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ライラと『私』の物語【最終部開幕】  作者: GiGi
第三部 第一章
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『ようこそ』 08 —tips スキル・上級編—






「ブラックボックス……開かない箱、ね……ふむ」


 グリムの言葉を受け、誠司は考え込む。皆が見守る中、誠司は一人頷き口を開いた。


「ちょうどいい機会だ。莉奈、君も聞きなさい」


「私?」


 突然話を振られ、莉奈はつい間抜けな声で返事をしてしまう。誠司は莉奈に頷いた。


「まず、我々の持っているスキルだが……これらは基本、魔法で代用できるものだ。使い勝手や効果のほどは別としてね」


「ちょっと待ってくれないか。魔法だって? それに、キミ達は一体どんなスキルを持っているんだい?」


 グリムが疑問を口にする。当たり前だろう。それを説明しない訳にはいかない。


「ああ、この世界には魔法がある。君の物語の知識にある様なものだと思ってもらって構わない。それでだ。まず、私は『魂』に関係するスキルを持っている。魂の位置を探知したり、相手の魂を恐怖させたりね。これらは『探知魔法』、『恐怖を与える魔法』が近い性質を持っている」


「なるほど。それで、莉奈、キミは?」


「私は空を飛べるの。これはそのまんま、『空を飛ぶ魔法』っていうのが存在する」


「そうか。なら私のスキルは『回復魔法』に近しいものなのかな?」


「うむ。どうかな、ヘザー」


「はい。ここまで肉体を復元できる魔法はありませんが、傷が治るという事は身体が再生するのと同義です。そういった意味では、『傷を癒やす魔法』の性質に近いものかと」


 ヘザーの説明を聞きながら莉奈は考える。妖精王アルフレードは『作る』能力を持っていた。果たしてあれは、魔法で代用出来るものなのであろうか。


 ぱっと思いつくのは、『幻影魔法』だ。それに実体が伴うかどうかの違いだけで、そこにないものを作り出すという意味では、まあ一緒である。


 そこまで考えて、ふと、『錬金術』という言葉が頭をよぎった。アルフレードは中世ヨーロッパの人だろう。錬金術に手を染めていたと言っていた。


 だとしたら、何かを生み出したり、彼の持つ『不老不死』の力も、結局はその学問の行き着く先だ。何かの物語で観たことがある。


 真偽は分からないが、その彼の持つ『常識』が、彼の持つ強大な力に繋がっているのかもしれない。


「どうした、莉奈。ボーっとして?」


「え? ううん、なんでもないよ、続けて!」


「ああ。とまあ、そんな解釈で私はいたんだ。だが、十年くらい前だったかな。そう、なんと言ったらいいか……私は『目覚めた』」


「……目覚めた?」


 莉奈の頭にアルフレードの言葉が反芻はんすうする。



 ——『——それでリナ、君は目覚めたのかい?』



「うむ。グリム君の表現を借りれば、『ふたが開いた』と言ったところか。突然、私の頭の中に、チートスキルの情報が溢れ出したんだ」


「チート……スキル?」


 莉奈が言葉を絞り出す。その彼女の様子を見て、グリムが解説を始めた。


「莉奈。チートとは、イカサマや不正行為の事を指す。転じて、ありえない超常的な力のことをチートと表現することもある」


「うん、知ってる」


「なんだ、ちえっ。それで誠司。それはどんな力なんだい?」


「ああ、まずチートスキルというだけあって、使用にはだいぶ制限がかかっている。少なくとも私の場合、人生で一箇所しか使えない。それに使った所で、君達には認識出来ない能力さ」


 その言葉を受け、グリムは莉奈の方を見る。


「なあ、なんで誠司はもったいぶるんだ?」


「ごめん、そういう人なの。許してあげて」


「ンンッ……少しはもったいぶらせてくれ。それでだ。他の転移者が同じ様な力を持っているのか分からなかったので、今まで莉奈には伏せていたが……グリム君にそれらしきものがあるという事は、莉奈、君も持っているのかもしれないね」


 誠司は二人を見回す。莉奈とグリムは黙って誠司を見つめる。はよ言えと言わんばかりに。その視線に耐えられず、誠司は顔を赤らめた。


「……引っ張る内容でもないしな。私のチートスキルは、人生で一箇所だけ『魂』をその時間に固定することが出来る。そして、死んだらそこからやり直せるらしい。ゲームでいえば『セーブ』ポイントを作る、物語でいえば『死に戻り』っていうところだろうね」


 それを聞いた莉奈は、思わず呆けてしまう。その現実味のない能力に、頭が理解するのを拒否してしまっている。

 

 能力自体はよくある『チートスキル』だ。だが、実際に身近な人がそれを使えると言われても——いまいちピンとこない。


 そんな莉奈とは対照的に、グリムは納得した様子で頷いた。


「なるほど……人生をロールバック出来るということか」


「ああ。出来れば使うことなく人生を終えたいがね」


 誠司は腕を組み、椅子に背を預けた。その様子を見た莉奈は、疑問を口にする。


「なんで? 今のうちに使っておけば、万一の時に安心じゃない?」


 そうだ。これから『厄災』達が現れる可能性が高いのだ。保険をかけておくに越した事はない。だが、誠司は首を振った。


「それが使い勝手が悪くてね。『魂』をその時間に置いてきてしまうんだ。時間が経つほど、肉体は抜け殻の様になっていくだろう。それにこの力は、心から使いたいと思った時にしか使えないみたいなんだ」


「そうなんだ……本当に万一の時の保険って感じなんだね」


「ああ」


 確かに、その力は絶大だ。チートスキルと銘打つのも頷ける。死んでも元の時間に戻ってやり直せるのだ。魔法では絶対に不可能な力。


 だが、その力を使ったとしても周囲は気づかないだろう。そういった物語を莉奈も観たことがあるが、なんて孤独な力なんだろうと思ってしまう。


 一通り話を聞いたグリムは、口を開く。


「なるほど、分かった。私の方でも蓋を開けないか試してみるよ。その前にだ、この世界で生活するにあたって、私の居住区を確保しておきたい。誠司、私はどこに住めばいい? この家に住まわせてもらう事は可能か?」






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