1話
意識がふっと開けていくのを感じる。まるで今そこで生まれたかのように。
『対象の覚醒を確認。おはようございます。設定を開始してもよろしいでしょうか。』
「………は?」
白い、ただ白い部屋にて目の前の髪が長いのだろうとしかわからないボヤッとした人型の光の塊から、中性的な声が響く。
いきなり何言ってんだこいつは?
『対象の返答を確認。拒絶の意思は無し。設定を開始します。」
やばい、なんか勝手に進められそう!
「いや、ちょっ、待って待って。設定って何!?そもそも君は誰なの!?というかここはどこなのかもそうだし!どうやって僕は!」
…あれ?
「僕は…」
あれれ?
「私は…」
あれ列例?
「自分はなんだっけ??」
ぐらりと自分が感じている世界が崩れていくかのような感触に陥る?座っているのに倒れていくような?いや、そもそも今って立っているんだっけ、座ってたっけ?
というか自分ってナンダッタッケ?どんな形してたっケ?コンナトコロニイテヨカッタンダッケ?
アーなんかもうヨクわかんないし、なんか眠く薄くナッテきたし、もうどうでもイイカナァ…
そこにいるのが分からなくなってく様に存在が薄れていきかけている。それを特段反応も見せずにみていた光の塊はおもむろに両手を広げて。
ぱぁぁああん!!!!
「は!?」
何今の大きな音!?
「対象の存在の拡散の兆候を確認。存在の確立の為に最低限の自己認識と記憶の復元、今回の目的を告示します。また、会話の対応を変更します。」
手を叩いた光の塊が特に気にした様子もなくこちらにそう告げる。するとふっと、僕という存在がどういうものだったか少し思い出す。
そうだ、僕は普通の成人男性だった。日本で産まれ、年齢は20後半だったはず。死因は生憎と思い出せないが死んだということはわかる。そんな少ない記憶と知識たちを思い出して浸っていると、目の前の存在が話しだす。なぜ僕がここにいて、これから何をしてもらうつもりなのかを。
「あなたを今回呼び出したのは、とある世界でダンジョンマスターを努めてもらうためです。」
そんな訳のわからないことを、まるで当たり前かの様に先ほどより少し人間味の増した声色で告げた。