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ライラと『私』の物語【最終部開幕】  作者: GiGi
第三部 第四章
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集えよ、冒険者たち 02 —私も戦う—





 冒険者ギルドから戻ってきた誠司達は、マッケマッケの部屋へと戻る。セレスとマッケマッケも忙しそうに各所と連絡を取り合っていたが、一区切りをつけ、情報共有のために席についた。


 まずは誠司が、ギルドで得た情報を皆に話す。


「——緊急招集の内容は、やはり『渡り火竜』の件だった。『渡り火竜の大群がケルワンに襲来予定。三つ星冒険者は、速やかにオッカトル共和国ケルワンへと向かうように』とのことだ。ギルドもだいぶ、混乱している様子だったよ」


 その報告を聞いたセレスは頷き、補足をした。


「私の方からも、付け加えてギルドに依頼しておいたわ。『到着次第、東の魔女セレスの元に向かうように』って。ギルドが動いてくれて、本当によかった」


「ああ。ここオッカトルで止められなければ、あの数だ。トロア地方全域が危険にさらされる。ギルドとしても、動かざるをえないだろうよ。ただ、五日しか猶予がない。どこまで集まれるか——」


 ギルドが動いてくれるのはありがたいが、このトロア地方には三つ星冒険者の数は多くないことを誠司は知っている。最悪、誰も来ない可能性だってあるのだ。作戦を立てるにしても、今いる面子めんつだけでの戦いを想定しなくてはいけない。


「——それで、セレス。住民達はどうするつもりだ?」


 誠司の問いかけに、セレスとマッケマッケは顔を見合わせて頷いた。


「住民は早速、明日の朝から順次避難してもらうわ。でも、避難の誘導と避難出来ない者達の為に民兵を割り当てる事になるから……戦力として当てにしていいのは、私とマッケマッケぐらいね」


「ふむ……ここにいる私達と冒険者たちで、あの大群を何とかする感じか……」


 誠司の見立てでは、誠司とセレス、それにマッケマッケの三人で同時に相手できるのは、三体までといったところだろうか。かなり厳しい。


「ええ……でも避難出来ずに街に残る者達のためにも、避難した者達の帰る場所を守るためにも、何よりこのトロア地方に住む者達のためにも、私達は戦わなければならないわ」


「そうだな、最悪、三人でどこまでやれるか……」


 と、その時。誠司の言葉を聞いた莉奈が立ち上がった。


「ちょっと待って。私もしかして、頭数に入っていないの?」


「……ああ。君には住民の避難を手伝ってもらおうと思っている。それで、ギルドに対する体裁ていさいも保てるだろう」


「いやいやいや。渡り火竜って、空飛ぶんだよね?」


「そうだ、それが厄介——」


 そこまで言いかけて、誠司は気付く。莉奈が戦況を変えうる可能性がある人物であることに。


 だが——。


「——いや、待て。申し出はありがたいが、危険すぎる。確かに、君の持つ力は欲しいが……」


「じゃあ、決まりだね。私も戦う。まあ、死なない程度には上手く立ち回るよ」


「いや、しかしだな……」


「もう、またつべこべ言って。みんなが戦うんなら、私も戦うよ。仮にも三つ星冒険者なんだし」


 言葉とは裏腹に震える手。その手を胸に当て、莉奈は切々と訴えかける。そのやり取りを見ていたセレスが、不思議そうに誠司に問いかけた。


「ねえ。彼女の持つ力って……一体なんなの?」

 

「ああ。莉奈は私と同じ世界からやって来たんだ。それで彼女は、『飛ぶ力』を持っている」


 それを聞いたマッケマッケが、声を裏返して叫んだ。


「えっ! それじゃあもしかしてリナさんが、あの『白い燕』なんですかあ!?」


「え、ちょ、何でマッケマッケさんが知っているんですか!?」


 莉奈も声を裏返して叫ぶ。何故、その通り名を——。


「まさかのご本人……。だって、最近街で流行ってますよ、『白い燕の叙事詩サーガ』が。一番の『白き光が闇を討つ』編と、最近になって二番の『白き光が神狼を斬る』編が歌われてるんですって! 三番はまだですか!? あーし、楽しみにしてるんですよ……あ、サインください」


「いや! ちょっと、何でそんなことに……あっ……」


 間違いなく、レザリアだ。確かギルドで『歌にしていいか』と吟遊詩人に尋ねられていた。許可を出してしまったのか——莉奈は頭を抱えた。


「そう……あなたが『白い燕』……実在したのね。力を貸してもらえると嬉しいんだけど……」


「待ってください、セレスさん! 力は貸しますけど期待しないでくださいっ! 私、へっぽこなんですからあ……」


 肩を落とし、ポスンとソファーに座り込む莉奈。それをグリムがよしよしと宥める。そして莉奈の頭を撫でながら、グリムは誠司に問いかけた。


「それでだ、誠司。私はどのような役割をこなせばいい?」


「グリム君——こうなっては危険だ。君はバッグで『魔女の家』に送り届けるよ」


「ほう、それは賢明な判断だ。賢明だが、愚かだと言わざるをえないな」


 グリムは目をつむり、肩をすくめた。その言葉に、誠司は眉をひそめる。


「……どういうことかね?」


「なに、簡単な話さ。この戦いは、集団対集団だ。君達は前線に出てしまうのだろう? 一体誰が、刻一刻と変わりゆく戦場の盤面を取り仕切る?」


「それは……」


 誠司は唸る。確かに、司令塔は必要だ。本来その役は、セレスがうってつけなのだが——この戦いにおいて、最大戦力であるセレスに任せるのは負担が大きすぎる。ともすれば、戦闘と指示、どちらも中途半端になってしまうだろう。


 グリムは、口角を上げた。


「——私の演算能力なら、可能だ」






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