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ライラと『私』の物語【最終部開幕】  作者: GiGi
第二部 第七章
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氷上の妖精達 01 —水着回が始まる—







 照りつける太陽。煌めく海。


 トロア地方南の地、スドラートの海辺には、楽しそうにはしゃぐ三人の女性の姿があった。



「ねえリナ、こっち向いて!」


「ん、どしたのライラ……わぁぷっ!」


「ふふ、お姉様、大丈夫?」



 莉奈はこんな事もあろうかと——いや、こうなる事を期待して、水着を用意していた。予期せぬ臨時収入も入った事もあり、サランディアで水着を買い込んでいたのだ。

 

 ライラのサイズはいつもの風呂で見慣れていた。目測で大体分かっていたので問題ない。なので莉奈は、彼女には可愛らしいリボンデザインの水着を用意してあげた。


 ビオラは自前のクロスデザインの水着を着ている。なんともお洒落である。


 そして、勿論莉奈はゴテゴテのフリルデザインの水着を着ている訳なのだが——その理由を聞くのは野暮というものであろう。


 少し暑くなってきたとはいえ、まだ六月にもなっていない。海に入るにはまだ早すぎるのだが、そこは莉奈の『防寒魔法』が活躍した。ヘザーも最初の時に言っていたが、色々と便利な魔法である。



 こうしてキャッキャッウフフと三人は海を満喫する。海に浸かって話しているだけでも幸せだ。



 ひとしきり満たされた莉奈は休憩がてら、離れた所にいるヘザーの元へと向かった。


「ねえ、ヘザー。やっぱりヘザーも一緒に遊ぼうよ」


 バッグから取り出したビーチパラソルの下で本を読んでいた彼女はパタンと本を閉じ、莉奈に返事をする。


「ごめんなさい、リナ。私は、あまり強い直射日光は浴びたくないもので」


「うん……そうだよね。ヘザーの水着も一応用意しといたんだけどね。ごめんね、そこまで気が回らなくて」


 申し訳なさそうに謝る莉奈。そんな彼女を見て、ヘザーは立ち上がりながら首を振る。


「大丈夫ですよ。でも、私に用意された水着、やたらと露出が高いようですが?」


「うっ……いや、似合うと思って」


 そう、莉奈がヘザーの為に用意した水着は、やたらと布面積が少ない物だった。


 莉奈としては、ヘザーのその美しい身体を布で隠すのは勿体無いという気持ちだったのだが——色々と配慮が足りなかった様である。


 でも、ヘザーとしては誘われること自体は嬉しいものだ。彼女はビーチパラソルを畳みながら、莉奈に微笑む。


「気にしないで下さいね、リナ。さて、そういう事なら私以上の適任を呼んできましょう。カルデネの様子も心配ですしね」


「え、それって?」


「ふふ。リナ、バッグの方はよろしくお願いしますよ?」


 そう言ってヘザーは、ビーチパラソルと共にバッグの中に飛び込んで行った。



 そして、待つ事五分——。



 再びヘザーが現れ、バッグの中からとある人物を引き上げた。


「ひゃっ!」


 レザリアである。


「リナ! リナ!」


「あはは、やっぱりレザリアか」


 莉奈はぴょんと飛びついて来るレザリアを華麗に避け続けながら、ヘザーに感謝する。


「ごめんね、気い遣わせちゃって」


「いえ。せっかくなのでゆっくり楽しんで下さいね。私は家でお留守番をしてますので」


 ヘザーはそう言っていつもの様に涼やかな笑顔を見せ、バッグへと戻っていった。


 そんなヘザーを手を振って見送った莉奈は、相変わらず飛びついてきているレザリアを避けながら彼女に言う。


「レザリア。私なんかよりあっち見て、海だよ!」


 その莉奈の言葉を聞いたレザリアはようやく動きを止め、莉奈の指差した方を見る。


 一面に広がる海。レザリアは感嘆の声を漏らした。


「これが……海……」


「レザリア、海は初めて?」


「……はい」


 レザリアも長く生きているが、基本的には森の外へは出ない。せいぜい街に買い出しに行ったり、森に隣接している山に温泉を探しに行った程度だ。


 だが、今その広大な海を目の当たりして、レザリアは心奪われる——。



 レザリアの姿が目に入ったライラとビオラが駆け寄って来る。彼女達はすっかりほうけてしまっているレザリアに声を掛けた。


「レザリアだ、いらっしゃい!」


「ああ、あなたが昨晩話に出ていた変態エルフさん……」


 その初対面であるビオラの言葉に、レザリアは我に返る。


「……へ、へ、変態っ!?」


「いや、ビオラ。私、そこまでは言っていない」


「いえ、でもお姉様のお話を聞く限りだと、変態としか……」


「なあに? レザリアって変態さんなの?すごい!」


「うぅ……違いますぅ……私、そんな風に見られてたんですね……」


 肩を落とすレザリアを見て思わず笑い出す三人。


 まあ、ビオラが勘違いするのも無理はない。莉奈の話だけ聞く分には、隙あらば添い寝してきたり、裸だろうが抱きついてきたり、同族を縛ったり、自らを縛ったりしているのだ。そこだけ切り抜けば十分に変態である。


「あはは、ごめんレザリア。そんな事思ってないよ。さ、一緒に遊ぼう! 水着持ってきたから!」


「はい!」


 莉奈はレザリアに笑いかけ、彼女の為に買った水着を取りに荷物の方へと向かった。


 そんな莉奈の励ましに一瞬にして機嫌を回復したレザリアは、服を脱ぎながらビオラに挨拶をする。


「ヘザー様から聞きました。あなたがビオラさんですね。私は……んしょ、レザリア。レザリア=エルシュラントです。以後、お見知り置きを」


「うん、アタシがビオラ。ビオラだけど……ちょっとあなた?」


「はい?」


「……なんで全裸になってるの?」


 ——莉奈が彼女達の方を振り向いた時にはもう遅かった。ライラはアワワと目をグルグル回している。


「え? 海で水浴びですよね?……ああ、そういう事ですか。安心して下さい、リナから教わりました。同性しかいないのはちゃんと確認しましたから——」


「ちょーっと! レザリア、ストーップ!」


 莉奈は慌ててレザリアの方へ飛び戻り、急いで辺りを見回す。大丈夫、他の人影はなさそうだ。


「レザリア、私、水着持ってきたって言ったよね? 私、流れ的に水着取りに行ってたよね!?」


「はい。でも、そもそも水着って何でしょう?」


「——私達の格好を見て、察しろーっ!」


 莉奈の叫び声が響く。ビオラが冷ややかな視線でレザリアを見て、つぶやいた。


「……やっぱり……変態だわ」



 こうしてレザリアに水着を着させた莉奈達は、海へと駆け出して行く。


 この場に誠司さんが居なくて良かった——そんな事を考え、莉奈は心の底から安堵するのだった。





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― 新着の感想 ―
たぶん100話以上読んだので、ここらへんで感想です。もし気分を害されたら、すいません。 (良いところ)日常系のシーンを書くのが、非常に上手だと感じます。ライラや誠司とのやりとりなど、読んでて、ほのぼ…
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