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ライラと『私』の物語【最終部開幕】  作者: GiGi
第三部 第二章
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別れ、出会う 08 —気絶エルフはかく語りき—





 アルフレードを待つため、席に座りなおすカルデネ。ルネディもメルコレディの隣に座り、カルデネに話しかける。


「それで、リナは何をしているのかしら? 私の見立てだと、こういうのに喜んでついてきそうな娘だけど」


「……うん。リナは今、旅に出ているの。東の国、オッカトルに」


 カルデネは正直に言っていいものかどうか迷ったが、ルネディにここまで助けてもらったのだ。彼女に対して、包み隠さずに話すことにした。


「ふうん、それは残念ね。あの男がいない時に、遊びに行こうと思っていたのだけれど」


「うふふ。ルネディ、リナちゃん大好きだもんね」


「それは、あなたもでしょう? メル」


『厄災』二人は顔を見合わせ笑い合う。仲がいいな、とカルデネは少し羨ましがる。こうして見ると、どこにでもいそうなただの友人や姉妹に見える。


 その二人を『厄災』にしてしまった魔法国——カルデネはギュッと唇を噛んだ。


「あら、どうしたのカルデネ。そんな思い詰めた顔しちゃって」


 ルネディはそう言い、心配そうにカルデネの顔を覗き込んだ。どこまで優しいのだ。


 決めた、彼女達になら、あのことを言っても大丈夫だろう——カルデネは一つの決断をする。


「ねえ、聞いて、ルネディ。リナ達がなぜオッカトルに行ったのかを」


「あら、教えてくれるのかしら。嬉しいわ、人には親切にしておくものね」


「もう、ルネディ。そうやってすぐ強がるんだから。もうひょっほふなおひ……うー」


 ルネディがメルコレディの頬っぺたをムイーと引っ張る。その様子を微笑ましく眺めるカルデネだったが、意を決し、『厄災』達にリナ達の目的を告げる。


「あのね、東の地オッカトルに、突然『砂漠』が出現したみたいなの——」


 それを聞いた二人の動きが止まった。そして目を開き、カルデネの言葉の続きを待つ。


「——それで、恐らく『厄災』の力だろうって。昨日の朝、出かけて行った」


「……そう……マルティ……『厄災』の力を使ってしまったのね……。ねえ、カルデネ。あの男は、な、何か言っていたかしら?」


 ルネディが動揺している。ここまで動揺するなんて。カルデネは申し訳ないとは思いつつ、真実を告げる。


「セイジ様は……『厄災』は滅ぼすと言っていたみたい……」


「そ、そんな……あそこには『東の魔女』が……」


 そう呟き、放心するルネディ。


 魔人と呼ばれる『東の魔女』と誠司が手を組めば、マルテディは滅ぼされてしまうだろう。


 メルコレディも、口を開きかけては閉じを繰り返し、言葉を発せずにいた。


 たまらずカルデネは身を乗り出して、二人の手を握る。


「落ち着いて。あの時、セイジ様の近くに王国の騎士様がいたからそう言ったのかもしれないから——」


 と、その時。今までテーブルに突っ伏していたレザリアがガバッと起き上がった。


 あまりにも突然のことに、三人の視線が集まる。


「——申し訳ありません、気絶していたみたいです。それで、途中からですが聞こえておりました。あなた達はリナ達の真の目的が知りたいと?」


「う、うん……真の、目的? 何か知ってるの、レザリア?」


 カルデネの言葉を受け、レザリアは不敵な笑みを浮かべた。その様子を見た『厄災』達は、期待を込めた眼差しでレザリアの言葉を待つ。レザリアは立ち上がり、昨夕の出来事を語って聞かせた。



「——はい。私が夕食の準備中、リナのすすり泣く声に導かれた先で偶然聞いてしまったのです。二人はどうやら、マルテディのことを語っているようでした。まったく、あの時のリナの悲しそうな表情ったら……コホン、失礼。そして、そんなリナにセイジ様は仰られました。『一緒に行くぞ、マルテディと対話をしに』と。ああ、その時のリナの喜びようったら……まあ、抱きつくのは私だけにして欲しいんですけど?」



 語るだけ語って勝手にね始めるレザリア。しかし、彼女のその言葉を聞いた『厄災』達の目に光が戻る。


「……リナは……もしかしてマルティを助けに……」


「……うん、きっとそうだよ! リナちゃんもセイジちゃんも、マルティを止めに行ってくれたんだよ!」


 希望が見え、喜び合う二人。カルデネも、そんな二人を握る手に力を込めた。


「私もそう思う。安心して、とはいえない。でもあの二人なら、きっと力を尽くしてくれると思うの」


「カルデネ……そうよね、リナを信じましょう」


「ねえ、ルネディ。セイジちゃんも信じてあげよ?」


「そうです! 皆さん、私のリナを信じましょう!」


「……もう、レザリアちゃんまで」


 マルテディのために莉奈が動いてくれている——その事実を知り、『厄災』の二人は安堵する。


 なにしろ彼女は、メルコレディのために命を懸けてくれたのだ。もはや二人にとって莉奈は、かけがえのない存在になっていた。


 莉奈の話に花を咲かす四人。その様子を黙って見守っていたアルフレードが、ついに立ち上がる。そして、いつの間にか手の中に現れた杖をテーブルの上に置いた。


「——話はすんだかい? 待たせてしまったね、カルデネ。出来上がったよ、これが『支配の杖』だ」




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