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【書籍1,2巻発売中】戦闘力ゼロの商人 ~元勇者パーティーの荷物持ちは地道に大商人の夢を追う~  作者: 3人目のどっぺる
第5章 キルケットオークション編(後編)〜キルケットの錬金術師編〜
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05 コドリス焼きの超進化①

4人のパーティを再結成した翌日。


俺は早速バージェスとクラリスのために、2台目の荷馬車を購入した。


1台目の時はめちゃくちゃ苦労したけど。

2台目は現在の手持ちから余裕で買えるようになっていた。


俺は商人として、少しずつだけど着実に成り上がれているということだろう。


ただし、荷馬車に当てた約12万マナもの投資は、その荷馬車を使った商売でさっさと回収せねばなるまい。


その投資の回収については、バージェスとクラリスと…

アルカナの腕前にかかっていた。



→→→→→



「なんだこれ…なんか変な匂いがするぞ!」


さらにその翌日。

オープン前の荷馬車行商広場にて。


俺は、1台目の『遺物&薬草売り』用の荷馬車の隣に、2台目の荷馬車を設置した。


俺の2台目の荷馬車は、調理台付きだ。


じっと客を待つのが苦手だというクラリスに任せる商売として、俺は焼肉売りをチョイスした。

ついでに、バージェスにもそれを手伝ってもらおうと思っている。


そしてそれは、ただの焼き肉ではない!


俺はこの商売のネタを、先日のヤック村への滞在中に思いついていた。

そして、アルカナに協力を仰ぎ、裏で着々と準備を進めていたのだ。


ちょうどアルカナの方の準備が整ったようなので、タイミングよくクラリスたちに任せてみようと思っている。


うまくハマれば、それなりに忙しくなるはずだ。


「うっわ…」


荷馬車の上の壺の中身を覗いて、クラリスが悶絶していた。


「嗅ぎ覚えないか?」


「薬草…なのはわかるけど…。これ何に使うんだ?」


とりあえず、見せた方が早いと思い。

俺は倉庫から取り出したコドリスの肉をぶつ切りにし始めた。


「モーモー焼きじゃなくて? ここでコドリス焼きを売るのか? 流石にキルケットじゃそれは売れないぞ…」


クラリスもバージェスもちょっと怪訝な顔をしている。


「まぁ待て」


そして俺は、壺に入っていた薬草粉末を数匙分水で溶いてコドリス肉にまぶし、それを調理台の上に置いて焼き始めた。


すると、周囲にフワッと薬草の独特の臭いが広がり始めた。


この薬草粉末は、アルカナにブレンドを頼んでいた特製のものだ。


痺れ取りの薬草であるローマリの茎を乾燥させて砕いたものと、毒取りの薬草であるバリルの葉を同じく乾燥させて砕いたものを混ぜ合わせ。

そこに痺れの毒草であるコジャウの実を乾燥してすりつぶしたものをほんの少しと、さらに塩を少々。


それらをしっかりと混ぜ合わせたアルカナ特製ブレンドの薬草粉末が、今この壺の中に入っているものの正体だ。


それをまぶしてから焼き上げるコドリスは、味に薬草の独特の臭みが上乗せされて、元々の淡白な味とは似ても似つかないほどに深みのある独特の味となる。


つまりは、コドリスの薬草焼きだ。


いや…


あえて薬草としての効果が薄い、本来捨てる部分を香り付け用として使っているため…


「薬草焼き」と言うよりも「香草焼き」と言い換えた方が適切かも知れない。


そう…

だからこれは「コドリスの香草焼き」だ。



コドリス焼きの煙と共に周囲に広がる不思議な薬草の香りのせいで。

荷馬車用行商広場のオープン前の時間帯にも関わらず、周りの行商人たちが俺の荷馬車の周りに集まってきた。


なんだなんだと、遠巻きにしながら覗き込んでくる。


売り始める前から、すでに話題になっているようだ。


これは、なかなかにいい流れだった。


そして…


「旨い! アルバス! これ旨いよ!」


「すっごいのです! アルバスのモーモー焼きも旨いけど、このコドリス焼きもめちゃくちゃ旨いのです! いつものコドリスとぜんっぜん違うのです! コドリス焼きの新たなる超進化形態なのですぅぅっ!」


看板娘たちが全力の笑顔で(無自覚に)宣伝を繰り返し…

それを聞いた周りの商人たちは、喉を鳴らしてよだれを垂らしていた。


俺は少しニヤリとしながら、さらに追加のコドリス肉を倉庫から取り出した。


そして、クラリスとバージェスに簡単に調理時間や、アルカナに言われた薬草粉末を振りかけるベストな量などの説明をしながら、さらに何本かの追加の串を焼いていった。


それらは全てロロイの腹の中に収まり。

そして「コドリスの香草焼き!最高なのです!」という宣伝の大声が、高らかに荷馬車広場に響き渡ったのだった。


俺はバージェスとクラリスに向き直る。


「広場のオープンと共に、一気に忙しくなると思うけど。2人ともよろしく頼むぜ」



そして俺の目論見通り。


本日初出しのコドリスの香草焼きの店には、オープン直後に商人たちが殺到し。さらにはその列に興味を示した一般の客が加わって、終始行列ができ続けていた。


1本20マナの串が、飛ぶように売れた。


途中、俺が手助けに入らなくては回らなくなるほどの状態になったが、なんとか最後まで乗り切った。


初日の出だしとしてはなかなかに好調だ。


ちなみに1串分のコドリス肉の原価は、だいたい4〜5マナくらい。


その…向こうの肉屋では相場通りの5マナで売ってる量のコドリス肉が。

薬草粉末をかけて焼くと4倍の値段でも売れるのだ。


ちなみに薬草は、なるべく本来の薬草としての効力がない部分を再利用してほしいとの要望をアルカナに出していた。


薬草ペーストなどを作るにあたっては、本来不要部位として捨てていた薬草の部位を。今回アルカナにはうまく再利用してもらった形だ。


なので、労力はかかるが材料費としてはほぼ無料ただだ。


そうなると、1串につき丸々15マナ分の儲けがある計算。

それが、今日だけで500本は売れている。

合計7,500マナの儲けだ。


ちなみに今日使ったコドリスは、遺跡出発前からの蓄えなので。手持ちとしては売上分の1万マナが丸々増えている。


さらに。

コドリスはこのキルケットであればいくらでも仕入れられるし、アルカナの薬草粉末もまだまだふんだんにある。


追加製造だって頼めるし、アルカナ特製のこの薬草粉末は、他の商人が簡単に真似ができるようなものでもない。


だからこれは、俺だけが売れる商材を用いた、長期的に持続可能な商売だ。


これならば、2台目の荷馬車に投資した12万マナを取り戻し、純粋なプラス収益に転じるのはもはや時間の問題だった。



→→→→→



「儲かってるな!」


店を閉めた後、本日の売り上げを数えながら、俺はニヤニヤが止まらなかった。


そんな俺の横で、バージェスとクラリスがヘトヘトになってへたりこんでいた。


「これ…クエストに出てる方が断然楽だったんじゃねーか?」


「アルバス…ちょっと手加減してくれ。バージェスも私も。ここまでヘトヘトになったらいざって時に戦えやしない」


あまりにも儲かるので、調子に乗ってちょっとやり過ぎようだ。


明日からは、営業時間を調節したり、やり方を工夫したりして、2人の体力が減り過ぎないようにしよう。


ちなみにだが、この日は遺物商の方でも10万マナほどの売り上げが立っていた。


こうして、俺たちの蓄えは順調に増え続けていった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 肉の原価か4〜5で相場5だと串代、土地代、燃料費で大赤字でおかしくないですか?
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