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ライラと『私』の物語【年内完結】  作者: GiGi
第三部 第二章
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別れ、出会う 09 —懺悔—





「これが……誠に……誠にありがとうございます」


「ああ、そうだ。でも、約束は忘れないでくれよ?」


「はい、もちろんですとも」


 カルデネは立ち上がり、深々とお辞儀をする。その様子を見て、アルフレードはフッと笑った。


「そうだ。少し待っててくれないか」


 そう言ってアルフレードは部屋の棚の方へと歩いていき、何かを持って戻ってくる。


 首を傾げるカルデネに、彼は腕輪のような物を差し出した。


「これを持っていきなさい」


「これは……腕輪ですか?」


「ああ、まっさらに近い魔道具だ。効果は若干弱くなるが、好きな魔法を詰め込める。ルネディ、よろしく頼むよ」


「……ああ、そういうことね。わかったわ」


 キョトンとするカルデネを余所に、ルネディは魔法の詠唱を始める。そして腕輪に手をあて、その魔力を込めた。


「——『恐怖を和らげる魔法』」


「……!!」


 腕輪は光を帯び、やがて落ち着く。それを見届けたアルフレードは、寂しげに微笑んだ。


「これを身につけていれば、恐怖をある程度誤魔化すことが出来るだろう。君がいつか、心の傷を克服できる日が来ることを祈ってるよ」


「わ、私などのために! ありがとうございます!」


 カルデネは平伏する。それをアルフレードは、すぐさま立つ様にうながした。


「立ちたまえ。これから君は、『別れ、出会う魔法』の研究と習得に勤しむのだろう? その餞別だと思ってくれ」


「はい! はいっ! 何から何まで、ありがとうございます!」





 ——その後、しばらく雑談をしたあと、彼女達は別れを惜しみながらも『魔女の家』へと帰っていく。


 それを見送ったアルフレードは、深く息を吐き目を瞑った。


「どうしたの、アルフ。あの娘にずいぶんと親切だったじゃない」


「あっ、わたしわかっちゃった! きっと、あの人がキレイだったからだよ!」


「あら。最低ね、アルフ」


 だが、そんな『厄災』達の冷やかしを気にもとめず、アルフレードは懺悔ざんげする。


「いや、彼女のためというより、セイジという男のためだな。僕達のせいで、迷惑をかけてしまったからね。その贖罪しょくざいだよ」


「……どういうことかしら?」


「彼は当時、君達を倒して回ったんだろう? 自分の妻を失ってまで。僕は彼にあわせる顔がないな」


「……話が見えてこないのだけれど。だってあなた、当時は引きこもっていたのでしょう? いいかげん、説明してくれないかしら」


 しかし、アルフレードは口をつぐむ。この男は肝心な話になるとすぐにこうだ——ルネディは鼻で息を鳴らすのだった。










 神殿からの帰り道、カルデネはレザリアに、気絶していた間のことをざっくりと説明する。


 そして、作ってもらった『別れ、出会う魔法』と『支配の杖』、それらをどう使おうと考えているのかを——。





「——とまあ、大体こんな感じ。あとは私が魔法を覚えればいけるはずなんだ」


「そうですか、いよいよなんですね……って、あれ? ちょっと待って下さいカルデネ」


 カルデネの話を聞き納得しかけたレザリアだったが、ある肝心なことが抜け落ちていることに気づいた。


「ん? どうしたの、レザリア」


「あのですね、今の話を聞く限りですと、肝心要かんじんかなめの手順が抜け落ちているような気がするのですが……」


 その言葉を聞き、目を伏せるカルデネ。それは間違いなく、誠司とライラの肉体を、同時に空間に存在させる方法のことだろう。


 カルデネは立ち止まり、レザリアの手を握った。


「あのね、レザリア。お願いがあるんだ。その時がくるまで黙っていて欲しいの」


「はい? 何がでしょう?」


「実はね、早い段階から気づいていたんだ。セイジ様とライラ、二人が起きたまま出会える方法」


「……え、そうなのですか?」


 さすがはカルデネ、とレザリアは思うが、事はそう単純ではなさそうだ。彼女の曇った顔を見ればわかる。


「……うん。それも、とっても簡単に。その気になれば、いつでも出来るんだ」


「だったら……」


「私だって会わせてあげたいよ。でもね、この前見て、わかっちゃったんだ。あの二人は、今は会わせちゃいけない。少なくとも、全ての準備が整うまでは」


 半ば自分に言い聞かせる様に語るカルデネ。その視線は宙を睨む。


 レザリアは唾を飲みながら、カルデネの横顔をうかがった。彼女には、一体何が見えているのか——今はまだ、知るよしもない。







これにて第二章完。そしてお待たせ致しました、明日より第三部完結まで、毎日投稿致します。


物語は莉奈達へと戻ります。東の国での彼女達の活躍、是非、ご期待下さい。


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