。あったら困る。全部砂だから。


 城の中は薄暗く、そして涼しい。一階部分には人の気配はないようだ。なんかミイラとか出てきそうだな。私は奥にある階段の方へと進む。


 階段も砂で出来ていた。私はチョンチョンと、つま先でつついてみる。結構しっかりしているようだ。崩れることはないだろう。


 恐る恐る階段を昇る私。この城が崩れたら生き埋めだなあ、とか考えると身震いしてしまう。そして、二階部分にたどり着いた。


「……ごめんくださあい」


 私は観察する。二階部分には、砂で出来た家具のようなものがそこかしこに作られていた。しかし人の気配は——


「——あなたがリナさん?」


「うひゃあ!」


 突然背後から声をかけられ、思わず声を上げてしまった。私は尻餅をつきながら後ずさる。心臓が止まるかと思ったぞ、おい。


「ご、ごめんなさい。驚かせちゃった……よね?」


「え、え、え、いや……」


 私の方を心配そうに覗き込む女性。褐色の肌に艶やかな長い黒髪を後ろで束ね、そしてその黒髪からのぞく耳は——魔族の耳だ。


「もしかして……あなたがマルテディ?」


「うん……そうだよ。あなたがリナさんだね」


「そうだけど……どうして私の名前を……」


 おかしい。何で初対面なのに知っているのさ。それにマルテディは臆病さんだって聞いてたぞ。これじゃあまるで、私の方が臆病みたいじゃないか。


 そんな私の疑問に答えるべく、マルテディはチラッと部屋の奥を見る。


「えっとね、あの人に教えてもらったの。あなたが訪れるって……」


「えっ?」


 私が部屋の奥を見ると、物陰から一人の人物が姿を現した。


 その人物は、ボロボロの赤いロングマントで身を纏い、フードを目深に被っていて顔がよく見えない。その上、その顔全体が仮面で覆われているという、なんとも奇妙な出立ちだ。


 その一度会ったことのある人物に、私は呻き声を上げる。


「『義足の……剣士』さん?」


『——やあ、久しぶりだね、莉奈。どうやら大変なことになっているみたいだね』


 男の声が頭に直接響く。あの時と同じだ。


「どうしてあなたが……ここにいるんですか?」


『——まあ、色々あってね。私のことは気にしないでくれ』


 彼はそう言いながら私の方に歩み寄ってくる。いやいやいや、気にするなって無理でしょう!?


 と、そこで私は一つの考えに思い至る。まさか、マルテディを倒しに来たのか……?


 私はマルテディの前に立ち塞がる。


「ごめんね、マルティ……マルテディ。ちょっとこの人とお話させて」


「その呼び方……嬉しい。ルネディやメルに、会ったのね?」


「ぶっ」


 おいおい、ちょっと待て。吹き出してしまったではないか。なんであなたも『お見通しキャラ』みたいな感じなのよ。


『——落ち着きなさい、莉奈。私は彼女の敵ではない。色々聞きたいこともあるだろう。話をしようじゃないか』



 謎の人物、『義足の剣士』との対談が、始まる——。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ